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68.3年通った場所で
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蓮は反対方向のため駅で分かれ、久しぶりに一樹と2人で電車に乗り、地元の駅に戻ってきた。
今も変わらずある駅前コンビニ。
「そう言えば、中3の時にはここで光琉達に会ってたんだよな」
「懐かしいな。あの時さ、宇都宮が声かけたのって結局なんだったんだろうな」
「それ聞き忘れてたな」
最近車移動が多く、久しぶりに電車に乗ったなぁと思いながら、通っていた塾の前を通り過ぎた。
「もしかしたら光琉達も同じ塾に通ってたかも」
「そうなん?」
「塾の日さ、俺が毎回バニラアイス食べてたのって覚えてる?」
「覚えてる覚えてる! あの頃からだよな。日向がいちごからバニラに好物が変わったのって」
あの時は好みが変わった理由を、全然分かってなかったんだよな。
「あれさ、光琉のフェロモンがバニラだからなんだ。正確にはバニラシナモン」
「急にぶっこんでくるじゃん。そういうのって言っていいの?」
「多分? でも内緒な。ちなみに俺はりんごらしい」
「あー、それで香坂ってりんご好きなわけね」
腕を組み、なるほどと頷いている。
この流れで相談しようかとも思ったけど、話を変えしばらくバスケの話をしていたら、中学時代3年間通っていたコンビニに着いてしまった。
ここは俺の家と一樹の家と、分かれ道になる場所。
一樹はきっと俺が相談したいことに気付いてくれてるんだろう、久々に寄ろうぜとコンビニに入っていった。
「俺さ、決められた運命に従うのが怖いんだ」
「うん」
「運命だから……光琉の匂いが好きなのかなって」
「いや、それは違うと思う」
コンビニの自転車置き場に、謎な方向を向いて置かれているベンチに座り、買ってきたお茶を開けながら言ってくる。
「なんで?」
「日向昔から甘い物好きじゃん。香坂に会う前から」
「光琉のフェロモンがバニラだから、好きになる体で産まれてきたとか…」
「うーん…分かんないけどさ、もし産まれた時から決められてたんだとしたら、日向は最初からバニラが好きだったと思う。いちごじゃなくて」
なるほど。確かにそうか。バニラ好きになったのは光琉のフェロモンに影響されてるだろうけど…
「それにベータだって、好きな子の好きな物に興味持って、それを好きになることってあるし、日向は難しく考えすぎ」
何で気が付かなかったんだろう。姉ちゃんだって、一樹だって、好きな人の好みに影響されてるのを近くで見てたのに。
「運命の番でも匂いが無理って場合もあるかな」
「そりゃあ、あるだろ。めちゃくちゃ可愛いくてタイプなのに、実は腋臭で無理とかあるかもじゃん」
「あははっ! 腋臭って」
その例えはおかしいだろって笑い合い、何となく調べてみた。
「「まじか」」
腋臭ってフェロモンの一種だったんだ。
「俺天才じゃね?」
「はいはい。一樹くんてんさーい」
「あっ、バカにしてるだろ」
ふはっ。なんかこう言うの久々で楽しい。
「あーあ、俺って考えすぎてたんだな」
「そうそう。もっと気楽に考えろって。俺の運命の番めっちゃイケメンじゃん! ラッキーって」
「あはは。本当光琉ってカッコいいいよな。でもだから俺、怖気づいちゃってさ」
運命の番ってなんなんだろうな…
「人を好きになる切っ掛けの1つ、とか?」
「えっ、俺、声に出してた?」
「出してた」
きっかけ、か。
本能だけで動きたくなくて抗ったのに、俺なんかが運命の番で申し訳ないって思ってたのに、俺…そんな事関係なく、光琉の事好きになっちゃったもんな。
一樹の言う通り、きっかけのひとつなのかも知れない。
「運命だからって本能ってやつで動いてしまう人達もいるんだろうけど、日向も香坂も違ったじゃん。だから、お前らにとっては、運命ってきっかけだったんだよ」
「一樹に言われると、そんな気がしてきたわ」
「だろ? それにさぁ…もう傍からみたら両思いでしかないのに、グダグダし過ぎ」
/// 両思い…
「照れるなよ。俺も照れるじゃん」
「ごめん…光琉と、両思いかな?」
「はぁ? 好きだって告白されたんだろ?」
「それは運命だから好きって勘違いしてるのかなと…」
まじかよ…と深い溜め息と共に頭を抱えさせてしまった。
「ほら、俺って蓮みたいに可愛くないし、そもそもオメガに見えないし」
「つかさ、ベータに見えるオメガって日向以外にもたくさんいるんじゃね? ベータに見えるから気付かないだけで」
「っ!」
盲点だった!
