【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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76.観覧車リベンジ

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「日向美味しい?」
「おう。光琉も食べるか?」
「一口頂戴」
「お、おう…」

 口を開け、あーん待ちしている光琉に、俺が食べていたハンバーガーを口元に持っていく。

「日向も。はい、あーん」

 て、照れる…。


 夏休みに入った今日、光琉と遊園地に来ている。去年光琉の誕生日に一緒に来た、あの遊園地に。

 ここは小さい頃から家族や友達とよく来ていた。でもまさか恋人と来る日がくるとは思いもしなかったな。
 あっ、前回はお試し期間中だったし、片思いの相手と来たって感覚の方が強かったから…恋人としては今回が初めてって事で。

 お昼は食べ歩きフードを数種類購入。

「なんか恋人同士みたいだな」
「恋人でしょ」
「うん///」

 こうやって2人で分け合って食べるのとか、ほんのちょっと憧れていたから、実現できて嬉しい。言わないけど。

 ドキドキしながら昼食を終え、園内マップを見ながら次に乗るアトラクションの相談をして…

 最短ルートで行こう! と自然に繋がれる手。

 こうやって手を繋いで歩くことにも慣れてきたなと思っていたら、急に方向転換した光琉。

「なんでこっち? 遠回だけど」
「危険人物がいたから」
「? …そっか」

 誰のことだろう? まぁいいかと、少し早足になった光琉に合わせて歩いていると、後ろから声をかけられた。

「久しぶり。何も逃げることないじゃん」
「………どちら様ですか」 
「またまた~」

 声をかけてきたのは…え、誰? どこかで見たことある気も…しないでもないような…?

「それにしても今回は引くほど付けてるね、君のフェロモン。流石の俺でも顔をしかめたくなるよ」
「放っておいてください」
「前回も思ったけど、本当、余裕ないね~」

 何コイツ。

 状況的に光琉と同等、もしくは上位のアルファなんだろうけど、急に突っかかってきやがって。光琉も睨んでいるし、絶対いい奴じゃない。

 隣に連れている女性も性格悪そうだし、香水の付け過ぎで鼻がもげそう。っていうか…さっきから隣の男性の腕に捕まりながら、光琉をうっとりと見つめているのが気に食わない。

「君カッコいい~。ねぇ、これからお姉さんと回ろう?」

 やっぱり光琉のこと狙ってた!

 光琉に触れようと手を伸ばしてきたから、慌てて光琉を引っ張り、俺の後ろに…隠そうとしけど無理だった。光琉にぎゅーっと抱きしめられ、謎の2人から逆に守られている俺。

「デート中なんで。邪魔しないでください」
「せっかく引いてあげたんだから、いつまでも喧嘩腰でこないでくれる? 今後一緒に仕事する日も来るかもしれないんだから」

 デート/// の言葉に照れている場合じゃないな。引くってなんだろう?

「………現状、あなたのこと信用してないんで」
「残念。俺は結構君のことも気に入ってるのに。君の信用を取り戻すためにも……

 ねぇ、そろそろ離れてくれる?」

 そう言って腕を振り払い、隣にいた女性を遠くに追い払っている。

「いいんですか?」

 本当に。一緒に来てるって事はデートとかじゃないのか? 女性もパパに言いつけるからと言って帰っていった…謎すぎる。

「彼女は取引している会社の社長令嬢でね。親子揃って結婚を迫ってきていて厄介だったんだ。君に色目を使ってくれて助かったよ」
「そうですか」
「じゃ、俺も帰るとするよ。デート楽しんで。可愛いお尻を持った君もね」

 俺の顔を覗きながらニコッと笑って去って行った…思い出した! あいつ、文化祭で俺の尻を触ってきたやつだ!

「…………」

 嵐のような2人が去った後も、光琉はずっと無言で俺を抱きしめ続けている。

 どうしたんだろう?

「ちょ、光琉!?」

 無言のまま頭、額、鼻、頬…とキスしてくるんだけど! 徐々に下に降りてくるそのキスを止めるため、慌てて光琉の唇を両手で覆った。

「ここ、人、多いから…」

 近くでショーが始まるのを待っている人が多くいる、ここでキスとか恥ずかしすぎる。

「予定変更。日向、今すぐ観覧車に乗ろう」
「え? 花火が上がる時間に乗るんじゃなかったのか?」
「2回乗ればいいでしょ」
「うん///」

 キス…されるのかな? とドキドキした気持ちのまま、観覧車の列に並んだ。



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