【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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85.文化祭準備② 2年生 side光琉

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 あ~、日向は膝の上に座っているのが恥ずかしいのか、顔を隠すように俺の肩に埋めてくる。ほんとさ、そういう可愛いことは2人きりの時にしてくれよな。

「日向、キスしたい」
「さっきしてたじゃん」
「額や頬に、でしょ」
「仕方ないな………ほら。ん」

 ……許可が降りたのかと思ったら、手の甲を俺の口元に持ってこられた。ここにしろってことか…日向も考えたな。

「っ! キスじゃなかったのかよ」
「キスもしたよ」

 手の甲で我慢したんだ。ちょっと舐めるくらい許して欲しい。

「指まで舐めんな」
「あっ、匂いが強くなった」
「光琉のせいだろ」

 あ…残念。手を退けられてしまった。

 でもこれ以上匂いが強くなって、万が一にも誰かに嗅がれるなんてことがあったら……我慢するか。


 正直、文化祭自体に興味はない。

 日向が楽しみにしているから俺も楽しみなだけだし、模擬店だって日向が楽しそうにしているから協力しているだけ。

 だから模擬店の案が出た時点で、接客をやってほしいと暖経由で依頼された時だって、無視したんだ。集客のためにって言われたって、どうでもいいし。

 そもそも、俺が日向に接客なんてさせるわけないと理解しているくせに、そのうえで依頼してくるって、俺と日向を離すつもりだったってことだろ? そんなのもっての外だ。

 なのにみんなの前で話をふってくるから、クラスの奴らからも期待の目で見られ…日向が気にしてしまったじゃないか。

 上手く思考を変えられ、今は1日目と2日目とどっちでデートするか、それで頭がいっぱいになったから良かったものの。

「ふっ」
「なに? 思い出し笑い?」
「いや」

 俺に接客してほしくないって…日向に嫉妬されるのは悪くないな。思い出すだけでも嬉しくなる。

「絶対いやらしいこと考えてるだろ」
「考えてないって」
「ふーん」

 ん? 松本、さっきから何度か日向の方を見てるけど…俺を説得すよう言ってこないよな? 絶対そんな事するなよ? 集客なんかより日向の気持ちの方が大事だぞ?

「お客さん、いっぱい来てくれると良いな」
「そうだね」

 よし。効果的な集客方法を考えよう。


「低予算で何ができるかなぁ? 光琉、思いついた?」
「低予算?」

 あぁ、コンセプトの話か。

「食材も衣装代も装飾代も、予算内に収めないといけないってさっき言ってたぞ~」

 ちゃんと話聞けよなぁと、ポカッと肩を叩いてくる日向が可愛い。

 コンセプトとかどうでもいいんだが。衣装だって日向が着るわけじゃないし。

「日向は何かやりたいのがあるの?」
「ん~、ケーキだから洋菓子だけど、和風カフェ……は変か」
「全く変じゃないよ。アイデア、出してみる?」
「いいや。もっといいのが出るかもだし」

 結局決まったのは魔法カフェ。全く魔法要素のないメニューだけど、接客も魔法学校の生徒って設定にすれば、制服をアレンジするだけでいいからと。

「あはは。みんな修学旅行に後ろ髪引かれすぎだろ」
「日向、嬉しそうだよ?」
「だって俺が好きな映画モチーフなんだもん」
「可愛い」

 なにが可愛かったんだ? と日向は全く分かっていないようだから、たまに甘えたような言葉遣いになるところだよ、と心の中だけで答えておいた。

「スポンジケーキって家庭科室にあるオーブンで作るんだよな?」
「そうなんじゃない?」

 少し悩んでから、松本にある提案をした日向。

「ケーキだけどさ、炊飯器でも作るのってどうかな? オーブンだけで作るのって限度があるし、どっちも使ったら時短になるっていうか…」

 なるほど。オーブンだと日向が火傷をするかもしれない。危険だし、炊飯器、ありだな。

「よく思いついたね」
「まぁな!」

 ドヤ顔しているのも、日向の案が採用され、嬉しそうにはにかんでいるのも可愛すぎる。

「やっぱりキスしていい?」
「しつこいぞ」
「日向が可愛いのが悪い」
「………///」

 帰りの車の中でめちゃくちゃキスした。



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