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☆番外編☆
バレンタイン
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日向&光琉 大学1年生
ーーーーーーーーーーー
光琉と同棲を始めて約1年。俺は今ピンチに陥っている。
「まじでどうしよう…」
3限が終わり、4限まで授業のある光琉を待つため一樹と一緒にカフェに来た。注文したのはもちろんホットバニラにシナモン追加。
嬉しいことに食文化学部の近くにあるカフェのメニューにも、ホットバニラがあるんだよ。
「結局解決しなかったのか」
「そうなんだよ。一樹助けて」
「って言われてもなぁ…」
もうバレンタイン当日だって言うのに、俺は何も用意できていないんだ。
「正直に話せば?」
「うーん…」
今までは実家だったから問題なく作れた。
「調理室借りれたんだろ? 作ればよかったのに」
「無理に決まってるだろ」
学部生なら授業以外でも使用可能な調理室がある。でも事前申請が必要で…
俺の履修項目は光琉と一緒に決めたんだ。当たり前に俺の時間割を把握している、そんな光琉に内緒で、バレンタインのお菓子作りなんて出来るわけがない。
俺の授業終わりには必ず迎えに来るし、光琉が来れない時はこうやって一樹とか、光琉が信頼している人が俺のところに来て、俺が1人にならないようにしてくれているんだ。
それに不便さを感じたことはない…なかったんだよ。今までは。
もちろん今なら作る時間がある! って日もあったんだ。でもそういう日に限って調理室が空いてなくてさ。光琉にバレずに家で作るなんて不可能だし。
「実家で作ればよかったじゃん」
「なんて言って帰ればいいんだよ」
「姉ちゃんに呼び出されてるとか、色々あるだろ」
「あっ………」
その手があったか! むしろ姉ちゃんなら喜んで協力してくれそうだったのに。
「なんでもっと早く言ってくれなかったんだよ」
「俺も今気づいたんだから仕方ないだろ。って、俺のせいかよ」
「一樹~!」
そろそろ光琉が気てしまう。何でもいいからアイデアをくれ。
「んー。じゃあさ、チョコレート溶かして体に塗る!」
「えっ、熱いじゃん」
「いやいや、返しがおかしいだろ」
*
結局何の案もないまま家に帰ってきてしまった。
「日向疲れた?」
「えっ?」
「ずっと元気ないからさ」
言えない…バレンタインに何も用意してないなんて。
「少し横になってくる?」
「……そうする」
寝室に入り、ベッドにダイブ。寝て起きたらバレンタイン前日に時間が戻ってる、なんてことが起きてくれないかな。
横になったり、室内をグルグルと回ったり、枕を抱きしめてみたり……はぁ。どれだけ考えても解決策が思いつかない。
「よしっ。とりあえず落ち着こう」
光琉の寝巻きを抱きしめ…
「いい匂い」
んー。でもちょっと足りないな。
「そうだっ!」
さっきまで光琉が付けていたマフラーとコートと…あっ、これもいい匂いがする。
ふっふっふっふ~。
「完っ璧!」
出来上がったそれに、ぱふっと倒れ込む。
「しあわせだ~」
光琉もこっちに来ないかなぁ? コレを見たら、上手く出来たねって褒めてくれるかな?
「ひな…っ!!」
「うん? あっ、光琉だ~」
ガチャリとドアが開く音が聞こえ、顔だけを出して確認する。
「えっ? 発情期まだだよね?」
「まだだけど」
「それなのに作ってくれたの?」
「えへへ~」
こう見えて俺が一番驚いてるんだ。いい匂いのものを集めてただけなのに、気が付いたら出来ててさ。
「嬉しい! 可愛い! 最高っ!」
「最高?」
「うん。ありがとう!」
光琉が喜んでくれてすっごく嬉しい。
「上手?」
「上手」
そう言って頭を撫でてくれる。
「光琉も入って」
「ありがとう」
入りやすいよう隙間をあけ、光琉の腕を取り中へと招待。入ってきた光琉にぎゅーっと抱きつく。
光琉の服で作った最高の巣。その中で最愛の番に抱きしめられる……幸せだ。
「ひかる~、俺ね、バレンタイン用意できなかったんだ」
「用意してくれたよ?」
??
「本来のバレンタインって恋人同士が愛を確かめ合う日でしょ? 日向の愛は伝わったよ」
なるほど! そういえば最近見たアメリカドラマでは、部屋を飾って恋人に薔薇の花束を贈っていたな。
「でも俺、用意したかった。光琉に食べてほしかった」
「そう? じゃあ遠慮なくいただくよ」
「えっ?」
何をって聞く前に、光琉の口で俺の口を塞がれた。
チョコレートを溶かして体に塗る…一樹はそれで光琉を誘惑すればいいって言いたかったんだよな?
