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桜
9.
しおりを挟むお兄さんと契約のようなものを交わした三日後、俺は初めて見ず知らずの奴と寝た。
初めはそれなりに緊張したけど、実際やってみると大したことはなかった。
相手は中年のサラリーマンで、終始オドオドしていた。
遠慮がちに身体に触れ、そしていざ本番となるとすぐに達してしまった。
全部相手に任せておけばいいとお兄さんには言われてたけど、なんだか気の毒になって何かして欲しいことはないかと尋ねた。
すると足を舐めさせて欲しいと言われた。
特別なことはしなくていいとも言われていたし戸惑ったけど、えらく切羽詰まった表情をしていたのでどうぞ、と足を差し出した。
その後も週三のペースでバイトを続けた。
放課後、駅のトイレで私服に着替えて指定されたホテルに向かう。
客はお兄さんが言ったとおり、それなりにちゃんとした感じの人ばかりだった。
俺は愛想良くして、要望には出来るだけ応じた。
なかには踏みつけてくれ、などと言いだす変態じみた奴もいたけど、金の為だと思って我慢した。
そして仕事に慣れるにつれ、客は増えた。
なかには何度も指名してくれるリピーターもいた。
「な、言うたとおりやろ?もともと素質があってん」
お兄さんは笑いながら言った。
「まぁ、俺の仕込みの腕がよかったっちゅうのもあるやろうけどなぁ」
そんな彼はヤクザな商売をしているにも関わらず、妙に律儀なところがあった。
初めの約束どおり、給料は毎回手渡し。
都合が悪くて会えない時でも、二日後にはきちんと振り込んである。
「こういう仕事はな、信頼関係が大事やねん」
そう言って、最近頑張ってるみたいやからボーナスやと多めに渡してくれたりもした。
だけど俺は知っていた。
客が支払う金額と、彼が俺に提示している金額に相違があること。
ウリの相場なんて知らないけど、薄々気づいてはいた。
でも、それでもいいと思った。
彼は自分を救ってくれた。
たとえ単なる商売道具としか思われてなくても、自分を必要としてくれた。
おかげで俺は、将来への希望を捨てずに済んだ。
俺は彼に、感謝していた。
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