sweet days

V.D

1

放課後。

俺は生徒会室で、溜まりに溜まった雑務を一心不乱にこなしていた。

……あの野郎っ…

この学校の名物生徒会長は、いつものように雲隠れ。
おかげで彼の承認がいる仕事は一向にはかどらない。

……しかも

「フジ、ご指名～」

職員室から戻ってきた川崎が、ほれと顎でドアの方を示した。

「………。すぐ戻るから」

溜め息混じりに呟いて、立ち上がる。

……このクソ忙しい時期に…



季節は冬。
今日は巷では、バレンタインデーと呼ばれる日。

「今年はフジの圧勝だな」

要が出ていくのを見てボヤきながら、甲田はホワイトボードに正の字を書き入れる。

「去年は会長の一人勝ちだったけどな…」
「つーかその会長はどこ行ったんだよ！あの人のハンコねえと、これ提出できねえんだけど！」
「あああ…いつになったら帰れんだよ…俺今日デートなのにさああ」
「なにおまえ、まだ澤田とつきあってたの？」
「たりめーだろ、てかまだってなんだよ。あーあ、今日中にチョコ渡せっかな…」

二年会計、川崎。
甘いマスクが男女問わず大人気。
現在バスケ部部長のイケメン澤田と交際中。
チョコ獲得数38個。

「俺だって早く冬馬に会いてえよ…」

二年書記、甲田。
彼は常にマイペース。
隣りの高校の地味ぃな生徒と遠恋中。
チョコ獲得数42個。

「……二人とも、くだらねーこと言ってないで、さっさと仕事して下さい」

一年庶務、篠山。
これといってなんの特徴もないが、強いていうなら眼鏡が似合う。
今期生徒会唯一のノンケ。
チョコ獲得数68個。

「……っなんでおまえに負けてんだよ…」
「勝っても別に嬉しくないです」

悔しそうな甲田に、醒めた一言を返す篠山。
彼の人気が高い理由は、おそらくそのクールな性格。

「お前ほんっとかわいくねーなー」

川崎が苦笑いしながら言った。