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89.バイト
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「バイトがしたい」
蓮と2人オメガ用更衣室で着替えながら、最近の悩みを聞いてもらっている。
「欲しいものでもあるの?」
「もうすぐ光琉の誕生日じゃん? プレゼント買いたいんだよね」
「ケーキ作るって言ってなかった?」
「うん。ケーキは食べるとなくなっちゃうじゃん? もちろんケーキも作るけど、形に残る物も買いたいんだ」
去年はケーキしか贈れなかった。光琉は去年も今年も、スイーツと形に残る物と2つくれたんだ。俺も形に残る物をプレゼントしたい。
「でも香坂くん、日向がバイトするとか許可しなさそうだけど」
「だよなぁ。俺もそう思ってまだ言えてなくてさ。それに親も説得しないといけないし」
俺にネット販売出来るような技術が、何かあればなぁ…
「正直に話す…のは喜ぶだろうけど、その気持が嬉しいってバイトはさせてもらえなさそうだね」
「うん。はぁ…。どうやって説得しよう」
「いい案が思いついたら伝えるよ」
「ありがとな」
一樹にも相談してみるか。
今日の体育はテニスだから…恐らくアルファはアルファ同士で試合をするよな。その時に一樹にも相談してみよう。
*
よしっ! いい情報を得られた! どうやら、よく行くいつものカフェがバイトを募集しているらしい。一樹が昨日の部活帰りに寄った際、募集広告が張り出されていたのを見たそうだ。
カフェと言っても学校内にあるから、生徒と学校関係者しか利用できない。あそこなら許可をもらえるかも!
………って思ったんだけどな。
「ダメ」
「いいじゃん」
「ダメ」
「学校内だし」
教室に戻りながらお願いし、戻ってからもお願いし…さっきからずっとコレの繰り返し。
「なんでバイトしたいの?」
「それは……欲しいものがあって」
「なに?」
「え?」
「何が欲しいの?」
光琉の誕生日プレゼント、なんて言えるわけないだろ。
「えっと……内緒」
「なんで」
「内緒だから」
うーん、どうしよう。光琉の機嫌がどんどん悪くなってきた。
「買ってあげるから」
「いい。自分で買う」
「日向の欲しいものは全部俺が買う。何が欲しいのか教えて」
「だから言わないって言ってるだろ」
大体、何を買うかなんてまだ決めてないし。
「言わないならバイトも許可しないから」
「嘘つき」
「え?」
「光琉、俺がやりたいことやっていいって」
自由を奪いたくないって言ったくせに。
「それは進路の話」
「その先に就職があるじゃん。俺、働くつもりでいてるし」
「分かってるよ。でもそれは…」
と言って黙ってしまった光琉。
「なんだよ」
「いや…それより、バイトはダメだからね。危険だから」
何かはぐらかされた気がする。
それより危険ってなんだよ。いつも行くカフェだし、危険なことなんてないのに。
「短期でいいから! お願い」
光琉の目をじっと見上げ、念を込めてみる。
「うっ…かわっ……日向、それわざとでしょ」
「なにが?」
「ーー無自覚って…たち悪すぎだろーー」
小声で呟いた後、俺から少し距離をとり、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
「なぁ、ひ~か~る~」
肩を揺すって何度もお願いしてると、良いこと思いついた! と言わんばかりの笑顔の光琉。
「俺も一緒にバイトする」
「は? 募集人数1人だからダメ。一緒に受けたら絶対光琉が受かっちゃうじゃん」
それに光琉がバイトとか…光琉目当てのお客さんがたくさん来ちゃうじゃないか。
「なら日向も諦めて? 日向の欲しいものは全部俺が買うから。むしろ俺に全部買わせて」
「なっ!」
本当に買いそうなのがなぁ。
この間も買い物デートって言うから光琉の服を買うんだと思ってたのに、俺の服ばっかり買ってたし。こんなにいらないって言ったら、俺が買った服を着て欲しいとか言ってくるしさ…
って、それは今どうでもよくて。
「これだけはダメ。自分で買う」
「なんで」
「ダメなものはダメだから」
結局今日は説得することが出来ず…もう無視して勝手に応募してやろうかな。
でも光琉が嫌がることはしたくないしなぁ。
何か説得する方法ないかなぁ?
