【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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86.魔法学校の生徒

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「どう? 似合うか?」
「似合う! 可愛い!」
「いや…」

 可愛くはないだろう。

 真っ黒な布にそれっぽいアップリケを付けたポンチョ。ちなみに俺と光琉は青いアップリケにした。いやさ…赤と緑が人気すぎてな。

 そのポンチョを羽織り、菜箸と紙粘土で作った杖を持ち…今の俺、魔法使いっぽい!

 修学旅行先では高くて手を出せなかったそれら。これも節約になるしクラス全員分作れるからと、自作しようと言った光琉の案が通ったおかげだな。

 それにしても…校内を回る際についでに宣伝もしようと、そのためにはそれっぽい衣装が全員必要だからって…光琉が集客を気にするなんて意外だった。

 俺としては、2日間見た目だけでも魔法使いになって、校内を回るのが楽しみだから、理由なんてなんでもいいんだけどな。

 あっ、ローブじゃなくポンチョになったのは……ローブを作る自信がなかったからじゃないぞ? 光琉がポンチョにしようって言ったから、だから。

 ………俺は光琉に合わせてあげただけ。多分。うん。……まぁ杖を持ってるだけで、それらしくなるしな。


「魔法かーけよっと」

 映画によく出てくる有名な呪文を唱え杖を振り…さすが一樹、よく分かってる。ちゃんと反応してくれるのが楽しい。

「ピヨちゃん、俺にもかけて」
「おっけー」

 思いつく呪文を一樹、宇都宮とかけあい、授業を受けている風の写真まで撮り……

「どうしよう。日向が可愛すぎるんだけど」

 なんて光琉が悶えていたことにも気付かないくらい、開始早々楽しんだ。

「よし! 写真撮ろうぜ!」
「もう撮ってるよ」

 おぉ…光琉、さっきからずっと撮ってたのかよ。

「そうじゃなくてさ、みんなで撮りたい」

 最初は普通に、次は映画のポスターのような写真も撮った。


「そろそろ回らない?」

 あまりにもテンションが高く、蓮に声をかけられるまで、我に返れなかった俺達3人。

「待たせてごめんな」

 修学旅行に引き続き申し訳ないことをしちゃった。気をつけなきゃな。

「いいけどさ。せっかくだからそれっぽい場所で写真撮ったほうが楽しいんじゃない?」
「それめっちゃいい! 行こう」

 数秒でさっきの決意が揺らぎ、結局またテンションが上ってしまった俺達。

「俺、余計なこと言ったかも」
「諦めましょう」

 蓮も映画を見たら良いのに。前に原作本を貸すって言ったら断られたんだよなぁ。貸すの、DVDにしようかな?

 なんて考えていたら……

「可愛い可愛い可愛い。俺の番、可愛いしかない」

 なんか1人壊れている人がいるんだけど。



 宣伝と言っても人が多いところで『魔法カフェに来てね』って言うだけ。立ち寄った模擬店や、すれ違った友達に声をかけるかどうかは本人の自由という、かなり緩いルールで宣伝している。

 光琉曰く、黒いローブやポンチョを羽織った人が固まってるだけで目を引くから、十分宣伝になっているらしい。まぁ…気になった人が確認したら、どう考えても魔法カフェのクラスだって分かるもんな。

「でもさ…若干詐欺だよな」
「なにが?」
「メニュー。生クリームでしか魔法らしさないから」

 赤はいちご、青はブルーベリー、黄色はかぼちゃで緑は抹茶。色を付けただけの生クリームをスポンジケーキに添えるだけのメニュー。映画を見ていなければ、魔法らしさ皆無だからな。

「教室の装飾と店員で、雰囲気だけでも出せてたらいいけど」
「大丈夫でしょ。入ってしまえばこっちのものだから」
「………光琉、集客数にこだわり過ぎじゃないか?」
「えっ……?」
「うん?」

 え? 俺? 日向のために…と呟いてるけど、俺、光琉が集客を気にするようなこと言ったっけ?

 

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