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きみのとなり♯4
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しおりを挟む「……冬馬?」
「……僕、」
甲田さんに抱きついて、呟いた。
「……やきもち、やきました」
「……え?」
「……甲田さんがあの人と…フジさんと一緒にいるところを、偶然見かけて…」
「あいつと一緒って…あぁ、もしかして昨日の?」
はい、と小さく頷く。
「あれは、行事の買い出しで…てゆうか、俺とフジは別に」
「昨日の夜、ずっと考えてて…眠れなかった」
「………」
「僕、甲田さんのことが好きです」
「冬馬…」
「……すき…」
言葉にしてみて、やっと自分の気持ちに気づくなんて。
……ほんとに、僕って…
「……って、おい!」
なんだか急に力が抜けて、へなへなとその場に座り込んだ。
「大丈夫か?」
「……すきなんです…僕、甲田さんが、す…」
一度認めてしまうと今度はとまらなくなって。
馬鹿の一つ覚えみたいに好きと繰り返す僕の唇を、甲田さんが強引に塞いだ。
「……ん、ん…ぅ」
それは不器用で、苦しくて、でもとても幸せなキスで。
僕はぼろぼろ涙を流しながら、甲田さんにしがみついた。
いつからだろう。
初めはわけがわからなくて、正直迷惑とさえ思っていて。
一緒にいても緊張して(それは今もだけど)、その強引さに戸惑ってばかりで。
だけど初めて手をつないだ時も、キスした時も…緊張のあまり考える余裕なんてなかったけど…嬉しかったんだ。
そしていつの間にか…彼の隣りは僕にとって、居心地のよい場所になっていた。
「……やばい」
長いキスを終えると、僕を抱きしめたまま甲田さんが呟いた。
「……え?」
「……超嬉しい」
そう言うと、僕の額にキスをする。
「嬉しい」
その笑顔に、どくんと胸が鳴った。
「……冬馬、」
「……はっ、はい…」
それは僕たちの、本当の意味での始まりだった。
end.
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