蓮と2人オメガ用更衣室で着替えながら、最近の悩みを聞いてもらっている。
「欲しいものでもあるの?」
「もうすぐ光琉の誕生日じゃん? プレゼント買いたいんだよね」
「ケーキ作るって言ってなかった?」
「うん。ケーキは食べるとなくなっちゃうじゃん? もちろんケーキも作るけど、形に残る物も買いたいんだ」
去年はケーキしか贈れなかった。光琉は去年も今年も、スイーツと形に残る物と2つくれたんだ。俺も形に残る物をプレゼントしたい。
「でも香坂くん、日向がバイトするとか許可しなさそうだけど」
「だよなぁ。俺もそう思ってまだ言えてなくてさ。それに親も説得しないといけないし」
俺にネット販売出来るような技術が、何かあればなぁ…
「正直に話す…のは喜ぶだろうけど、その気持が嬉しいってバイトはさせてもらえなさそうだね」
「うん。はぁ…。どうやって説得しよう」
「いい案が思いついたら伝えるよ」
「ありがとな」
一樹にも相談してみるか。
今日の体育はテニスだから…恐らくアルファはアルファ同士で試合をするよな。その時に一樹にも相談してみよう。
*
よしっ! いい情報を得られた! どうやら、よく行くいつものカフェがバイトを募集しているらしい。一樹が昨日の部活帰りに寄った際、募集広告が張り出されていたのを見たそうだ。
カフェと言っても学校内にあるから、生徒と学校関係者しか利用できない。あそこなら許可をもらえるかも!
………って思ったんだけどな。
「ダメ」
「いいじゃん」
「ダメ」
「学校内だし」
教室に戻りながらお願いし、戻ってからもお願いし…さっきからずっとコレの繰り返し。
「なんでバイトしたいの?」
「それは……欲しいものがあって」
「なに?」
「え?」
「何が欲しいの?」
光琉の誕生日プレゼント、なんて言えるわけないだろ。
「えっと……内緒」
「なんで」
「内緒だから」
うーん、どうしよう。光琉の機嫌がどんどん悪くなってきた。
「買ってあげるから」
「いい。自分で買う」
「日向の欲しいものは全部俺が買う。何が欲しいのか教えて」
「だから言わないって言ってるだろ」
大体、何を買うかなんてまだ決めてないし。
「言わないならバイトも許可しないから」
「嘘つき」
「え?」
「光琉、俺がやりたいことやっていいって」
自由を奪いたくないって言ったくせに。
「それは進路の話」
「その先に就職があるじゃん。俺、働くつもりでいてるし」
「分かってるよ。でもそれは…」
と言って黙ってしまった光琉。
「なんだよ」
「いや…それより、バイトはダメだからね。危険だから」
何かはぐらかされた気がする。
それより危険ってなんだよ。いつも行くカフェだし、危険なことなんてないのに。
「短期でいいから! お願い」
光琉の目をじっと見上げ、念を込めてみる。
「うっ…かわっ……日向、それわざとでしょ」
「なにが?」
「ーー無自覚って…たち悪すぎだろーー」
小声で呟いた後、俺から少し距離をとり、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
「なぁ、ひ~か~る~」
肩を揺すって何度もお願いしてると、良いこと思いついた! と言わんばかりの笑顔の光琉。
「俺も一緒にバイトする」
「は? 募集人数1人だからダメ。一緒に受けたら絶対光琉が受かっちゃうじゃん」
それに光琉がバイトとか…光琉目当てのお客さんがたくさん来ちゃうじゃないか。
「なら日向も諦めて? 日向の欲しいものは全部俺が買うから。むしろ俺に全部買わせて」
「なっ!」
本当に買いそうなのがなぁ。
この間も買い物デートって言うから光琉の服を買うんだと思ってたのに、俺の服ばっかり買ってたし。こんなにいらないって言ったら、俺が買った服を着て欲しいとか言ってくるしさ…
って、それは今どうでもよくて。
「これだけはダメ。自分で買う」
「なんで」
「ダメなものはダメだから」
結局今日は説得することが出来ず…もう無視して勝手に応募してやろうかな。
でも光琉が嫌がることはしたくないしなぁ。
何か説得する方法ないかなぁ?
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