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2.
しおりを挟む――媚びてんじゃねぇよ、
誰が言ったのかはわからない。
だけどそれは確かに、自分に向けられた言葉だった。
「………」
「三宅くん?」
「……あ、すみません」
咄嗟に笑顔をつくると、怪訝な表情をした上司にちょっと御手洗いにと言って席を立った。
無人のトイレ。
鏡に映った自分は、ひどい顔をしていた。
別に大したことじゃない。
陰口なんて今更だし、学生の頃はもっと酷いことを言われてたし、それに。
――媚びてんじゃねぇよ
そんなつもりがなかったわけじゃないし。
だってどうすればいいのかわからない。
何を話せばいいのかわからない。
どう付き合っていけばいいのか、どうすれば上手くやっていけるのかわからない。
だから取り敢えずにこにこ笑って、適当に相槌を打つしかない。
「………」
……なにやってんだろ、俺
小さな窓から、色のない空を見上げる。
いつまでもこんなんじゃ駄目だって、わかってる。
きちんとしなきゃってわかってるけど、でもきちんとするってどういうことなんだろう?
あんまり無理すんなってあいつは言うけど、でも。
こんなふうにどうしようもなく落ち込んでしまう日は、仕事帰りに近所のスーパーに寄って買い物をして帰る。
そして夕飯に、あいつが好きなものをたくさん作る。
「……よし、」
並べた材料を前に、腕まくりをして気合いを入れた。
料理は好きだ。
作ってる間は、余計な事を考えずに済むし。
それにいつも腹を空かせて帰ってくる、あいつの笑顔が見たい。
あいつが笑ってくれたら。
幸せでいてくれたら。
きっとそれだけで、明日もまた頑張ろうって、思えるから。
end.
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