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きみのとなり♯5

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「……まっ、待ってください!どうして?僕、なんか変なこと…」

焦ったように冬馬が言う。

「……や、別に冬馬のせいじゃないし。関係ないから」

そう、これは自分自身の問題だ。
友達と話してるだけで嫉妬するなんて、カッコ悪すぎ。

「あとでラインする」

そう言って歩きだした時だった。

「……っ、関係、ないとか…っ」

振り返ってぎょっとした。
なぜなら冬馬が、今にも泣きだしそうな顔をしてたから。

「……どうした?!」

慌てて駆けよると、冬馬は真っ赤な目で俺を見上げて言った。

「僕っ…僕は、甲田さんとつきあってる、んですよね…?」
「……え、」
「……なのに、関係ないとか…っ」

ぎゅっと握られた拳は、震えていて。

「そんなの、嫌です…」
「………」

……あぁ、

「……ごめん、ごめん冬馬」

……バカか、俺は

その頼りない身体をぎゅっと抱きしめながら思う。

「そうだな、関係なくない」

冬馬が卑屈になるのは、自分に自信がないからで。
怯えてるように見えるのは、緊張してるからで。
でもそれでも一生懸命、向き合おうとしてくれてる。
俺の気持ちに応えようとしてくれている。
それは、わかってたのに。



「……冬馬、」
「……はい」
「好きだ」
「……っ」

もう何度もそう伝えてるのに、毎回同じ反応をみせる、俺の可愛い恋人。

「……僕も、好きです…」
「……うん」

そしてその精一杯の勇気に、毎回幸せな気持ちになる俺。
本当は今すぐ俺だけのものにしたい。
心も身体も、全部。

「………」

でも、待つって約束したし。
それに俺自身、そうなるのは冬馬の心の準備ができてからの方がいいと思ってるから。

……まぁ、いっか。しばらくは、このままでも…

俺は小さく息を吐くと、くしゃくしゃと冬馬の髪を撫でた。

……あ、そうだ

「冬馬さ、今度うちの文化祭に」
「甲田さん、」
「ん?」

俯いたまま、冬馬が言った。

「あ、あの、今度……ても、いいですか…?」
「え?」
「……っ、家に…」

遊びにいってもいいですか?

「それは…いいけど、」
「………」
「たぶん襲っちゃうよ?俺」

それは半分、冗談だったんだけど。

「……ハイ」

耳まで真っ赤にした冬馬の、その蚊の鳴くような声を聞いた瞬間。
たぶんかつてないほど間抜けな顔をしてる俺の肩から、ずるりと鞄が滑り落ちた。



end.
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