nesessary(BL)

kotori

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ナチュラルメイクという名の厚化粧に露出度の高い格好。
この店には似合わないフェロモン全開の女が、ビールジョッキを手に立っていた。

「沙織(サオリ)、」
「やだぁ、何してんのー?」
「おまえこそ。仕事は?」
「さっきあがったー」

沙織は近くのキャバクラで働いている。
俺がバイトをしている頃からの常連なので、付き合いも長い。

「相当飲んでますね、沙織さん…。大丈夫すか?」
「うん!けーちゃん、今日もカワイイ!」
「沙織さんは今日もキレイっす!」
「……バカじゃん?」

ナツは冷ややかな表情だ。

「あ、そうだ。沙織さんは、デートならどこに行きたいっすか?」
「デート?けーちゃんデートすんの?」

勝手にナツの隣りに座りながら沙織が言う。

「いや俺じゃなくて、皐月さんが…」
「おい」
「……え?」
「……余計なこと言うなって」
「えっ、なんかヤバかったっすか?」
「……ふーん、そうなんだー」

沙織は枝豆に手を伸ばしながら別に隠さなくてもいーじゃん、と笑った。



それから結局、四人で飲むことになった。

「んー…DLかシー?んで、一泊して帰る」

沙織が煙草を吸いながら言う。

「定番っすねー」
「でも週末とか、人が多くないですか?」
「いいの!好きな人と一緒に行くことが重要なんだからー」
「そうっすよね!沙織さん、今度俺と一緒にどうっすか?!」
「……あんたってほんと、チャラいよね…」

ナツが溜め息を吐く。



そしてなんだかんだで朝まで飲んで、始発で帰ることになった。
ナツ達と改札で別れた後、タクシーで帰るという沙織を乗り場まで送る。

――でも、よかったぁ

別れ際に、千鳥足の沙織が言った。

――……ようやく吹っ切れたんだ?晶子(ショウコ)のこと

――………

――結構、心配してたんだよー?

静かな朝の街。
太陽がやけに眩しい。
今度紹介してよねと沙織は言うと、停まっていたタクシーに乗って帰っていった。




 
部屋に帰るとベランダに出て、煙草に火をつける。
祐希がここに来るようになってから、外で吸うようになった。
まだ冷たさを残す風と、建物の隙間からのぞく真っ青な空。

ここ数日、祐希が部屋に来ない。
LINEも電話もなかった。
理由はよくわからない。

「………」

家に帰るように言った事は、間違えてなかったと思う。
それがお互いの為だと思った。
祐希にはここ以外の自分の場所を、もっと大切にして欲しかった。
そして俺は、少し考える時間が欲しかった。

俺と祐希の関係は、始まりが始まりだっただけに一番重要な部分が曖昧になっている。
というか、わざとそうした。
どんなに甘やかしても、何度となく身体を重ねても、絶対にそのラインは越えないようにしていた。
それが祐希を余計に不安にさせてることはわかってる。
俺がしてる事は、きっと昔の那波よりもひどい。
でも、逃げ道はどうしても必要だった。

踏み込めない理由ははっきりしている。
俺は、祐希を幸せにしてあげられない。
俺にはもう、誰かを大切に思う資格なんてない。


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