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第1章
4.
しおりを挟む休日。
昼過ぎにベッドを抜け出して冷蔵庫を開けてみたけれど、あったのはミネラルウォーターのペットボトルのみ。
小さく舌打ちして、とりあえず水を飲む。
心地よい冷たさが喉を通り抜けていくのがわかる。
シャワーを浴びると、財布を持ってサンダルで外に出た。
外は日差しが強く、一瞬眩暈がした。
もうじき夏がくる。
暑いのは苦手だった。
けだるい暑さは無駄に体力を消耗させるし、食欲を無くさせる。
食費が浮くのはいいけど、体調を崩すとバイトに支障をきたす。それは困る。
コンビニのATMで金をおろした。
残高を見てうんざりする。
……今月ちょっとハードだな…
おにぎりと水を買うと、店を出た。
陽炎がゆらゆら揺れる、アスファルトの道。
日差しを避けて、細い路地に入る。
この辺は、古びた住宅が密集していた。
その一つ一つから、生活の匂いが溢れている。
玄関先に置いてあるフチの欠けた鉢植えや、変色した新聞紙の束。物干し竿にかかっている洗濯物、放置された三輪車、魚を焼く匂い。
石垣の上にただずんでいたブチ猫を撫でようとしたら、すんでのところで逃げられた。
部屋に戻ると、テーブルの上でケータイが鳴っていた。
「………」
一度切れてから相手を確認して、小さく溜め息をつく。
しばらくして、また部屋を出た。
歩きながら電話をかける。
「……あ、ユカリさん?ごめん、今日行けなくなった」
『なぁに?もしかして、デートー?』
「うん、そんなとこ」
『やだ、生意気ねー』
「そのうちまた、行くから」
『ハイハイ、待ってる。ところであんた、ちゃんとご飯食べてる?』
ユカリさんは唯一、俺のことを本気で心配してくれる人だ。
そして俺が唯一、信用してる人。
「大丈夫だよ、ありがとう」
そのデートの相手は今、仕事中らしい。
夕方には終わるからそれまでに来い、と言われた。
今夜は多分、帰れない。
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