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しおりを挟む昼休み。
「……飯、それだけっすか」
「おう」
ずるずると麺を啜りながら頷く。
俺の昼飯は大抵、惣菜パンかカップラーメンだ。
「毎日それじゃ、飽きないっすか」
「別に。腹が膨れりゃなんでもいいし」
そう言うと、阿部は信じられないという顔をする。
そして自分の弁当箱を差し出してきた。
「……食います?」
「いらねー」
「ですよね」
「でもまぁ、そこまで言うなら貰ってやる」
我ながら偉そうだと思いつつ、ひょいとだし巻き玉子をつまんだ。
「……うまい」
「マジっすか」
「おまえの母ちゃん、料理上手だな」
「いやそれ俺が作ったんすよ」
「………。おまえってことごとく、見た目を裏切るタイプだよな」
あまり人がこない屋上は、俺にとってこの職場唯一の憩いの場だ。
ところが最近になって、受け持ちクラスの生徒である阿部がちょくちょく姿を現すようになった。
奴は相変わらずクラスの奴らと馴染めないのか、身の置き場に困っているようだ。
俺としては奴の事情なんて別にどうだっていいけど、仕方がないので一緒に飯を食ったりしている。
「……職場体験?」
「そーそー」
飯を食った後、煙草に火をつけながら言う。
地域の企業や施設に協力してもらい、一週間程仕事を手伝わせてもらう。
いわばちょっとしたボランティアみたいなものだ。
「近所の保育園も幾つかあったし。おまえ、行ってみれば?」
「えっ、いいんすか?」
おーおー、嬉しそうな顔しやがって。
……ほんと、ツラに似合わねぇってゆうか
「まぁせいぜい頑張ってこいよ。最近のガキは手強いからな」
現実を知って泣きを見てこいと笑顔で言うと、阿部はこくこく頷いた。
……変な奴、
受け持つクラスに素行の悪さで有名な問題児がいると知った時には、クソめんどくせぇと思ったけど。
阿部は確かに見た目はちょっとアレだけど、授業にもちゃんと出てるし特に問題も起こさないごく普通の生徒だ。
……むしろ将来の事を真剣に考えてる、真面目な奴だよな…
「……おまえさ、なんで保育士になろうと思ったの」
なんとなく訊いてみた。
「なんでって…子どもは可愛いし」
……どこがだよ、
ガキなんて、生意気だし何言ってっかわかんねーしすぐ泣くしやかましいし面倒くさい事この上ない。
そんな事を思っている俺の隣りで、阿部は目を輝かせながら言った。
「ずっと、夢だったから」
「………」
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「先生はなんで教師になったんですか」
「……さぁな、忘れた」
俺はそう言うと、立ち上がった。
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