【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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78.2人きりの花火大会

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「またすごい場所だな…」
「気に入った?」
「……いくらしたんだ?」

 確かにここからなら、周りを気にせず花火を見ることができる。場所取りの必要もないし。でも…だからって普通ホテルなんか予約すると思うか!?

「ちゃんと自分で稼いだよ?」
「そういう問題じゃなくて…っていうかさ、バイトってそんな稼げるのか? ここ、絶対安くないよな?」
「そこまで高くないよ」

 嘘なのか、光琉の金銭感覚では高くないって意味なのか…。

 発情期に過ごしたホテル代も光琉が出してくれた。俺のために働いてるって光琉は言うけど、俺だって光琉のために何かしたいって思ってるのに。

 してもらってばっかりだ。

「俺もバイトしたい」
「ダメ」
「……ケチ」

 心配されるのって悪い気はしないけど、親も光琉も過保護過ぎると思う。

 ソファーに並んで座り、今日伝えようと思っていた話を切り出した。

「俺、将来の夢を見つけようと思うんだ」
「夢?」
「うん」

 光琉の隣に立つのに相応しい人間になりたい。そう思っていても、何をしたらいいかなんて分からなかった。

「光琉の夢って親の会社を継ぐこと?」
「日向を幸せにするのが夢かな」
「なっ! …あっそ///」

 俺を幸せにできるなら、仕事なんて何でも良いって…そんないい笑顔で言うなよな。

 照れるじゃん。

「そ、それでさっ、光琉は頑張ってくれてるじゃん? でも俺は何も変わってなくて…大学に行って就職してって漠然としか考えてなくて。だからってわけじゃないけど、まずは夢を見つけることから始めようかなって」
「うん。良いと思う」

 オメガだって分かる前は将来の夢があった。

 でもオメガと分かってからは、やりたいことじゃなく、やれることを探すようになってしまったんだ。

 その考えを変えてみても良いんじゃないかなって、そう思えるようになったのは、きっと俺に寄り添ってくれている光琉のおかげ。

「光琉はいいのか? 俺が働いても」

 番持ちオメガの中にも働いている人はいる。でもその殆どが在宅でできる仕事。……ネット情報だけど。

「本音は日向1人で外に出すなんて嫌だし、家にずっといて欲しいよ? でも、日向の自由を奪いたいわけじゃないから」
「ふふっ。理解のある番で嬉しいよ」
「日向っ!!」
「わぁ!」

 飛びついてきた光琉を支えきれず、倒れてしまった。ソファーじゃなければ、今頃頭を強打していただろう。

 力いっぱい抱きしめてくれるのは嬉しいけど…

「光琉、ちょっと苦しい」
「ごめん。でも嬉しくて」

 なにが?

「俺が働くことが嬉しいのか?」
「それはどっちでも良いんだけど」

 どっちでもいいんかい!

「番って。日向が、俺の事、番って言った!」
「………あっ………」

 そりゃあいつか、そうなればいいなって思ってたけど…声に出すつもりなんてなかったのに。

「忘れ……」
「るわけないよね?」
「だよな」

 うん。でもこんなにも喜んでくれるなら、無意識とはいえ言って良かったかも。

「でもそのさ? 次の…発情期で、っていうのは早い、と言うか…」
「分かってるよ。俺も日向の隣に立つのに、もっと相応しくなりたいんだ。今の俺じゃ日向を守りきれないから」
「そんな事ない」

 今だってずっと守ってくれてるじゃないか。

「それに番にしたら囲う自信しかないから、我慢する!」
「おい、我慢の理由それかよ」
「冗談だって。でも次の発情期では…最後までしたいかな」
「あ/// うん…」

 前回の発情期を一緒に過ごしてから、光琉のスキンシップが激しくなった。だから少しずつ慣れてきたっていうか…俺も光琉と最後までしたいなって思うようになったんだ。

 今日は…? どこまでするんだろう…

「「ぐうぅぅぅ」」
「「あっ…」」

 お腹が同時になったことを笑い、お昼を作ろうかと、光琉とキッチンに並んで立つ。

 一緒に料理するのって何気に初めて?


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