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93.光琉の欲しいもの
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今日は光琉の誕生日。
「日向、行こう」
「うん!」
昼休みに入り、これからみんなでお祝いするため空き教室へ向かう。
差し出された光琉の手を取り、反対の手には持参したお弁当を持って、いつもよりスピードを落として歩く。
これには理由があって…みんなが先に行きケーキとかプレゼントとか、お祝いの準備をしてくれているから。だから俺は時間稼ぎをする必要があるんだ。
って、準備と言っても大したことはしないんだけどな。クラッカーでお出迎えするくらい。
しかも全員の誕生日に同じことをしているから、光琉もドアを開けたら何が起こるか分かっているし。だけど一応サプライズ。
教室に入ると、パーン! とクラッカーの音と共に、それぞれお祝いの言葉を光琉に贈る。うん。成功、成功。
「ありがとう」
俺の頬に手を当ててお礼を言う光琉。
「………みんなにも言えよ」
「もちろん感謝してるよ。でもここまで連れてきてくれた日向に、一番にお礼を伝えたかったんだ」
「なっ、んだよそれ///」
連れてきたって…ここでお昼を食べることはグループトークで話して決めたことだから、光琉も事前に知ってたのに。
照れながら光琉を見上げていると、いつの間にか腰に回された腕に力を入れられ、グッと光琉に引き寄せられた。
………パンパンと手を叩きながら近づいてきた宇都宮に、速攻で引き剥がされてしまったけど。
「はいはい。どうせサプライズが成功するか、ソワソワしてたピヨちゃんが可愛かったとかだろ」
「んなっ!」
別にソワソワなんてしてないし。
「さっ、昼飯食おうぜ~」
宇都宮に向けていた視線を光琉に戻し、ソワソワしてしまっていたのか光琉に尋ねてみるも…。
「いつも通り可愛かったよ」
「…………」
答えになってねぇ…。
どんな風に見えていたんだろうと思いながら、ささっとお昼を食べ終え、買っておいたケーキとプレゼントで改めてお祝いをする。
「光琉、そういえば誕生日に欲しいって言ってたの、何だったんだ?」
当日に言うと言われてから、ずっと気になっていたんだよな。
「うん。俺さ、来年度から会社を任せられることになったんだ」
「っ! それって社長ってこと? 会社、継ぐのか?」
「いや。俺が所属してる部署が子会社化するんだ。そこの社長」
「まじか……すごいな」
光琉が親の会社でバイトしていたのは知ってたけど、詳しいことは聞いていなかった。というか聞いてもよく分からなかったっていう方が正しいんだけど。
でもまさか大学生で社長になるほどってすごすぎる。絶対バイトの領域を超えて働いてそう。
「俺、日向の隣に立つのに相応しくなれたかな?」
「え? それは俺のセリフ…」
そんなことないと言いながら、俺を膝の上に座らせた光琉。
「俺の方こそ、光琉の隣に立つのにふさわしくなった? 夢も見つけたし、大学も合格したし…少しは近づけたと思ってたんだけど…」
「日向は隣にいてくれるだけでいいんだよ」
「俺だってそうだよ! 光琉が隣にいてくれるだけでいい!」
前に、上位アルファの光琉をゲット出来て、オメガって楽でいいね。と名前も知らない後輩に言われたことがある。フェロモンで誘惑したと言われたことも…いやいや、俺ちゃんと抑制剤飲んでるから。
それに俺は上位アルファだから光琉を好きになったんじゃないし、光琉が何者でなくたっていい。むしろ、社長令嬢…令息? 御曹司か? じゃないほうが良かったくらいだし。
「俺…一般家庭だし、光琉の家柄と釣り合わないし」
「家柄なんて家族の誰も気にしてないから! でも日向が気になるなら、家も会社も捨てる」
「ダメだって」
そりゃあスタート地点が他の人とは違ったかもしれない。でも光琉が頑張ったから子会社の社長を任されるんだし、それを捨てる必要はないから。
「光琉が頑張ってたって俺知ってるから」
「ありがとう。俺も日向が頑張ってるって知ってるよ」
「光琉…」
光琉と見つめ合い、あ…キスするなって思ったら…
「ゔんっ!」
咳払いが聞こえ、ここにいるのが俺達2人じゃないってことを思い出した。
「あのさ、俺等がいるってこと忘れてないか?」
「/// ごめん」
さっと光琉から距離をとり…と言ってもがっちりホールドされているから、気持ちの問題だけど、ここでキスするのはなんとか避けた。
光琉は少し不服そうだったけど。
「放課後、デートするんだよな?」
「続きはそこでしろって」
「程々にね」
「明日も学校がありますからね」
一樹、宇都宮、蓮、稜ちゃんと、みんなが呆れ顔でそんな事を言ってくる。
