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手をつないで
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しおりを挟む午後七時。
既に一時間程待ちぼうけを食らっていた俺は、街中で人目も憚らず手をつないでいちゃつくゲイカップルを苛々しながら眺めていた。
……ったく余所でやれよ…
幸せそうなツラしやがって…てゆうかあいつ、どっかで見た事あるような…。
そんな事を考えていると、短いクラクションの音。
「遅いっすよ」
助手席に乗り込みながら、不機嫌な顔で言う。
「いや悪かった、会議が思ったより長引いて」
俺を待たせていたその男は、そこそこ名の知れた企業で働いている。
仕事の話はあまり聞いた事がないけど、一緒にいる時もよく電話がかかってくるし結構忙しいみたいだ。
「お詫びに飯奢るよ。何が食べたい?」
「……あんた、俺には食い物与えときゃいいとか思ってない?」
「まさか。どうした?なんか機嫌悪いな」
男はネクタイを緩めながら俺を見た。
「……別に、」
その男は、高校の頃好きだった人の従兄弟だった。
まったく関係ないところで知りあっていたので、その偶然には驚いた。
――俺もびっくりしたよ
再会後、失恋した俺のヤケ酒に付き合ってくれながら男は笑った。
――まさか相手が淳だったなんてさ
それから散々飲んで、酔っ払った俺は愚痴りまくった。
――ぶっちゃけつけ込むなら今じゃね?とか思ってたんすよ…
最低っすよねと落ち込む俺に、男は言った。
――そんなもんだろ
――……え?
――恋愛なんて欲の塊みたいなもんだし、綺麗事ばかりじゃないさ
――………
それに、と言って彼は笑った。
――たとえば俺も今、君につけ込むチャンスかなって思ってたりしてるし
――……は?
初めはからかわれてるだけだと思った。
だけどその後も何度か会って、一緒に飯を食ったり部屋に遊びに行ったりしてるうちに、なんとなくそんな流れになって。
で、なんとなくそんな関係になったってゆうか。
「……どうせ、遊びなんだろ」
はぁ、と白い息を吐く。
高そうなレストランで飯を食った後、夜景が綺麗な場所とやらに連れてこられた。
これじゃあまるで、デートだ。
だけど相手は大人だし、俺みたいなガキに本気になるはずがない。
……たぶん、彼女ができるまでの穴埋め、みたいな
「遊びって?」
景色を眺めながらぽろりとこぼれた呟きは、どうやら聞こえていたらしい。
「……別に、なんでもな」
「俺、いくつに見える?」
缶コーヒーを俺に渡すと、唐突に男は言った。
「実はとっくに三十路越えてたりして」
「……はぁあ?!詐欺だろ!」
「それ褒めてる?」
唖然とする俺を尻目に、男は苦笑いする。
「周りはもう殆ど既婚者だし、両親にも早く身を固めろってせっつかれてる」
「………」
「だからまぁ、遊びで男とつきあう程余裕でもないかな」
そんな言葉とは裏腹に、男の態度はいつだって大人の余裕を滲ませていたけれど。
「……それって、」
つまり。
「君次第ってこと」
「……ずりぃ」
思わずそう言うと、男は笑って俺の手を握った。
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