【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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58.初詣 side光琉

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「ただいま~」
「お邪魔します」

 玄関先までしか知らない日向の家。本当は日向の部屋にも入りたいけど…理性を保つ自信がないからやめておこう。自室に向かおうとした日向を呼び止め、ご家族に挨拶したいからとリビングに案内してもらう。

 ガチャ。

「ただいま」
「おかえり~。って、えー! ちょっと日向!! 光琉くんが来るなら来るって先に言いなさいよ。光琉くん、明けましておめでとう。ちょっと着替えてくるわね~」
「別に姉ちゃんがどんな格好してたって光琉は気にしないって」
「私が気にするの」

 お姉さんと言い合う日向はいつもより幼く見える。前も思ったけど、この姉弟、仲良いよな。

「あら? お友達? 明けましておめでとうございます。日向の母です」
「明けましておめでとう」
「明けましておめでとうございます。日向くんとお付き合いさせていただいてます、香坂光琉と申します」

 未来の義両親。印象は良くしておかないと。

「きゃー! やっぱりそうだったのね~」
「日向の恋人…」
「母さん!? 気付いてたんだ…」

 日向のお母さんが気付いていたのは、さすが母親といったところか。

「当たり前でしょ。りんごのコンポート、あんなに練習しといて彼氏じゃなかった方が驚きよ」
「母さん!!」
「りんご…」

 放心している日向のお父さんには悪いけど、俺のために日向が何度も練習してくれたことが嬉しすぎる。ニヤけそうな顔にグッと力を入れ、ポーカーフェイスを保つ。

「さぁさぁ。外は寒かったでしょう。中に入って温まりなさい」
「ありがとうございます」
「俺の部屋に…」
「日向、せっかくそう言ってくれてるから」

 俺のためにもここにいさせてくれ。俺、自我を抑えないといけないから。

「光琉がいいならここでいいけど…こたつ入れて良い?」
「いいわよ」
「光琉、こっち」

 リビング横にある和室に案内され、手際よくこたつの線をつける日向。

「俺、こたつって初めて入るかも」
「まじ!?」
「うちにないから」

 祖父母の家には和室があるけど、こたつを出しているのは見たことがない。

「それ人生損してる」
「日向はこたつ好き?」
「好き! こたつで寝るのとか最高だぞ」
「日向となら楽しそう」
「ひ、一人でも楽しい…楽しい? まぁ、いいか」

 いいんだ。可愛い。将来、俺達の家には絶対にこたつ部屋を作ろう。

「重箱の中身、気になる」
「今出すね」

「すっご! 全部光琉の手作り?」
「もちろん」

 今日用意したのは屋台飯の詰め合わせ。日向は屋台飯を食べたかったみたいだから。

「俺が我儘言ったから無理したのか?」
「無理なんてしてないよ。ほら俺、料理が趣味だから」
「ありがとな…」

 手ずからに食べさせてくれないかなぁ…。

「まぁ! すごいわね。手作りかしら?」

 お椀を乗せたお盆を持った日向のお母さんが和室にやってきた。

「はい。良ければみなさんも…」
「ダメッ!」

 作りすぎた感は否めないなと勧めたら、日向がダメだと重箱を隠すように立った。

「日向?」
「うふふ。この子ね、光琉くんの手作りスイーツ、絶対に分けてくれないのよ」
「日向……」

 嬉しさのあまり抱きしめてしまった。

「あらあら。お雑煮用意したけど必要なかったかしら」
「いえ。いただきます」

 家族の前! といって離れようとするけどもう少しこのままでいたい。離れたくないのはもちろんだけど、今の俺の顔は日向に見せられないから。

「うっそ!! もしかして…もしかするのね!」

 気が付くとお姉さんに写真を撮られていた…嫌な予感…。

「光琉くんのお姉さんにも送っておくわね」

 やっぱり。姉貴、絶対に日向を連れてこいって言うだろうな。番になるまで会わせるわけないだろ。

「ーーっていうかまだお試し期間中じゃんーー」

 腕の中でそう呟く日向。

「ーーお付き合いしてることに変わりないでしょーー」

 それに別れる可能性なんて1ミリもないんだから。


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