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第2章
13.
しおりを挟む「……います」
「そーなの?」
けどさぁ、と上原はシフト表を見ながら言う。
「こんなにバイトばっかしてると、遊ぶヒマなくね?」
「あぁ…まぁ、そっすね。けど、金欲しいんで」
「夏休みにどっか行くとか?」
「いや特に予定は…」
夏休みはフルでバイトを入れようと思っていた。
「上原さんはいるんですか?彼女」
「……一応ねぇ。一緒に住んでるけど、もう潮時って感じ」
「別れるんすか?」
「どーかねぇ」
結構長いからなぁ、と上原は伸びをしながら言った。
「……でも俺さぁ、てっきり寺やんは春日っちのことが好きなのかって思ってたんだけどー」
「……ハイ?」
「だって春日っちもがっつりシフト入れちゃってるしさぁ、寺やんと一緒の時、多くね?」
……言われてみれば…そう、かも?
「……いや、偶然っすよ」
「ふぅん。けど案外、あっちはおまえに合わせてたりして」
……いやいやまさか、
「俺みたいなガキ、相手にしてもらえませんって」
「まぁなー、あいつ年上好きそうだしなー」
上原はどうでもよさそうに言うと、吸い殻を水が入った灰皿に捨てた。
その日もバイトの後、ミケの部屋に寄った。
「すげ、なんか今日豪華じゃね?」
テーブルの上に並べられた料理を見て驚くと、そうかな、とミケ。
「なに、なんかのお祝い?」
「……別に?気分」
「ふぅん…。いただきまーす!!」
腹が減ってたので、さっそく手をつける。
「………」
「……ん?なに?」
食ってる途中で、俺をじーっと見ているミケに気づいた。
「……おいしい?」
「うまいよ」
「……そっか」
………?
「おまえ、食わねーの?」
「さっき食べた」
「そっか」
「………」
「………」
「なに、どしたの?」
「……別に、」
「なんかあった?」
ぶんぶん、と首を振るミケ。
「……ミケ、」
箸を置いて、傍に座る。
「なんかあるなら、ちゃんと言えって」
「……なんでもないってば」
「ミーケーっ」
そっぽを向いたミケの頬を両手で挟む。
「……っ」
俺の手を振りほどいたミケは頬を真っ赤に染めて、俺を見上げた。
「……ミケ?」
「…………あのさ、」
「ん?」
「海斗、俺…」
その時テーブルの上で、ぶぶぶと携帯が震えた。
「……電話」
「いいから、」
「………」
黙って髪を撫でていると、ずっと言葉を探していたらしいミケがぽつりと言う。
「……トクベツ」
「……え?」
……何が?
「………」
どういう意味なのかわからずに訊きかえしたら、いきなりキスされた。
「……好きとか、よくわかんないけど…」
俺のシャツを握ったまま、俺を見てミケが言う。
「……大切…」
「………」
「………」
なんてゆうか衝撃がでかすぎて、なんの反応できなかった。
特別。大切。
「……海斗?」
「……すげえ、嬉しい…」
それは俺にとって、どんな告白よりも威力があった。
「……俺もミケが特別」
ぎゅっと抱きしめながら、耳元で囁く。
「ミケより大切なものなんかない」
「……かい、」
「ごめんメシ、あとで食う」
空腹感なんて、もう忘れてしまった。
そのまま床に押し倒すと、ミケは潤んだ目で俺を見る。
「……海斗」
伸ばされた手も。
その声も、表情も、何もかも。
すべてが愛おしくて、たまらなかった。
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