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80.修学旅行
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2学期が始まって数日、今日は来月にある修学旅行についての説明があった。
行き先は京都。
修学旅行先が国内である理由はオメガの生徒がいるから。もちろんオメガだって海外に行っていいけど、それなりにリスクがあるからな。そりゃあ学校側は避けるだろう。
ベータ校に行った友達からは海外に行くって聞いたし、中学の時の修学旅行も京都だったけど、そんな事気にしない。だって今回は光琉が一緒だから。
「ふふ~ん」
「日向楽しそう」
「おう。だって基本ずっと自由行動じゃん? 大阪にも行けたらいいな」
「そうだね」
しかも5~6人で自由に班を決められる。もちろん俺達は6人で一つの班だ。
「テーマはどうしましょうか」
旅行って言っても一応校外学習に当たるため、班ごとに学習テーマを決め、提出しなければいけない。今からそのテーマをどうするか話し合う。
「案ある人」
「はいっ! 俺、案あるよ」
この間SNSで見つけたそれ。体験教室だから、楽しめるのに校外学習のテーマとしても使えるって、一石二鳥だと思ったんだ。
みんなに見えるよう、スマホ画面を真ん中に置く。
「和菓子作り体験?」
「そう。ここはネット予約できるし、要望のところに和菓子職人に話を聞きたいって書いてさ」
「いいじゃん。んじゃ、2日目に和菓子体験に行くか」
やった! 実は…片栗粉で作れるわらび餅っていうのを見つけて作ってみたんだけど、失敗したんだよな。それから和菓子を作ってみたい欲が消えなくて。
「他にはどこに行こうか…」
みんながそれぞれ行きたい場所を出し合い、俺達の修学旅行のスケージュールが決まった。
校外学習テーマを書いたプリントを提出し、それぞれ自席に戻る。
後ろから肩をトントンと叩かれ、振り向くと心配顔の光琉。
「着いた日に行く抹茶専門店よかったの?」
「うん。なんで?」
「日向、抹茶苦手だよね?」
抹茶っていうか、抹茶を使ったスイーツな。甘い抹茶があまり好きじゃないんだよ。
「蓮と稜ちゃんが抹茶好きだし、その店、ほうじ茶を使ったメニューもあるらしいんだ。俺、そっち気になるし」
「無理しない?」
「あはは。してない、してない」
さすがに心配しすぎだって。
「そういえば、光琉は行きたい場所ないのか?」
「俺は日向が行きたい場所に行きたいから」
「/// ……あっそ」
俺も光琉が行きたい場所に一緒に行きたかったんだけどな。
*
それから数日後、部屋割りのプリントが配られた。
「光琉、そう落ち込むなって」
「鶴間に変わってもらうか…」
「ダメだって」
宿泊先はホテル。俺は蓮と同じ部屋で…光琉は先生に抗議していたけど、番候補であっても同じ部屋には出来ないと、聞く耳を持ってもらえなかったんだ。
まぁ…仕方ないよな。ベータで例をあげるなら、付き合ってるので同じ部屋にしてくださいって、男女のカップルが言ってるのと同じだから。
「日向、アレ貰いに行った?」
アレって言うのは注射タイプの抑制剤。旅先で何があるか分からないからな…処方箋を出してもらったんだ。
「うん。蓮とお互いに助け合う約束もしてる」
俺も蓮も、修学旅行の前に発情期が終わるから、使うことはないだろうけど…こういう時にオメガなんだなぁって改めて実感する。
でも、それを悲観せずにいられるのは、俺自身がオメガであることを、本当の意味で受け入れることが出来たからかもしれない。
修学旅行、何事もなく、楽しいだけで終わりますように。
行き先は京都。
修学旅行先が国内である理由はオメガの生徒がいるから。もちろんオメガだって海外に行っていいけど、それなりにリスクがあるからな。そりゃあ学校側は避けるだろう。
ベータ校に行った友達からは海外に行くって聞いたし、中学の時の修学旅行も京都だったけど、そんな事気にしない。だって今回は光琉が一緒だから。
「ふふ~ん」
「日向楽しそう」
「おう。だって基本ずっと自由行動じゃん? 大阪にも行けたらいいな」
「そうだね」
しかも5~6人で自由に班を決められる。もちろん俺達は6人で一つの班だ。
「テーマはどうしましょうか」
旅行って言っても一応校外学習に当たるため、班ごとに学習テーマを決め、提出しなければいけない。今からそのテーマをどうするか話し合う。
「案ある人」
「はいっ! 俺、案あるよ」
この間SNSで見つけたそれ。体験教室だから、楽しめるのに校外学習のテーマとしても使えるって、一石二鳥だと思ったんだ。
みんなに見えるよう、スマホ画面を真ん中に置く。
「和菓子作り体験?」
「そう。ここはネット予約できるし、要望のところに和菓子職人に話を聞きたいって書いてさ」
「いいじゃん。んじゃ、2日目に和菓子体験に行くか」
やった! 実は…片栗粉で作れるわらび餅っていうのを見つけて作ってみたんだけど、失敗したんだよな。それから和菓子を作ってみたい欲が消えなくて。
「他にはどこに行こうか…」
みんながそれぞれ行きたい場所を出し合い、俺達の修学旅行のスケージュールが決まった。
校外学習テーマを書いたプリントを提出し、それぞれ自席に戻る。
後ろから肩をトントンと叩かれ、振り向くと心配顔の光琉。
「着いた日に行く抹茶専門店よかったの?」
「うん。なんで?」
「日向、抹茶苦手だよね?」
抹茶っていうか、抹茶を使ったスイーツな。甘い抹茶があまり好きじゃないんだよ。
「蓮と稜ちゃんが抹茶好きだし、その店、ほうじ茶を使ったメニューもあるらしいんだ。俺、そっち気になるし」
「無理しない?」
「あはは。してない、してない」
さすがに心配しすぎだって。
「そういえば、光琉は行きたい場所ないのか?」
「俺は日向が行きたい場所に行きたいから」
「/// ……あっそ」
俺も光琉が行きたい場所に一緒に行きたかったんだけどな。
*
それから数日後、部屋割りのプリントが配られた。
「光琉、そう落ち込むなって」
「鶴間に変わってもらうか…」
「ダメだって」
宿泊先はホテル。俺は蓮と同じ部屋で…光琉は先生に抗議していたけど、番候補であっても同じ部屋には出来ないと、聞く耳を持ってもらえなかったんだ。
まぁ…仕方ないよな。ベータで例をあげるなら、付き合ってるので同じ部屋にしてくださいって、男女のカップルが言ってるのと同じだから。
「日向、アレ貰いに行った?」
アレって言うのは注射タイプの抑制剤。旅先で何があるか分からないからな…処方箋を出してもらったんだ。
「うん。蓮とお互いに助け合う約束もしてる」
俺も蓮も、修学旅行の前に発情期が終わるから、使うことはないだろうけど…こういう時にオメガなんだなぁって改めて実感する。
でも、それを悲観せずにいられるのは、俺自身がオメガであることを、本当の意味で受け入れることが出来たからかもしれない。
修学旅行、何事もなく、楽しいだけで終わりますように。
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