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4.労働系男子と俺様男

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放課後。

教室の前で、浅海の彼氏に遭遇した。

「こんにちは」
「………」

あ、誰だてめぇみたいな顔。

「浅海の友達っすよ」

てか殆ど毎日会ってんだから、そろそろ顔くらい覚えてくれてもよくない?

「……浅海は?」
「あぁ、はいはい。浅海ー、ダーリンお迎え~」

幸生と帰る支度をしていたらしい浅海は、茅野先輩を見て怪訝な表情になる。

「……今日、なんか約束してました?」
「いいからさっさと準備しろ。飯行くぞ」
「はぁ…?てかなに勝手に決めてんですか」
「……あぁ?」
「今日は無理っすよ。今からバイトなんで」
「休め」
「無理です」
「じゃあ辞めろ」
「……でたよキングオブ自己中」

ぼそりと呟くと、幸生が慌てる。

「聞こえるから(小声)!」
「ワザとだよ!」

茅野先輩は確かに格好良いけど、性格が戴けない。

「てかマジで、そろそろ時間ヤバいんで」
「てめぇ…」

既にキレ気味の茅野先輩がガンっ、と教室のドアを殴る。
てゆうか沸点低すぎ…カルシウム足りてないんじゃないの、あのひと。

「……どいて下さい」
「………」

互いにまったく譲る気はないらしい両者。
一瞬触発といった空気に幸生はハラハラしながら、退屈になった俺は先輩とLINEをしながら成り行きを見守っていたのだが。

「一時間一万」

思わず文字を打つ手が止まった。

「ぱねぇ…!」
「てか不健全…!」
「……っ、金で…なんでも解決できると、思わないで下さいよ…」
「心の葛藤が滲みでてるよ浅海!」
「そこでブレるな浅海!」

気持ちはわかるけどね!

「……っ、とにかく俺、もう行くんで」
「……何時に終わるんだ」
「十一時頃ですかね。店がヒマなら」
「迎えに行く。死ぬ気で終わらせろ」
「それは俺に言われても」
「………」
「……ガンバリマス」



「……ところで浅海って、なんでバイトしてんの?」

帰り道、隣りを歩きながら幸生が言う。

「金を貯めるのが趣味らしいよ」
「……どんな趣味だよ」
「将来アラスカに家を建てたいんだって」
「スケールでかっ…てゆうかなんでアラスカ?」
「好きなんだって。ねー、幸生の夢ってなに?」
「……俺?俺は普通に就職して、普通に結婚して普通の家庭を築きたい」
「……それちょっと普通すぎない?」
「そう?俺にとっては贅沢すぎる夢だよ。現実はきっと結婚詐欺にあったり借金の保証人になったりマグロ漁船に乗せられたり」
「幸生…それでも俺は一生おまえの友達だから…!」
「真琴の夢は?」
「俺は勿論先輩のお嫁ry」
「あ、やっぱいいや」



だけどこれから先。

十年後やニ十年後の自分たちなんて想像もつかないし、夢は叶わないから夢なのかもしれない。
そんな夢を持っていたことさえ、いつかは忘れてしまうのかもしれないけど。
それでもみんな幸せだったらいい、なんて。

薄色の空を見上げながらそんなことを思った、高二の夏。


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