【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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100.エピローグ〜バニラとりんごの恋〜

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「ポップコーンでき……ってこれ…」
「あっ! だめっ」

 実家から持ってきた服を片付けている最中、部屋に入ってきた光琉に1枚の服を手に取られてしまった。

「ふっ。懐かしいな」
「………返さなくてごめんな」

 光琉から借りたままのジャージ。

「匂いつけようか?」
「!! いいの?」
「うん。というかコレ、日向の匂いがたっぷりついてて離したくないし」
「///」

 そう言ってジャージを羽織った光琉。

「あははっ。合ってないな」
「ふっ。確かに」

 今着てる服とアンバランスすぎる。

「片付けは後にして、映画観よう」
「うん」

 実はシアタールームがあって…今日は人気恋愛映画を一緒に観るんだ。主演俳優の2人が最近結婚を発表し、まだ観てなかったってことを思い出してな。

 手を繋いでシアタールームに入ると、バニラ味のポップコーンとりんご味のポップコーンから香る匂いが、部屋中に充満している。

「いちごエクレアもあるじゃん」
「この映画を観るならいるかなって」
「だな」

 今日は光琉の足の間が俺の座る場所。



「ぐすっ…」
「泣いてる日向が可愛い」
「めちゃくちゃいい話じゃん」

 まさか泣かされるとは思わなかった。

 光琉にもたれかかり、光琉の手を使って流れた涙を拭う。

「もう、可愛すぎる」
「へ?」
「はぁ…ツンデレの日向も可愛いけど、デレデレの日向が可愛いっ」

 ぎゅーっと抱きしめ、項を舐めてくる……いやいや、ちょっと待て。

「ツンデレって…俺が?」
「うん」
「嘘でしょ!?」

 後で『ツンデレとは』って調べよう。

 それにしても…この映画を見るといちごエクレアが食べたくなる気持ち、やっと分かったわ。エクレアに手を伸ばそうとしたら、光琉が気付いて食べさせてくれた。

「ん。うまうま~」
「ふっ」

 俺が食べてる間も、ずっと項から頬にかけてたくさんキスしてくる…ドキドキしてくるんだけど。

 なんだか余裕な光琉にムカついたから、エクレアと一緒に光琉の指も食べてやった。

「んふふ~」
「日向、こっち向いて」
「いや~」

 って言ったのに、顔を後ろに向けられ…キスをされ…長いキスにいつも通り力が抜けてしまう。

「むぅ…」

 結局、俺ばっかり余裕ないじゃん。くるっと後ろを向き、フードを被って光琉に攻撃!

「にゃー!!」

 ネコ耳付きのフードだからと鳴き声付きで猫パンチ……やってみて後悔した。キャラじゃなさすぎて恥ずかしい。

「えっ…可愛いんだけど」
「……真顔で言うなよ」

 無言になった光琉に抱き上げられ、寝室に連れて行かれた。

「光琉?」
「日向が悪いよ」
「え?」
「煽るから」
「いや…煽ったつもりは…」




 そのまま予定より数日早く発情期が来てしまい、気が付いた時は映画を観てから1週間も経っていた。

「また買いに行こうね」
「??」
「ネコ耳付きのモコモコ部屋着」
「あるのに?」
「前のはダメにしちゃったから」
「///」

 光琉がどうしてもほしいって言うから買った、モコモコ生地の部屋着。ラットになった光琉がダメにしちゃったらしい。

「可愛い日向にネコ耳とか可愛すぎた」

 そういえば…何度も『にゃー』と言わされた気がしてきた。

「違うのにする」
「黒猫っていうのもいいよね」
「猫は買わないからな」
「白猫にする?」
「いや、猫じゃん」

 モコモコ部屋着…俺には似合わないとか思ってたのにな。

『つい抱きしめたくなる肌触り』このキャッチフレーズのモコモコ生地の部屋着を、結局3セットも買ってしまった。白猫に白うさぎに……黒猫の3着。

「光琉も一緒に着よ」
「残念でした。サイズがないよ」
「うっ…あれ? 光琉、背、伸びた?」
「うん。今188センチ」
「俺は止まったのに…」

 あれ? 俺、オメガにしては高身長って気にしてたのに…いつから気にしなくなったんだろう?

「日向、俺に合わせて、身長伸ばしてくれてありがとう」
「…うん///」

 俺もありがとう。の気持ちを込めて、背伸びして光琉にキスをした。





 数年後…日向のそばにいたい光琉が、日向の夢を叶えるためと言い訳し、自社ビルの1階に洋菓子店を開く。もちろんスタッフは光琉が全て手配。以前日向が提案した和風テイストのその店が、オフィス街の憩いの場になる……そんな未来があるかもしれない。



✽.。.:*・°✽.。.:*・°✽.。.:*・°end

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