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きらきら
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しおりを挟む「……おまえさぁ、」
焼酎の水割りを呑みながら津田(ツダ)は言った。
「何げにモテるよな、男に」
「………」
津田は元同僚のなかでも一番気が合う奴だ。
それで今でも、たまに連絡を取り合って部屋で一緒に呑んだりする。
「で?どうすんの」
「……一応、お友達からってことで」
「……マジでか」
実は、同性に告白されたのは初めてじゃなかった。
学生の頃も含めて何度かそういう経験はあって、津田に相談したこともあった。
「……おまえ、ゲイじゃないんだよな?」
「……今までつきあったのは、女の子だけだよ」
「じゃあなんで?」
「………」
なんでだろう。
改めて訊かれるとよくわからない。
しかも相手は一回り以上年下だ。
正直告白されるまでそういう対象としてはまったく見てなかったし、彼の方も一時的な気の迷いである可能性は高い。
……でも、なんか
「……きらきらしてるんだよ、あの子」
「……はぁ?」
彼の前にはまだ沢山の可能性が広がっていて、そのなかにはもう俺の手には入らないものもあって。
「それに見た目はさ、不良っぽくてちょっと尖った感じなんだけど、話してみると全然違って」
素直で、優しい子だと思った。
「夢に向かって頑張ってるところとか、なんかこう、応援したくなるってゆうか」
「……完全に親目線だな。てゆうか人の事を応援してる場合かよ」
「……ごもっともです」
だけど彼の真っ直ぐな瞳や、たどたどしくても一生懸命気持ちを伝えようとしてくれるところ。
それをただ純粋に、いとおしく感じる。
「……まぁ、おまえがそれでいいなら、いいけど」
「……うん、」
津田は煙草に火をつけた。
「……なぁ、」
「んー?」
「この前、話したことだけど」
「この前?」
「会社作るって話」
そういえば先月飲んだ時に、そんな話をした。
お互いが考える、理想の会社。
ただの夢物語だとわかってても、想像するだけならと妙に熱くなって語り合った気がする。
「結構マジで考えてんだよ、俺」
「けどおまえ、内定とれたって…」
「蹴った」
俺は眼を見開いて彼を見た。
「……このご時世、贅沢な話だとは思ってるよ。馬鹿だって言われるかもしれない。だけど、」
津田は真っ直ぐに俺を見て言う。
「俺はまだ、諦めたくない。夢を夢で終わらせたくない。自分の生き方に、後悔したくない」
「津田…」
「なぁ、おまえもこないか」
「……え、」
「俺はおまえと仕事がしたい」
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