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51.一樹にカミングアウト②
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会うと毎回言い争う蓮と一樹。俺がホットバニラのおかわりを貰いに行っている間に、2人は下の名前で呼び合うようになったようだ。
「一樹ならいいかなって。日向の友達だし」
俺まだ友達じゃなかったみたいだわと笑う一樹に、カップに口を付けて照れ隠ししている蓮。
話す前の緊張が溶けて、のほほんとホットバニラを楽しんでいたら、一樹が咳払いをしてきた。
「で、日向。他にも言いたいことがあるんだろ? オメガだって話だけなら、つる…蓮を呼ぶ必要なかったし」
だよな。もちろん話すつもりで2人に声をかけたけど、別日にすれば良かった。思ってた以上に気を張っていたみたいで、大分疲れちゃったよ。
でも仕切り直した方が言えなくなりそうだしな。
ふぅ…。よしっ。
「実はさ………光琉とお試しで…付き合うことになった」
「は? お試し?」
!! 机にバンッと手をついて立ち上がる一樹。なに? 一樹怖いよ?
「えっ、あ、うん」
しかもなんで光琉を睨みつけてるんだ?
「とりあえず座れって。まずは話を聞こう。日向、お試しの理由は?」
「それは…自信がないから。俺、オメガに見えないし…」
一樹は理由を聞いて、拍子抜けしたように怒りを沈めた。
「気にするなって言っても気にしちゃうのが日向だよな。でもさ、香坂って日向のことめっちゃ好きじゃん。見た目じゃなくて中身を好きになったってことじゃないのか」
「違うよ」
「………根拠は?」
2人とも驚くだろうな…。
「俺と光琉、運命の番なんだ」
「「えっ!!」」
暫しの沈黙の後、一樹が言葉を繋げた。
「それって出会う確率が物凄く低いってい言われてるやつだよな? だから出会えたのって嬉しいことじゃないのか?」
「…………」
運命の番をどうやって説明しようかと悩んでいると、蓮に肩をポンッと叩かれる。
「運命の番って自分の意思とは関係ない、本能的なものんだ」
「そう習ったかも。でも正直違いがよく分からないんだよなぁ」
「そうだな…すれ違っただけの、全く知らない相手でも運命だと一瞬で繋がりたくなる。番いたくなる。心とは別にお互いを求めてしまうもの、なんだ」
それも自分の意思じゃんという一樹に、蓮が色んな例えを出して説明してくれた。
「俺も運命に出会ったわけじゃないから、知識として知ってるってだけだけど」
「運命って複雑なんだな。でもさ…蓮の説明でいくと、香坂と日向はお互いに運命に抗ったってこと…だよな?」
「まぁ…」
「なら本能じゃない部分でも好きになったってことじゃないのか?」
「俺もそう思う。香坂くんが本能的に動いていたら、会った瞬間噛まれてそうだし」
2人がそう主張するのも分かる。俺だって第三者の立場なら同じように言うと思う。でも、光琉の相手は俺だから…。
「光琉はさ、俺が運命の相手だから好きって勘違いしているだけじゃないかなって」
「………香坂は本気だと思うけど」
「オメガは1人しか選べないから、運命とは言え慎重になるのは良いことだと思う。俺は日向が受け入れられるまでお試しで付き合うのに賛成するよ」
「俺だって反対ってわけじゃないぞ。……まぁさ、何かあったらこれからはちゃんと相談してくれよな」
「2人ともありがとう」
話し終わり、カップを片付けようとしたら光琉が近寄ってきた。
「日向、話せた?」
「うん。待っててくれてありがとう」
「充電させてくれたら許してあげる」
そう言って言葉を返す前に抱きしめられてしまう。
「みんないるからっ!」
今日、一樹の前で抱きしめられるのが、一番恥ずかしいことを知ったよ。
「ーー日向の心配しすぎだと思うけどーー」
「ーー右に同じく。でも簡単に香坂に取られるのも癪だしーー」
「ーー言えてる。見守りますかーー」
「ーーだなーー」
なんて会話を一樹と蓮がしていたことを、光琉の腕の中に閉じ込められていた俺の耳に入ってくることはなかった。
「一樹ならいいかなって。日向の友達だし」
俺まだ友達じゃなかったみたいだわと笑う一樹に、カップに口を付けて照れ隠ししている蓮。
話す前の緊張が溶けて、のほほんとホットバニラを楽しんでいたら、一樹が咳払いをしてきた。
「で、日向。他にも言いたいことがあるんだろ? オメガだって話だけなら、つる…蓮を呼ぶ必要なかったし」
だよな。もちろん話すつもりで2人に声をかけたけど、別日にすれば良かった。思ってた以上に気を張っていたみたいで、大分疲れちゃったよ。
でも仕切り直した方が言えなくなりそうだしな。
ふぅ…。よしっ。
「実はさ………光琉とお試しで…付き合うことになった」
「は? お試し?」
!! 机にバンッと手をついて立ち上がる一樹。なに? 一樹怖いよ?
