sweet days

生徒会長

1

  
「カーナーちゃん」

顔を上げると、目の前に三上の顔があった。

「……なんですか？」

思わずのけぞると、三上はにっこりと笑う。

「大丈夫～？なんか顔、疲れてるけど」
「……大丈夫です」

精一杯の笑顔をつくって答えた。

……誰のせいだと思ってるんだよ！！

そう心の中で罵りながら。

「ならいいけど～」

彼はそう言うと、書類が山積みになっている俺の机に座って漫画を読み始める。

……仕事しろっつーの！！



三上恭介はこの学校の生徒会長だ。
そして生徒の中で唯一、俺をカナちゃんと呼ぶ男。
その辺のモデルにも引けを取らない容姿、気どらない性格、そしてその求心力で生徒達から絶大な人気を誇る三上。
通常なら引退するこの時期に、彼はその支持率の高さゆえに特例としてその立場を容認されていた。
確かに彼のカリスマ性や行動力には、目を見張るものがある。

……その後始末は大変だけどな…

でも、ここで投げ出すわけにはいかない。
そんな事はまず俺のプライドが許さない。

……頑張れ俺…

自分で自分にエールを送りつつ、黙々と仕事を片づけていく。
彼は、最重要注意人物だった。
いつもはただヘラヘラ笑っているだけなのだが、実際何を考えているのかまるで読めないから怖い。
それになぜか、俺に纏わりついてくるし。
ちょうど今みたいに。

「……会長」
「なーに？」
「……もう少し離れてください」
「なんで？」

笑顔の三上。
さすがに邪魔だとは言えず、諦めた。



それからしばらくして、不意に三上が口を開いた。

「俺さあ、さっきから気になってることがあるんだけど～」
「……なんですか？」
「……アレ、」

振り返ると、ドアの隙間から季一が顔だけ覗かせていた。

「……！！」