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88.俺の夢②
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待ちにまった後夜祭。
運動場にいる俺の隣には光琉がいて。ふふ。キャンプファイヤー、今年は無事に見れそうで良かった。
「日向、そろそろ点火するみたいだよ」
光琉がそう言ったのと同時に、文化祭委員のカウントが始まる。気持ちが高揚している俺は、喧騒に紛れて、待ち望んでいたこの気持ちを光琉に伝えることにした。
10
「俺さ」
9
「うん」
8
「キャンプファイヤーの点火」
7
「ずっと光琉と見たかったんだ」
6
「それって」
5
「ジンクスがあるから?」
4
「っ!! 光琉、知ってたのか?」
3
「まぁね」
2
「そういうの興味ないと思ってた」
1
「日向、俺が叶えてあげる」
0
「んなっ!」
もうジンクスは叶っているのに、何をするのかと思えば…点火されるタイミングでキスをされた。
「日向、キャンプファイヤー見なくていいの?」
「み、見るけどさっ」
何事もなかったようにしやがって。
「点火のタイミングでキスをしたから、これで俺達は一生離れないね」
「え? ジンクスの内容違うくないか?」
「そう?」
ニコニコと嬉しそうにされたら、みんなの前でキスされたこと、強く怒れないじゃないか。
「日向が知ってるジンクスの内容って?」
「す…好きな人と一緒に点火を見たら」
「見たら?」
「付き合えるって」
言った瞬間ぎゅーっと抱きしめられ、それを見た周りの人から悲鳴が聞こえてくる。さっきはなかった悲鳴…ってことは、キスは見られていなかったんだな。
「俺達はもう付き合ってるから、一生離れない方のジンクスが該当するね」
「/// 去年だから。見たかったの。去年一緒に見れなかったから、今年は見たいなって」
「え? ……去年? 本当に?」
本当に去年見たかったのかと、額を合わせ、何度も何度も確認してくる。
「嘘ついてどうするんだよ」
「それってさ…去年のこの時期には、俺と付き合いたいって……そう思ってくれてたってことだよね?」
「お、思うのは自由だろ!」
「そうだね」
嬉しいと言って、更に強く抱きしめてきた。抱きしめられる前に見えた光琉の顔が赤く見えたのは、きっとキャンプファイヤーのせいだけじゃない。
後夜祭は各部門の賞の発表をした後、去年盛り上がった告白タイムが始まった。壇上に上がることはないけれど、俺も光琉に夢の告白をしよう。
「光琉。俺の夢だけど…」
「教えて?」
「俺、スイーツ作りがしたい。俺の作ったスイーツで、誰かを笑顔にしたい」
まだまだ実力不足なのは百も承知。でも、光琉は笑わずに聞いてくれるって分かってるから。
「素敵な夢だね」
ほらな。
「ありがとな。でも……光琉には反対されるかもって、ちょっと思ってた」
「うーん。本音を言うと、嫌だよ? 日向が作ったものは全部俺が食べたいし。この2日間もすっごい我慢した」
「我慢って、ケーキにクリーム添えただけだぞ?」
そりゃ俺だって楽しかったし、夢に気付いたきっかけではあるけど…
「スポンジケーキも作ったでしょ」
「みんなで作ったから、俺が作ったやつがどれかなんて分からないじゃん」
「カスタードは全部日向の手作りでしょ」
確かに…
「光琉も手伝ってくれたじゃん」
「それでも。それでも嫉妬してしまうくらい好きなんだ」
俺も…光琉が誰かを思って作るのは、俺だけが良い。
なら…
「なんで反対しないんだ?」
「日向が楽しそうにしてたから。誰にも日向を見せたくないし、ずっと閉じ込めていたいけど…日向の自由を奪いたくはないんだ」
閉じ込められるのも悪くないって思うのは、俺がオメガだからだろうか? 番のアルファの気持ちには答えたいと、そう思ってしまうものなのかもしれない。
「日向には、日向がやりたいって思ってることを自由にやってほしい」
光琉…
「俺の番は寛大ですねぇ」
「でしょ? もっと好きになった?」
「なったなった」
例え閉じ込められても好きだけどな。
「俺さ、製菓専門学校に進もと思う」
「うん」
「光琉やみんなと一緒に大学に通ってみたかったけど、製菓コースなんてないしな」
キャンパスライフってのを経験したかった。それに親も、このまま付属大学に進んで欲しいって思っているだろうし。
「製菓コースがあれば同じ大学に進んでくれる?」
「あればな」
「俺に考えがある。早急に手配するから」
「へ?」
手配? 一体何をするつもりなんだ?
