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94.光琉の欲しいもの②
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「さぁ、好きなだけ食べていいぞ」
今日のディナーはお寿司! って言っても回ってるけど。
光琉、回転寿司に来たことがないらしい。流石というかなんというか…
本当は別の店に行こうと思っていた。けどいつもより子供っぽく、行ってみたいとテンションの上がった光琉が少し可愛くて。そんな姿を見たら回転寿司に連れて行ってあげようって思っちゃうよな。
「光琉、そっちに座らないとお寿司取れないぞ?」
テーブル席なのに、対面ではなく俺の隣に座っている光琉。
「日向に取ってもらうから大丈夫。誕生日だから良いでしょ?」
「それは別にいいけどさ」
結局俺がレーンからお寿司を取って渡すなら、回転寿司じゃなくても良かったんじゃないか?
まぁ…ニコニコと楽しそうだしいっか。
「光琉、何食べたい?」
「日向のおすすめ」
「じゃあ…」
せっかくならと、回らないお寿司屋さんでは中々食べる機会のない物をチョイスした。もちろん俺もよく食べるお寿司を。
「それで、光琉が欲しいものってなんだったんだ?」
隣で俺にひっついている光琉の顔を覗きこんで聞いてみる。
「…………ちょっと待って。ここではちょっと…」
「気になる」
いい加減教えてほしい。念を込めて見つめてみるも…
「うっ。………後で絶対言うから」
「分かった」
だめだったか。欲しいもの…色々考えたけど、全く思いつかなかったんだよな。
回転寿司を出て、光琉が行きたいところがあると、地元から少し離れた眺めの良い高台に来た。
「おぉ! ここからの眺め良いな」
「日向を連れてきたいってずっと思ってたんだ」
「前にも来たことがあるのか?」
すごく雰囲気がいいと言うか…周りもカップルだらけなこの場所に。
「いや、初めて来たよ。ネットで見て日向といつか来たいなって」
「そっか」
良かった。俺以外の誰かと来たとかじゃなくて。付き合うのは俺が初めてだって聞いてるけど、それでも気になってしまうんだ。
「日向…」
「うん?」
「俺…」
そこで言葉を止め、何度か深呼吸をしている光琉。
しばらく沈黙が続いた後、光琉が口を開いた。
「俺、日向と番になりたい」
「っ!!」
「それからいずれ……大学を卒業したら、結婚したい」
「っ!!」
番の話はしたことがある。普段から俺の番って言うことだってあった。だからいつかはそうなるだろうって思ってたけど。
分かってても改めて言われると驚いてしまうし、すごく嬉しい。
光琉と向かい合い、両手をとられる。
「一生俺の隣には日向がいてほしい。ずっと一緒にいたい」
俺も。俺の隣には一生光琉がいてほしい。ずっと一緒にいたい。
「日向、俺の番になってください」
「~~~」
俺の目を見て、真剣な顔でそう言ってくれる。
俺も同じ気持ちだと答えたいのに、嬉しいと返事をしたいのに…涙が止まらなくて声を出せない。
光琉は、そんな俺が泣き止むまでずっと待ってくれている。
「俺も」
「うん」
「光琉の、番に」
「うん」
「なりたい」
「うん。ありがとう」
鼻をすすりながら、思いが伝わるようにと一言一言、言葉を紡いだ。
俺、この腕が好きだ。今も強く抱きしめてくれる、この腕が。
「高校を卒業したら、噛んでいい?」
「うん」
俺、ずっと、ずっと光琉と一緒にいれるんだ。
最初は…光琉に本当に好きな人ができるまでの、期間限定だからと自分に言い聞かせていた。好きになりすぎないように、自己防衛していた。
でもそんなこと全くの無駄でしかなくて…どんどん好きになってしまうのが止められなかった。
俺が自分を受け入れるまでずっと待っていてくれた光琉。それに俺を支えてくれた友達。みんなのお陰で俺、一歩が踏み出せたんだよな。
3年前の俺に教えてあげたい。
俺にも幸せがやってくるって。
*
「そういえば結局光琉が欲しかったものって?」
「もう貰えたよ」
「へ?」
「ふっ」
「???」
本当になんだったんだ?