「/// うるさいっ」
「もし明日に響いたら、一緒に学校休もうね」
「光琉っ!」
「日向、行こう」
「うん!」
昼休みに入り、これからみんなでお祝いするため空き教室へ向かう。
差し出された光琉の手を取り、反対の手には持参したお弁当を持って、いつもよりスピードを落として歩く。
これには理由があって…みんなが先に行きケーキとかプレゼントとか、お祝いの準備をしてくれているから。だから俺は時間稼ぎをする必要があるんだ。
って、準備と言っても大したことはしないんだけどな。クラッカーでお出迎えするくらい。
しかも全員の誕生日に同じことをしているから、光琉もドアを開けたら何が起こるか分かっているし。だけど一応サプライズ。
教室に入ると、パーン! とクラッカーの音と共に、それぞれお祝いの言葉を光琉に贈る。うん。成功、成功。
「ありがとう」
俺の頬に手を当ててお礼を言う光琉。
「………みんなにも言えよ」
「もちろん感謝してるよ。でもここまで連れてきてくれた日向に、一番にお礼を伝えたかったんだ」
「なっ、んだよそれ///」
連れてきたって…ここでお昼を食べることはグループトークで話して決めたことだから、光琉も事前に知ってたのに。
照れながら光琉を見上げていると、いつの間にか腰に回された腕に力を入れられ、グッと光琉に引き寄せられた。
………パンパンと手を叩きながら近づいてきた宇都宮に、速攻で引き剥がされてしまったけど。
「はいはい。どうせサプライズが成功するか、ソワソワしてたピヨちゃんが可愛かったとかだろ」
「んなっ!」
別にソワソワなんてしてないし。
「さっ、昼飯食おうぜ~」
宇都宮に向けていた視線を光琉に戻し、ソワソワしてしまっていたのか光琉に尋ねてみるも…。
「いつも通り可愛かったよ」
「…………」
答えになってねぇ…。
どんな風に見えていたんだろうと思いながら、ささっとお昼を食べ終え、買っておいたケーキとプレゼントで改めてお祝いをする。
「光琉、そういえば誕生日に欲しいって言ってたの、何だったんだ?」
当日に言うと言われてから、ずっと気になっていたんだよな。
「うん。俺さ、来年度から会社を任せられることになったんだ」
「っ! それって社長ってこと? 会社、継ぐのか?」
「いや。俺が所属してる部署が子会社化するんだ。そこの社長」
「まじか……すごいな」
光琉が親の会社でバイトしていたのは知ってたけど、詳しいことは聞いていなかった。というか聞いてもよく分からなかったっていう方が正しいんだけど。
でもまさか大学生で社長になるほどってすごすぎる。絶対バイトの領域を超えて働いてそう。
「俺、日向の隣に立つのに相応しくなれたかな?」
「え? それは俺のセリフ…」
そんなことないと言いながら、俺を膝の上に座らせた光琉。
「俺の方こそ、光琉の隣に立つのにふさわしくなった? 夢も見つけたし、大学も合格したし…少しは近づけたと思ってたんだけど…」
「日向は隣にいてくれるだけでいいんだよ」
「俺だってそうだよ! 光琉が隣にいてくれるだけでいい!」
前に、上位アルファの光琉をゲット出来て、オメガって楽でいいね。と名前も知らない後輩に言われたことがある。フェロモンで誘惑したと言われたことも…いやいや、俺ちゃんと抑制剤飲んでるから。
それに俺は上位アルファだから光琉を好きになったんじゃないし、光琉が何者でなくたっていい。むしろ、社長令嬢…令息? 御曹司か? じゃないほうが良かったくらいだし。
「俺…一般家庭だし、光琉の家柄と釣り合わないし」
「家柄なんて家族の誰も気にしてないから! でも日向が気になるなら、家も会社も捨てる」
「ダメだって」
そりゃあスタート地点が他の人とは違ったかもしれない。でも光琉が頑張ったから子会社の社長を任されるんだし、それを捨てる必要はないから。
「光琉が頑張ってたって俺知ってるから」
「ありがとう。俺も日向が頑張ってるって知ってるよ」
「光琉…」
光琉と見つめ合い、あ…キスするなって思ったら…
「ゔんっ!」
咳払いが聞こえ、ここにいるのが俺達2人じゃないってことを思い出した。
「あのさ、俺等がいるってこと忘れてないか?」
「/// ごめん」
さっと光琉から距離をとり…と言ってもがっちりホールドされているから、気持ちの問題だけど、ここでキスするのはなんとか避けた。
光琉は少し不服そうだったけど。
「放課後、デートするんだよな?」
「続きはそこでしろって」
「程々にね」
「明日も学校がありますからね」
一樹、宇都宮、蓮、稜ちゃんと、みんなが呆れ顔でそんな事を言ってくる。
「/// うるさいっ」
「もし明日に響いたら、一緒に学校休もうね」
「光琉っ!」
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