「日向は専門学校を探してて。どんな学校に進みたいのか、参考にするから」
「? よく分からないけど、分かった」
参考? 光琉も製菓の道に進む…わけないし。
?? 謎だ。
「日向は何も気にせず、俺に任せてほしい」
「お、おう」
運動場にいる俺の隣には光琉がいて。ふふ。キャンプファイヤー、今年は無事に見れそうで良かった。
「日向、そろそろ点火するみたいだよ」
光琉がそう言ったのと同時に、文化祭委員のカウントが始まる。気持ちが高揚している俺は、喧騒に紛れて、待ち望んでいたこの気持ちを光琉に伝えることにした。
10
「俺さ」
9
「うん」
8
「キャンプファイヤーの点火」
7
「ずっと光琉と見たかったんだ」
6
「それって」
5
「ジンクスがあるから?」
4
「っ!! 光琉、知ってたのか?」
3
「まぁね」
2
「そういうの興味ないと思ってた」
1
「日向、俺が叶えてあげる」
0
「んなっ!」
もうジンクスは叶っているのに、何をするのかと思えば…点火されるタイミングでキスをされた。
「日向、キャンプファイヤー見なくていいの?」
「み、見るけどさっ」
何事もなかったようにしやがって。
「点火のタイミングでキスをしたから、これで俺達は一生離れないね」
「え? ジンクスの内容違うくないか?」
「そう?」
ニコニコと嬉しそうにされたら、みんなの前でキスされたこと、強く怒れないじゃないか。
「日向が知ってるジンクスの内容って?」
「す…好きな人と一緒に点火を見たら」
「見たら?」
「付き合えるって」
言った瞬間ぎゅーっと抱きしめられ、それを見た周りの人から悲鳴が聞こえてくる。さっきはなかった悲鳴…ってことは、キスは見られていなかったんだな。
「俺達はもう付き合ってるから、一生離れない方のジンクスが該当するね」
「/// 去年だから。見たかったの。去年一緒に見れなかったから、今年は見たいなって」
「え? ……去年? 本当に?」
本当に去年見たかったのかと、額を合わせ、何度も何度も確認してくる。
「嘘ついてどうするんだよ」
「それってさ…去年のこの時期には、俺と付き合いたいって……そう思ってくれてたってことだよね?」
「お、思うのは自由だろ!」
「そうだね」
嬉しいと言って、更に強く抱きしめてきた。抱きしめられる前に見えた光琉の顔が赤く見えたのは、きっとキャンプファイヤーのせいだけじゃない。
後夜祭は各部門の賞の発表をした後、去年盛り上がった告白タイムが始まった。壇上に上がることはないけれど、俺も光琉に夢の告白をしよう。
「光琉。俺の夢だけど…」
「教えて?」
「俺、スイーツ作りがしたい。俺の作ったスイーツで、誰かを笑顔にしたい」
まだまだ実力不足なのは百も承知。でも、光琉は笑わずに聞いてくれるって分かってるから。
「素敵な夢だね」
ほらな。
「ありがとな。でも……光琉には反対されるかもって、ちょっと思ってた」
「うーん。本音を言うと、嫌だよ? 日向が作ったものは全部俺が食べたいし。この2日間もすっごい我慢した」
「我慢って、ケーキにクリーム添えただけだぞ?」
そりゃ俺だって楽しかったし、夢に気付いたきっかけではあるけど…
「スポンジケーキも作ったでしょ」
「みんなで作ったから、俺が作ったやつがどれかなんて分からないじゃん」
「カスタードは全部日向の手作りでしょ」
確かに…
「光琉も手伝ってくれたじゃん」
「それでも。それでも嫉妬してしまうくらい好きなんだ」
俺も…光琉が誰かを思って作るのは、俺だけが良い。
なら…
「なんで反対しないんだ?」
「日向が楽しそうにしてたから。誰にも日向を見せたくないし、ずっと閉じ込めていたいけど…日向の自由を奪いたくはないんだ」
閉じ込められるのも悪くないって思うのは、俺がオメガだからだろうか? 番のアルファの気持ちには答えたいと、そう思ってしまうものなのかもしれない。
「日向には、日向がやりたいって思ってることを自由にやってほしい」
光琉…
「俺の番は寛大ですねぇ」
「でしょ? もっと好きになった?」
「なったなった」
例え閉じ込められても好きだけどな。
「俺さ、製菓専門学校に進もと思う」
「うん」
「光琉やみんなと一緒に大学に通ってみたかったけど、製菓コースなんてないしな」
キャンパスライフってのを経験したかった。それに親も、このまま付属大学に進んで欲しいって思っているだろうし。
「製菓コースがあれば同じ大学に進んでくれる?」
「あればな」
「俺に考えがある。早急に手配するから」
「へ?」
手配? 一体何をするつもりなんだ?
「日向は専門学校を探してて。どんな学校に進みたいのか、参考にするから」
「? よく分からないけど、分かった」
参考? 光琉も製菓の道に進む…わけないし。
?? 謎だ。
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「お、おう」
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