【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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52.光琉の誕生日

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 光琉が彼氏(仮)になってから数日。もうすぐ光琉の誕生日だ。

 誕生日は平日のため、学校終わりにみんなでお祝い。それでその週の週末には光琉とデ、デ…デーかけることになっている。

 そんな俺は今困っている。めちゃくちゃ困っている。何に困っているかって?

 それは光琉の誕生日プレゼントについて。

「何が良いかなぁ…」

 家に入ってすぐリビングにある石油ストーブを付け、鞄すら部屋に置きに戻らず、制服のままソファーで頭を抱える。1日中スマホで検索してるけど、中々しっくりくるものがない。

 まぁ…当たり前なんだよ。だって予算が少なすぎるから。

 みんなで光琉に贈るプレゼント代に、蓮も入れて6人でするクリスマスパーティーのプレゼント代。もちろん普段から無駄遣いしないようにしているけど、バイトの許可がおりない俺はお小遣いでやりくりするしかなくて。

「どうするかなぁ…」

 悩み続けていると姉ちゃんが大学から帰ってきたようだ。

「日向? 何難しい顔してるのよ」

 いっそ姉ちゃんに相談してみるか。姉ちゃん愛読BL漫画に色々アイデア載ってそうだし。

「光琉の誕生日どうしようかと思ってさ」
「行き先に悩んでるの? それは光琉くんと相談しなさい」
「じゃなくてプレゼント」
「………日向、光琉くんの誕生日知ったのいつよ」
「いつだろ? 4月? 5月?」

 そんな呆れた顔しなくたっていいじゃんか。

 しっしとソファーの端に寄るようジェスチャーされ、腕を組んだ姉ちゃんが隣に座る。

「十分考える時間があったのに、なにしてたの」
「だって個別でくれるなんて思ってなかったし。みんなで渡すってみんなで決めたから…」
「日向の誕生日は8月、光琉くんは12月、4ヶ月もあったじゃない」
「うぅ…分かってるよ」

 もちろん何も考えていなかったわけじゃない。個別でも用意したい反面迷惑に思われても嫌だから、消えものにしようって考えてた。でもまさかプレゼント用のお菓子の殆どが、クリスマス仕様になるとは思わなかったんだよ。

「もう。本当手がかかるんだら。そうねぇ、手作りなら費用抑えられるわよ」

 手作り…重いって思われないだろうか? それに…

「俺料理したことない…」
「手作りって料理だけじゃないでしょ。ほら…編み物とか」

 なるほど。毛糸って百均でも手に入るし、費用面はクリアになるな。

「姉ちゃん教えてくれるのか?」
「何言ってるのよ。私が編み物してたことある?」
「ない」
「おばあちゃんに教えてもらえばいいじゃない」
「あっ、そっか」

 どっちのおばあちゃんも編み物が得意だから、きっとその遺伝子が俺にもあるはず。

「なら解決ね。ブレザーだけでもさっさと脱がないと、シワになってお母さんに怒られるわよ」
「は~い」

 姉ちゃんの言葉に従い、着替えるため部屋に戻ろう。

「さっむ」

 やっぱりマフラーが定番かなと思いながら、部屋着にしている中学時代の体操服にささっと着替えた。

「やっぱ体操服って優秀だな」

 このまま部屋にいるか…寒いしリビングに戻るか。石油ストーブ暖かいし。

 ……スマホだけを持ってリビングに戻る途中、気が付いてしまった。

「姉ちゃん!」
「びっくりした~。なに?」
「編み物、間に合わない」
「あ…」

 2人してスマホ片手に固まること数秒。先に動き出したのは姉ちゃん。

「肩たたき券…?」
「それ父の日じゃん」

 何でも言うこと聞くって券にするのはありか? いや、なしだな。

「ん~、誕生日だし簡単に作れるケーキとかは? 光琉くんがいつもくれるスイーツには劣るだろうけど」
「俺でも練習すれば作れるって思う?」
「ホットケーキミックスと炊飯器で作れるレシピならできるんじゃない?」

 確かに、材料を混ぜてセットするだけなら俺でもできる気がしてきた。

「光琉くんの好きな食べ物は?」
「りんご」
「なら、ホットケーキミックス、りんご、炊飯器で検索して日向でも作れそうなのに挑戦したら?」
「そうしてみる。姉ちゃんありがと」

 早速検索してみると、たくさんレシピが出てきた。

「やっぱりどれもりんごのコンポートを作らないといけないよな」

 レンジで作れるレシピもあるけど…まだ日にちもあるし鍋で作る練習しよう。

 ちょうど家にりんごがあったので早速練習を始めることにした…ほんの少し目を離した隙に……りんごが焦げた。





「できた!!」

 練習の甲斐あって満足のいく出来。

「良かったわね」
「時間ギリギリだけど。早く用意しないと光琉くんそろそろ来るんじゃない?」

 やばっ! 2つ作ったうち、見た目が良い方を光琉用にして、メッセージカードも挟んで…プレゼントはこれでよしっ。

「これでりんご地獄が終わるのか」
「もはや苦いコンポートが懐かしいけどね」

 父さんと姉ちゃんの言葉は無視。

 コートを着て靴を履き、外に出る準備も完了したタイミングで、光琉から連絡が来た。

『着いたよ』
『すぐ出る』

「いってきまーす!」



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