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60.バレンタイン② side光琉
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「ハッピーバレンタイン! はい、日向これ」
「……俺もある。光琉が作りそうだなって思ったからで、その…ホワイトデーだと忘れるかもしれないから作っただけだから」
段々と小さな声になりながら、顔を真赤にして渡してくるとか…これは抱きしめるでしょ。
ふっ…日向がチョコレート関連のレシピを検索してたのも知ってるし、ベータ女子が盛り上がっているチョコの話に耳を傾けていたことにだって気付いてたんだ。
元々用意するつもりだったくせに。ツンデレな日向も可愛い。
すぅー。
「嗅ぐなよ」
「いい匂い」
「…あっそ」
俺にバレてないと思っているんだろう、日向はスンスンとこっそり鼻を鳴らしている。あー、可愛すぎる。
「ねぇ、日向。放課後カフェデートしよう」
「…普通にカフェに行こうでいいじゃん」
「デート、ね」
「/// なんでもいいけど」
いつもの学内にあるカフェで、いつものメニュー。日向は俺からのチョコを見て、手に取るように喜んでくれている。
「いっつも思うけど本当凄いよな。これ本当に昨日全部作ったのか?」
「その方が長持ちするでしょ」
「うん。でも大変だっただろ?」
「全く」
日向の喜ぶ顔を想像していたら楽しくて仕方なかったよ。
「ありがとな。俺好きなんだよ、光琉のスイーツ」
ダメか。雰囲気の飲まれて、今日なら好きって言ってくれるんじゃないかって思ったんだけどな。
日向が作ってくれたのは…
「パウンドケーキだ」
「おう。りんごとチョコのな」
「食べてもいい?」
「あ、味の保証はしないけど」
これ…え? 無自覚だよな?
シナモンはりんごを煮る際に一緒に煮た? バニラエッセンスは生地と混ぜ合わせる際だろう。
もちろんチョコが入っている分違いはある。でも香りも味も、バニラシナモンでりんごを包みこんでいるような、俺が日向を抱きしめているような、そんなパウンドケーキ。
「光琉…? ーーおかしいな。もう1つは美味しく出来たのにーー」
いつもなら…味見用を兼ね上手く焼けた方を俺に渡すため、2本作るほど頑張ってくれたのかと感謝していただろう。でも正直それどころじゃない。
「バニラとシナモンを入れたのって…?」
「/// と、特に理由なんて無い」
目を逸らす日向。
「教えて」
「やだ」
首を軽く振り、下を向いてしまった。
「お願い、日向」
目を瞑り小さく深呼吸をし、それよりもと味の感想を聞いてくる。
「幸せな味がした」
「///」
耳まで真っ赤にして…これはもしかしたら、もしかするかもしれない。
「あのさ日向…何で俺がりんご好きか分かる?」
「分かるわけないじゃん」
下を向いたまま即答する日向。あれ…?
「考えてみて」
「…………」
やっぱり気が付いているんだよな?
「日向」
「…………」
「何となく予想してるんじゃないのか?」
「…………」
「日向の「ダメッ! ……まだ言わないで」」
りんごが好きだと言うたびに、頭では日向が好きだと思っていた。
日向がいちご好きからバニラ好きに変わった理由は俺。そのことに日向は気付いているし、俺の好みも同じ理由ではないかと、その可能性を考えてくれるようになったのかもしれない。
「日向…抱きしめていいか?」
「なっ、んで聞くんだよ。俺、聞かなくていいって言った」
日向を強く強く抱きしめ、泣きそうになるのを必死に堪えた。
「……俺もある。光琉が作りそうだなって思ったからで、その…ホワイトデーだと忘れるかもしれないから作っただけだから」
段々と小さな声になりながら、顔を真赤にして渡してくるとか…これは抱きしめるでしょ。
ふっ…日向がチョコレート関連のレシピを検索してたのも知ってるし、ベータ女子が盛り上がっているチョコの話に耳を傾けていたことにだって気付いてたんだ。
元々用意するつもりだったくせに。ツンデレな日向も可愛い。
すぅー。
「嗅ぐなよ」
「いい匂い」
「…あっそ」
俺にバレてないと思っているんだろう、日向はスンスンとこっそり鼻を鳴らしている。あー、可愛すぎる。
「ねぇ、日向。放課後カフェデートしよう」
「…普通にカフェに行こうでいいじゃん」
「デート、ね」
「/// なんでもいいけど」
いつもの学内にあるカフェで、いつものメニュー。日向は俺からのチョコを見て、手に取るように喜んでくれている。
「いっつも思うけど本当凄いよな。これ本当に昨日全部作ったのか?」
「その方が長持ちするでしょ」
「うん。でも大変だっただろ?」
「全く」
日向の喜ぶ顔を想像していたら楽しくて仕方なかったよ。
「ありがとな。俺好きなんだよ、光琉のスイーツ」
ダメか。雰囲気の飲まれて、今日なら好きって言ってくれるんじゃないかって思ったんだけどな。
日向が作ってくれたのは…
「パウンドケーキだ」
「おう。りんごとチョコのな」
「食べてもいい?」
「あ、味の保証はしないけど」
これ…え? 無自覚だよな?
シナモンはりんごを煮る際に一緒に煮た? バニラエッセンスは生地と混ぜ合わせる際だろう。
もちろんチョコが入っている分違いはある。でも香りも味も、バニラシナモンでりんごを包みこんでいるような、俺が日向を抱きしめているような、そんなパウンドケーキ。
「光琉…? ーーおかしいな。もう1つは美味しく出来たのにーー」
いつもなら…味見用を兼ね上手く焼けた方を俺に渡すため、2本作るほど頑張ってくれたのかと感謝していただろう。でも正直それどころじゃない。
「バニラとシナモンを入れたのって…?」
「/// と、特に理由なんて無い」
目を逸らす日向。
「教えて」
「やだ」
首を軽く振り、下を向いてしまった。
「お願い、日向」
目を瞑り小さく深呼吸をし、それよりもと味の感想を聞いてくる。
「幸せな味がした」
「///」
耳まで真っ赤にして…これはもしかしたら、もしかするかもしれない。
「あのさ日向…何で俺がりんご好きか分かる?」
「分かるわけないじゃん」
下を向いたまま即答する日向。あれ…?
「考えてみて」
「…………」
やっぱり気が付いているんだよな?
「日向」
「…………」
「何となく予想してるんじゃないのか?」
「…………」
「日向の「ダメッ! ……まだ言わないで」」
りんごが好きだと言うたびに、頭では日向が好きだと思っていた。
日向がいちご好きからバニラ好きに変わった理由は俺。そのことに日向は気付いているし、俺の好みも同じ理由ではないかと、その可能性を考えてくれるようになったのかもしれない。
「日向…抱きしめていいか?」
「なっ、んで聞くんだよ。俺、聞かなくていいって言った」
日向を強く強く抱きしめ、泣きそうになるのを必死に堪えた。
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