「それに1年以上可愛い可愛い言われてるじゃん。確かに日向ってたまに可愛い時あるけど、言うほどだぞ? 香坂が可愛いって言ってても、どこが? って思う時あるし」
「なんだろ…別に一樹に可愛いとか思われても嬉しくないのに、なんかムカつく」
軽く肩にパンチをお見舞いしておいた。
「香坂って入学式の日から日向に構ってたよな? 一目惚れ…? なわけないか」
「おい。一樹失礼だぞ。もしかしたら誰かが俺に一目惚れすることだってあるかもしれないじゃん」
ぽん、と肩に手を置かれ、首を横にふる一樹。
お互いにな、と俺も一樹の肩に手を置く。
「1回香坂と腹割って話せよ」
「…だな。ありがとな、一樹」
「おう! あんま悩むなよ」
一樹と2人の時間は、アルファとかベータとかオメガとか、そういうのどうでもいいって思える、第二の性なんて関係ないんだと、気持ちを楽にしてくれるものだった。
今も変わらずある駅前コンビニ。
「そう言えば、中3の時にはここで光琉達に会ってたんだよな」
「懐かしいな。あの時さ、宇都宮が声かけたのって結局なんだったんだろうな」
「それ聞き忘れてたな」
最近車移動が多く、久しぶりに電車に乗ったなぁと思いながら、通っていた塾の前を通り過ぎた。
「もしかしたら光琉達も同じ塾に通ってたかも」
「そうなん?」
「塾の日さ、俺が毎回バニラアイス食べてたのって覚えてる?」
「覚えてる覚えてる! あの頃からだよな。日向がいちごからバニラに好物が変わったのって」
あの時は好みが変わった理由を、全然分かってなかったんだよな。
「あれさ、光琉のフェロモンがバニラだからなんだ。正確にはバニラシナモン」
「急にぶっこんでくるじゃん。そういうのって言っていいの?」
「多分? でも内緒な。ちなみに俺はりんごらしい」
「あー、それで香坂ってりんご好きなわけね」
腕を組み、なるほどと頷いている。
この流れで相談しようかとも思ったけど、話を変えしばらくバスケの話をしていたら、中学時代3年間通っていたコンビニに着いてしまった。
ここは俺の家と一樹の家と、分かれ道になる場所。
一樹はきっと俺が相談したいことに気付いてくれてるんだろう、久々に寄ろうぜとコンビニに入っていった。
「俺さ、決められた運命に従うのが怖いんだ」
「うん」
「運命だから……光琉の匂いが好きなのかなって」
「いや、それは違うと思う」
コンビニの自転車置き場に、謎な方向を向いて置かれているベンチに座り、買ってきたお茶を開けながら言ってくる。
「なんで?」
「日向昔から甘い物好きじゃん。香坂に会う前から」
「光琉のフェロモンがバニラだから、好きになる体で産まれてきたとか…」
「うーん…分かんないけどさ、もし産まれた時から決められてたんだとしたら、日向は最初からバニラが好きだったと思う。いちごじゃなくて」
なるほど。確かにそうか。バニラ好きになったのは光琉のフェロモンに影響されてるだろうけど…
「それにベータだって、好きな子の好きな物に興味持って、それを好きになることってあるし、日向は難しく考えすぎ」
何で気が付かなかったんだろう。姉ちゃんだって、一樹だって、好きな人の好みに影響されてるのを近くで見てたのに。
「運命の番でも匂いが無理って場合もあるかな」
「そりゃあ、あるだろ。めちゃくちゃ可愛いくてタイプなのに、実は腋臭で無理とかあるかもじゃん」
「あははっ! 腋臭って」
その例えはおかしいだろって笑い合い、何となく調べてみた。
「「まじか」」
腋臭ってフェロモンの一種だったんだ。
「俺天才じゃね?」
「はいはい。一樹くんてんさーい」
「あっ、バカにしてるだろ」
ふはっ。なんかこう言うの久々で楽しい。
「あーあ、俺って考えすぎてたんだな」
「そうそう。もっと気楽に考えろって。俺の運命の番めっちゃイケメンじゃん! ラッキーって」
「あはは。本当光琉ってカッコいいいよな。でもだから俺、怖気づいちゃってさ」
運命の番ってなんなんだろうな…
「人を好きになる切っ掛けの1つ、とか?」
「えっ、俺、声に出してた?」
「出してた」
きっかけ、か。
本能だけで動きたくなくて抗ったのに、俺なんかが運命の番で申し訳ないって思ってたのに、俺…そんな事関係なく、光琉の事好きになっちゃったもんな。
一樹の言う通り、きっかけのひとつなのかも知れない。
「運命だからって本能ってやつで動いてしまう人達もいるんだろうけど、日向も香坂も違ったじゃん。だから、お前らにとっては、運命ってきっかけだったんだよ」
「一樹に言われると、そんな気がしてきたわ」
「だろ? それにさぁ…もう傍からみたら両思いでしかないのに、グダグダし過ぎ」
/// 両思い…
「照れるなよ。俺も照れるじゃん」
「ごめん…光琉と、両思いかな?」
「はぁ? 好きだって告白されたんだろ?」
「それは運命だから好きって勘違いしてるのかなと…」
まじかよ…と深い溜め息と共に頭を抱えさせてしまった。
「ほら、俺って蓮みたいに可愛くないし、そもそもオメガに見えないし」
「つかさ、ベータに見えるオメガって日向以外にもたくさんいるんじゃね? ベータに見えるから気付かないだけで」
「っ!」
盲点だった!
「それに1年以上可愛い可愛い言われてるじゃん。確かに日向ってたまに可愛い時あるけど、言うほどだぞ? 香坂が可愛いって言ってても、どこが? って思う時あるし」
「なんだろ…別に一樹に可愛いとか思われても嬉しくないのに、なんかムカつく」
軽く肩にパンチをお見舞いしておいた。
「香坂って入学式の日から日向に構ってたよな? 一目惚れ…? なわけないか」
「おい。一樹失礼だぞ。もしかしたら誰かが俺に一目惚れすることだってあるかもしれないじゃん」
ぽん、と肩に手を置かれ、首を横にふる一樹。
お互いにな、と俺も一樹の肩に手を置く。
「1回香坂と腹割って話せよ」
「…だな。ありがとな、一樹」
「おう! あんま悩むなよ」
一樹と2人の時間は、アルファとかベータとかオメガとか、そういうのどうでもいいって思える、第二の性なんて関係ないんだと、気持ちを楽にしてくれるものだった。
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