今日のディナーはお寿司! って言っても回ってるけど。
光琉、回転寿司に来たことがないらしい。流石というかなんというか…
本当は別の店に行こうと思っていた。けどいつもより子供っぽく、行ってみたいとテンションの上がった光琉が少し可愛くて。そんな姿を見たら回転寿司に連れて行ってあげようって思っちゃうよな。
「光琉、そっちに座らないとお寿司取れないぞ?」
テーブル席なのに、対面ではなく俺の隣に座っている光琉。
「日向に取ってもらうから大丈夫。誕生日だから良いでしょ?」
「それは別にいいけどさ」
結局俺がレーンからお寿司を取って渡すなら、回転寿司じゃなくても良かったんじゃないか?
まぁ…ニコニコと楽しそうだしいっか。
「光琉、何食べたい?」
「日向のおすすめ」
「じゃあ…」
せっかくならと、回らないお寿司屋さんでは中々食べる機会のない物をチョイスした。もちろん俺もよく食べるお寿司を。
「それで、光琉が欲しいものってなんだったんだ?」
隣で俺にひっついている光琉の顔を覗きこんで聞いてみる。
「…………ちょっと待って。ここではちょっと…」
「気になる」
いい加減教えてほしい。念を込めて見つめてみるも…
「うっ。………後で絶対言うから」
「分かった」
だめだったか。欲しいもの…色々考えたけど、全く思いつかなかったんだよな。
回転寿司を出て、光琉が行きたいところがあると、地元から少し離れた眺めの良い高台に来た。
「おぉ! ここからの眺め良いな」
「日向を連れてきたいってずっと思ってたんだ」
「前にも来たことがあるのか?」
すごく雰囲気がいいと言うか…周りもカップルだらけなこの場所に。
「いや、初めて来たよ。ネットで見て日向といつか来たいなって」
「そっか」
良かった。俺以外の誰かと来たとかじゃなくて。付き合うのは俺が初めてだって聞いてるけど、それでも気になってしまうんだ。
「日向…」
「うん?」
「俺…」
そこで言葉を止め、何度か深呼吸をしている光琉。
しばらく沈黙が続いた後、光琉が口を開いた。
「俺、日向と番になりたい」
「っ!!」
「それからいずれ……大学を卒業したら、結婚したい」
「っ!!」
番の話はしたことがある。普段から俺の番って言うことだってあった。だからいつかはそうなるだろうって思ってたけど。
分かってても改めて言われると驚いてしまうし、すごく嬉しい。
光琉と向かい合い、両手をとられる。
「一生俺の隣には日向がいてほしい。ずっと一緒にいたい」
俺も。俺の隣には一生光琉がいてほしい。ずっと一緒にいたい。
「日向、俺の番になってください」
「~~~」
俺の目を見て、真剣な顔でそう言ってくれる。
俺も同じ気持ちだと答えたいのに、嬉しいと返事をしたいのに…涙が止まらなくて声を出せない。
光琉は、そんな俺が泣き止むまでずっと待ってくれている。
「俺も」
「うん」
「光琉の、番に」
「うん」
「なりたい」
「うん。ありがとう」
鼻をすすりながら、思いが伝わるようにと一言一言、言葉を紡いだ。
俺、この腕が好きだ。今も強く抱きしめてくれる、この腕が。
「高校を卒業したら、噛んでいい?」
「うん」
俺、ずっと、ずっと光琉と一緒にいれるんだ。
最初は…光琉に本当に好きな人ができるまでの、期間限定だからと自分に言い聞かせていた。好きになりすぎないように、自己防衛していた。
でもそんなこと全くの無駄でしかなくて…どんどん好きになってしまうのが止められなかった。
俺が自分を受け入れるまでずっと待っていてくれた光琉。それに俺を支えてくれた友達。みんなのお陰で俺、一歩が踏み出せたんだよな。
3年前の俺に教えてあげたい。
俺にも幸せがやってくるって。
*
「そういえば結局光琉が欲しかったものって?」
「もう貰えたよ」
「へ?」
「ふっ」
「???」
本当になんだったんだ?
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