俺、チョコレート塗ってないけど食べられたわ。
翌日、ちゃっかりチョコレートを用意していた光琉に、パンチを食らわしたことは言うまでもない。
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光琉と同棲を始めて約1年。俺は今ピンチに陥っている。
「まじでどうしよう…」
3限が終わり、4限まで授業のある光琉を待つため一樹と一緒にカフェに来た。注文したのはもちろんホットバニラにシナモン追加。
嬉しいことに食文化学部の近くにあるカフェのメニューにも、ホットバニラがあるんだよ。
「結局解決しなかったのか」
「そうなんだよ。一樹助けて」
「って言われてもなぁ…」
もうバレンタイン当日だって言うのに、俺は何も用意できていないんだ。
「正直に話せば?」
「うーん…」
今までは実家だったから問題なく作れた。
「調理室借りれたんだろ? 作ればよかったのに」
「無理に決まってるだろ」
学部生なら授業以外でも使用可能な調理室がある。でも事前申請が必要で…
俺の履修項目は光琉と一緒に決めたんだ。当たり前に俺の時間割を把握している、そんな光琉に内緒で、バレンタインのお菓子作りなんて出来るわけがない。
俺の授業終わりには必ず迎えに来るし、光琉が来れない時はこうやって一樹とか、光琉が信頼している人が俺のところに来て、俺が1人にならないようにしてくれているんだ。
それに不便さを感じたことはない…なかったんだよ。今までは。
もちろん今なら作る時間がある! って日もあったんだ。でもそういう日に限って調理室が空いてなくてさ。光琉にバレずに家で作るなんて不可能だし。
「実家で作ればよかったじゃん」
「なんて言って帰ればいいんだよ」
「姉ちゃんに呼び出されてるとか、色々あるだろ」
「あっ………」
その手があったか! むしろ姉ちゃんなら喜んで協力してくれそうだったのに。
「なんでもっと早く言ってくれなかったんだよ」
「俺も今気づいたんだから仕方ないだろ。って、俺のせいかよ」
「一樹~!」
そろそろ光琉が気てしまう。何でもいいからアイデアをくれ。
「んー。じゃあさ、チョコレート溶かして体に塗る!」
「えっ、熱いじゃん」
「いやいや、返しがおかしいだろ」
*
結局何の案もないまま家に帰ってきてしまった。
「日向疲れた?」
「えっ?」
「ずっと元気ないからさ」
言えない…バレンタインに何も用意してないなんて。
「少し横になってくる?」
「……そうする」
寝室に入り、ベッドにダイブ。寝て起きたらバレンタイン前日に時間が戻ってる、なんてことが起きてくれないかな。
横になったり、室内をグルグルと回ったり、枕を抱きしめてみたり……はぁ。どれだけ考えても解決策が思いつかない。
「よしっ。とりあえず落ち着こう」
光琉の寝巻きを抱きしめ…
「いい匂い」
んー。でもちょっと足りないな。
「そうだっ!」
さっきまで光琉が付けていたマフラーとコートと…あっ、これもいい匂いがする。
ふっふっふっふ~。
「完っ璧!」
出来上がったそれに、ぱふっと倒れ込む。
「しあわせだ~」
光琉もこっちに来ないかなぁ? コレを見たら、上手く出来たねって褒めてくれるかな?
「ひな…っ!!」
「うん? あっ、光琉だ~」
ガチャリとドアが開く音が聞こえ、顔だけを出して確認する。
「えっ? 発情期まだだよね?」
「まだだけど」
「それなのに作ってくれたの?」
「えへへ~」
こう見えて俺が一番驚いてるんだ。いい匂いのものを集めてただけなのに、気が付いたら出来ててさ。
「嬉しい! 可愛い! 最高っ!」
「最高?」
「うん。ありがとう!」
光琉が喜んでくれてすっごく嬉しい。
「上手?」
「上手」
そう言って頭を撫でてくれる。
「光琉も入って」
「ありがとう」
入りやすいよう隙間をあけ、光琉の腕を取り中へと招待。入ってきた光琉にぎゅーっと抱きつく。
光琉の服で作った最高の巣。その中で最愛の番に抱きしめられる……幸せだ。
「ひかる~、俺ね、バレンタイン用意できなかったんだ」
「用意してくれたよ?」
??
「本来のバレンタインって恋人同士が愛を確かめ合う日でしょ? 日向の愛は伝わったよ」
なるほど! そういえば最近見たアメリカドラマでは、部屋を飾って恋人に薔薇の花束を贈っていたな。
「でも俺、用意したかった。光琉に食べてほしかった」
「そう? じゃあ遠慮なくいただくよ」
「えっ?」
何をって聞く前に、光琉の口で俺の口を塞がれた。
チョコレートを溶かして体に塗る…一樹はそれで光琉を誘惑すればいいって言いたかったんだよな?
俺、チョコレート塗ってないけど食べられたわ。
翌日、ちゃっかりチョコレートを用意していた光琉に、パンチを食らわしたことは言うまでもない。
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更新が毎日の楽しみになってました!ありがとうございます。番外編も楽しみにしております。
最後まで読んでくださりありがとうございます(*˘︶˘*).。*♡
番外編も楽しんでもらえるよう、頑張ります!
完結おめでとうございます👏👏👏
素敵なお話ありがとうございました😊
紆余曲折を経て幸せなカップルになってくれて良かったです
また番外編更新されるとの事ありがとうございます!楽しみにしてますね🥰
最後まで読んでくださりありがとうございます♡
無事、2人を幸せにすることができました(✯ᴗ✯)
番外編も頑張ります!
今日、見つけて一気読みしてしまいました。序盤、二人の両片思い状態にだいぶやきもきしました。日向くんの不安が解消できて、二人が結ばれて番う決心することができてよかったです。
sahara00m様
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