【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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69.『良い人です。信じなさい』

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 一樹と話して大分頭がスッキリした。

 けど……光琉と話し合わないとって分かっているのに、いざ話すとなると中々言い出せないんだよな。

「「…………」」

 車内は沈黙のまま、学校の門を出た。

 今日こそ話さなければ…

「「あのさ」」

 あっ…

「「先に…」」

 まただ。

「ふっ」「ふはっ」

 これって以心伝心ってやつ?

「「被った」」

 いやいや、被り過ぎな。

「日向先に話す?」
「ん。そうさせてもらう」

 光琉が何を話そうとしているか分からないけど、番の件な気がするから。光琉の話を聞いてからだと、また悩み込んでしまいそうだから。先に俺の気持ちを聞いてもらおう。

「この間、蓮と一樹とパンケーキ行ったじゃん」
「うん。楽しめた?」
「楽しかった。2人と話して決めたことがあって。俺さ…今度からオメガ用の更衣室使うよ」

 そう言うと物凄く驚かれた。

「いいの?」
「蓮もいるし。光琉もその方が安心?」
「それはもちろん。でも無理してない?」
「してないよ」

 本当、優しいよな。

「もう学校にいるアルファにはオメガだってバレてるんだろ? それにベータでも松本さんみたいに気が付いている人もいるし、隠すのはやめようかなって」
「松本が気付いてるって知ってたんだ」
「なんとなくね」

 去年の文化祭の日、お詫びだって渡されたあの絵。よくよく思い返してみると、俺がオメガなのか、教室で聞こうとしたこについての詫びなのかなって。

 その時は全く気付かなくって、松本さんに嫉妬しちゃったんだけどな。

「ふふっ。光琉と松本さん、仲良いなって思ったのが勘違いで良かったな……って」

 な、何だよ。そんな期待したような目で見ないでくれ。

「………い、いまのなし!」
「嬉しい!」

 ぎゅー。

「わ、分かったから離せって」

 しばらくされるがままでいると、もう俺の家の近所まで帰ってきてしまった。やっぱり車だと早いな。

「家、寄ってくか?」
「誰か家にいる?」

 父さんは会社だし、姉ちゃんは…分からん。あっ! 今日は鍵を忘れずに持っていけって言われたから、母さんもいないや。

「誰もいないと思う」
「ならあそこにある公園で話そう」
「なんで?」
「日向…もしかして誘ってる?」

 っ!!

「さそっ、てない」
「残念」

 ニヤニヤすんなよな。バカ。


 光琉はリンゴジュース、俺はミルクティーを持って公園内のベンチに座る。

「俺さ、オメガっぽくないじゃん?」
「そんなことないよ?」
「あるんだって。まぁそれでずっとベータ偽装してたんだけどさ。一樹に下手くそって言われたわ」

 あいつ…中学の時は1ミリも疑ってなかったくせにな。

「俺…運命っていうか、本能だけで動きたくないって思ってるのに、光琉が何もしてこないことにもショック受けてさ」
「それは!」
「待って。先に聞いてほしい」

 ごめんと言って聞く体制に戻ってくれた。

「それで、ベータにしか見えない俺なんかが運命の相手で…残念に思ったのかなーとか思っちゃって。申し訳ないなって」
「俺はっ」
「ストップ。それでな、悩みすぎて運命の番ってなんだよって思うようになって。でも一樹にさ、俺達にとって運命って、好きになる切っ掛けの1つでしかないって言われたんだ」
「きっかけ?」

 一樹との会話を掻い摘んで伝えると、日比野に感謝しないといけないと呟いていた。

「それが妙に納得したっていうかさ。俺、運命とか関係なく……光琉のこと、好きだよ」
「っ!!!」

「………光琉?」

 完全にフリーズしてる。

「えっと…おーい」

 顔の前で手を振ってみるも固まったまま。

「光琉くーん」

 頬を突いてみたら、漸く起動したみたい。

「もっかい」
「ん?」
「もう1回言って」
「光琉くーん」

 そうじゃないもっと前! と懇願するような顔して言ってくる。

「妙に納得した?」
「日向…」
「ごめんって。運命とか関係なく、光琉のことが好き」
「日向!!」

 ぎゅー。っと抱きしめ、お互いにちょっとだけ涙目になりながら見つめ合う。

「光琉は? 光琉は運命だから?」
「違う! 俺も運命とか関係なく、日向が好き」
「はは。ありがとな。それと…返事、遅くなってごめんな」

 キスさせてくれたら許すって言われたけど、それはまた今度なって返したら、落ち込んでしまった。

 でも俺、今日はもういっぱいいっぱいだし、これ以上はキャパオーバーで倒れそうだから、許してくれよな!




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