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57.初詣
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――新年
「明けましておめでとう」
「おめでとう。日向、今年ももよろしくね」
「こちらこそよろしく」
年が明け、今日は光琉と2人で初詣に行く。家まで迎えに来てくれた光琉と一緒に、これから近所にある神社へと歩いて向かう予定だ。
本当は数駅離れた大きな神社に行きたかったんだけどな。何度お願いしても『ダメ』としか言われないから、流石に諦めた。
「やっぱり屋台が1つもない。あっちならたくさんあったのになぁ」
「あっちは人が多いからダメって言ったでしょ」
確かに、蓮にも番なしオメガが人混みに行くなんて危険だ! って言われたけどさ…俺はベータに見えるから心配不要じゃないか? それに…
「花火大会も同じぐらい人いたよな?」
「あの時は俺の考えが甘かっただけ」
「例えば?」
「日向は気にしなくていいよ」
………まぁね、本当は光琉と来れただけで嬉しいんだけどさ。
「これで我慢して?」
そう言って取り出したのは重箱。
「お節?」
「ちょっと違うかな。楽しみにしてて」
「? うん」
鳥居をくぐり、拝殿*¹まで光琉と並んで歩く。
「5円?」
「でいいんじゃない」
数人の参拝者の後ろに並び、賽銭の準備をしながら順番が来るのを待つ。
「えぇっと…二礼二拍手一礼だったよな」
「うん」
二礼……
二拍手……
『運命の番だからじゃなく、光琉に好きになってもらえますように』
一礼。
…………願うのは自由だしな。
「日向はなんてお願いしたの?」
「っ! な、内緒。光琉は?」
「内緒。人に話すと叶わないって言うしね」
「おい~、じゃあなんで俺には聞いたんだよ~」
「日向の願いは全部俺が叶えたいから」
っ!!!
「なんだそれ…」
参拝後、おみくじを引くため授与所*²へと向かう。良いのが出ますようにと願いながらくじを引いて…光琉と同時に確認する。
「「せーの」」
「吉だ!」
「俺も」
あえてどうでもいい健康とか商売から確認して……恋愛は…『良い人です。信じなさい』
信じなさい、か…。
「吉っていいんだっけ?」
「この神社では大吉の次が吉らしいよ」
「へぇ。結構良いじゃん。結果が良いおみくじって持って帰って良いんだよな?」
「日向持って帰る?」
「そうする」
『良い人です。信じなさい』なんとなく、この言葉をこの先も見返したいから。
光琉も持って帰ることにしたようで、ポケットに仕舞っていた。
「日向の鼻、真っ赤になっちゃった」
温めてあげると言って抱きしめようとして…
「抱きしめても良い?」
「いつも勝手にするじゃん」
「うっ、そうなんだけど、今年はちゃんと確認しようかなって」
「………聞かれたら困る。勝手にされる方がいい」
だって嫌じゃないし。でもいいよとも…言えない気がするから。
「なら遠慮なく」
ぎゅーと抱きしめられ…しまった! ここうちの近所だった。
でも…光琉に抱きしめられると、いつもより強く匂いを感じることができて、安心する。
「寒いし、それ…俺の家で一緒に食べるか?」
重箱の中身気になるし。外寒いし。1人じゃ食べ切れなさそうだし。
別に深い意味とか無い…はず。
「えっ!! いいの!?」
「うわぁ! 耳の近くで大きい声出すなよ。びっくりするじゃん」
「ごめん。だって嬉しくて」
「………あっそ」
光琉が引いたおみくじの恋愛が『自我を抑えれば大吉』だったと俺が知るのはもっと後のこと。
ーーーーーー
*¹拝殿:参拝者が拝礼したりするための建物
*²授与所:お守りや神札をいただく場所
「明けましておめでとう」
「おめでとう。日向、今年ももよろしくね」
「こちらこそよろしく」
年が明け、今日は光琉と2人で初詣に行く。家まで迎えに来てくれた光琉と一緒に、これから近所にある神社へと歩いて向かう予定だ。
本当は数駅離れた大きな神社に行きたかったんだけどな。何度お願いしても『ダメ』としか言われないから、流石に諦めた。
「やっぱり屋台が1つもない。あっちならたくさんあったのになぁ」
「あっちは人が多いからダメって言ったでしょ」
確かに、蓮にも番なしオメガが人混みに行くなんて危険だ! って言われたけどさ…俺はベータに見えるから心配不要じゃないか? それに…
「花火大会も同じぐらい人いたよな?」
「あの時は俺の考えが甘かっただけ」
「例えば?」
「日向は気にしなくていいよ」
………まぁね、本当は光琉と来れただけで嬉しいんだけどさ。
「これで我慢して?」
そう言って取り出したのは重箱。
「お節?」
「ちょっと違うかな。楽しみにしてて」
「? うん」
鳥居をくぐり、拝殿*¹まで光琉と並んで歩く。
「5円?」
「でいいんじゃない」
数人の参拝者の後ろに並び、賽銭の準備をしながら順番が来るのを待つ。
「えぇっと…二礼二拍手一礼だったよな」
「うん」
二礼……
二拍手……
『運命の番だからじゃなく、光琉に好きになってもらえますように』
一礼。
…………願うのは自由だしな。
「日向はなんてお願いしたの?」
「っ! な、内緒。光琉は?」
「内緒。人に話すと叶わないって言うしね」
「おい~、じゃあなんで俺には聞いたんだよ~」
「日向の願いは全部俺が叶えたいから」
っ!!!
「なんだそれ…」
参拝後、おみくじを引くため授与所*²へと向かう。良いのが出ますようにと願いながらくじを引いて…光琉と同時に確認する。
「「せーの」」
「吉だ!」
「俺も」
あえてどうでもいい健康とか商売から確認して……恋愛は…『良い人です。信じなさい』
信じなさい、か…。
「吉っていいんだっけ?」
「この神社では大吉の次が吉らしいよ」
「へぇ。結構良いじゃん。結果が良いおみくじって持って帰って良いんだよな?」
「日向持って帰る?」
「そうする」
『良い人です。信じなさい』なんとなく、この言葉をこの先も見返したいから。
光琉も持って帰ることにしたようで、ポケットに仕舞っていた。
「日向の鼻、真っ赤になっちゃった」
温めてあげると言って抱きしめようとして…
「抱きしめても良い?」
「いつも勝手にするじゃん」
「うっ、そうなんだけど、今年はちゃんと確認しようかなって」
「………聞かれたら困る。勝手にされる方がいい」
だって嫌じゃないし。でもいいよとも…言えない気がするから。
「なら遠慮なく」
ぎゅーと抱きしめられ…しまった! ここうちの近所だった。
でも…光琉に抱きしめられると、いつもより強く匂いを感じることができて、安心する。
「寒いし、それ…俺の家で一緒に食べるか?」
重箱の中身気になるし。外寒いし。1人じゃ食べ切れなさそうだし。
別に深い意味とか無い…はず。
「えっ!! いいの!?」
「うわぁ! 耳の近くで大きい声出すなよ。びっくりするじゃん」
「ごめん。だって嬉しくて」
「………あっそ」
光琉が引いたおみくじの恋愛が『自我を抑えれば大吉』だったと俺が知るのはもっと後のこと。
ーーーーーー
*¹拝殿:参拝者が拝礼したりするための建物
*²授与所:お守りや神札をいただく場所
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