「えっ、あ、うん」
しかもなんで光琉を睨みつけてるんだ?
「とりあえず座れって。まずは話を聞こう。日向、お試しの理由は?」
「それは…自信がないから。俺、オメガに見えないし…」
一樹は理由を聞いて、拍子抜けしたように怒りを沈めた。
「気にするなって言っても気にしちゃうのが日向だよな。でもさ、香坂って日向のことめっちゃ好きじゃん。見た目じゃなくて中身を好きになったってことじゃないのか」
「違うよ」
「………根拠は?」
2人とも驚くだろうな…。
「俺と光琉、運命の番なんだ」
「「えっ!!」」
暫しの沈黙の後、一樹が言葉を繋げた。
「それって出会う確率が物凄く低いってい言われてるやつだよな? だから出会えたのって嬉しいことじゃないのか?」
「…………」
運命の番をどうやって説明しようかと悩んでいると、蓮に肩をポンッと叩かれる。
「運命の番って自分の意思とは関係ない、本能的なものんだ」
「そう習ったかも。でも正直違いがよく分からないんだよなぁ」
「そうだな…すれ違っただけの、全く知らない相手でも運命だと一瞬で繋がりたくなる。番いたくなる。心とは別にお互いを求めてしまうもの、なんだ」
それも自分の意思じゃんという一樹に、蓮が色んな例えを出して説明してくれた。
「俺も運命に出会ったわけじゃないから、知識として知ってるってだけだけど」
「運命って複雑なんだな。でもさ…蓮の説明でいくと、香坂と日向はお互いに運命に抗ったってこと…だよな?」
「まぁ…」
「なら本能じゃない部分でも好きになったってことじゃないのか?」
「俺もそう思う。香坂くんが本能的に動いていたら、会った瞬間噛まれてそうだし」
2人がそう主張するのも分かる。俺だって第三者の立場なら同じように言うと思う。でも、光琉の相手は俺だから…。
「光琉はさ、俺が運命の相手だから好きって勘違いしているだけじゃないかなって」
「………香坂は本気だと思うけど」
「オメガは1人しか選べないから、運命とは言え慎重になるのは良いことだと思う。俺は日向が受け入れられるまでお試しで付き合うのに賛成するよ」
「俺だって反対ってわけじゃないぞ。……まぁさ、何かあったらこれからはちゃんと相談してくれよな」
「2人ともありがとう」
話し終わり、カップを片付けようとしたら光琉が近寄ってきた。
「日向、話せた?」
「うん。待っててくれてありがとう」
「充電させてくれたら許してあげる」
そう言って言葉を返す前に抱きしめられてしまう。
「みんないるからっ!」
今日、一樹の前で抱きしめられるのが、一番恥ずかしいことを知ったよ。
「ーー日向の心配しすぎだと思うけどーー」
「ーー右に同じく。でも簡単に香坂に取られるのも癪だしーー」
「ーー言えてる。見守りますかーー」
「ーーだなーー」
なんて会話を一樹と蓮がしていたことを、光琉の腕の中に閉じ込められていた俺の耳に入ってくることはなかった。
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