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45.文化祭2日目⑤ side光琉
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昼食を食べ終わり、この後どうするか日向が鶴間と相談している。
「やっぱ体育館か会館かな」
「だな。今日は校内にいる人も多いから、動き回らない方がいいし」
「はぐれたら面倒だしな」
「…日向が思っているのとは違う意味でね」
きっと日向は、はぐれたら合流が大変だとしか思っていないだろう。違うんだよ…いつもより人が多いってことは、アルファもいつもより多く学校内にいるってことに気付いてほしい。尻を触られたのに何で危機感が芽生えないんだ。
日向ってオメガバレしないかには気を付けるのに、アルファから自分の身を守るという意識がまるでない。
「光琉と稜ちゃんも会館でいいか?」
「いいよ」
「問題ありません」
「……ミスコン始まるけど…」
「興味ない」
「そっか!」
嬉しそうに笑う日向が可愛い。悔しいが、鶴間のお陰でいつも通りの日向に戻って安心した。
机の上を片付け、会館へ向かうためカフェを出る。できることなら終了時間までこのカフェにいたい。でも日向は文化祭を目一杯楽しみたいようだから、こればかりは仕方ないと諦めよう。
「えっと次は…吹奏楽部だな」
プログラムを確認しながらワクワクしている日向。コケるよと腕を持ってみると拒否されることはなかった。
会館に着くと眼の前には先程隣りにいた3人組…こいつらずっとここにいたのかよ。さっと日向の手を取り、強制的に手を繋ぐ。ぐっと俺の方に近づけ、日向を隠すように歩くも見つかってしまった。
「さっきの子だ」
「あっ…」
日向が繋いでいる手を強く握り、俺の体で身を隠すようにしている。下を向く前にチラッと目線を送っていたのは…あいつだな。日向の尻を触ったやつは。
日向を真っ直ぐ見てこちらに近づいてくるので、完全に日向を俺の後ろに隠し、話しかけようとしているそいつに俺が対峙する。
「やっぱり君の、なの?」
情報を与えるつもりはない。無言でそいつを睨む。
「まぁいいや。番ってないみたいだから好きにしていいよね」
「………」
「ねぇ、そんなやつやめて俺のとこにおいでよ」
覗き込むように日向を見て話しかけてくる。
「お断りします」
日向が何か言う前に俺が断ると…
「んー、君には聞いてないんだけど」
とスッと目を細め、ほんの少しフェロモンをぶつけてこられた。
「日向、ちょっと話してくるから、伊織のそばから絶対に離れないで」
「わ、分かった」
本当は1秒もそばから離れたくないけど、こいつに近づけるほうが危険だ。みんなと少し離れた場所に移動し、そいつと一対一で話しをする。
「何で邪魔するのかな」
「俺の番だ。手を出すな」
「番ってないよね」
「あんたに関係ないだろ」
「フェロモンだって付けてないし?」
「………」
「近くにいて匂いが移った、その程度だよね」
「それは」
「あぁ。まだ恋人ですらないんだ。なら君に断る権利はないよね」
そう言って日向の元へ行こうとする。腕を伸ばしかけて止めようとしたら…
「俺、ひか…こいつと回るから、お兄さんたちとは回れません」
日向…。嬉しいんだけど、少しズレてるよ。
「そっか。ざーんねん。でも俺さ、君のこと気に入っちゃった」
「お、俺…ベータです」
「オメガとしての自信、俺がつけてあげるよ」
「んなっ! お、俺、ベータです」
「そっか。ならもしその気になったら連絡してね」
そいつは日向に連絡先を渡して去っていった。
「やっぱ体育館か会館かな」
「だな。今日は校内にいる人も多いから、動き回らない方がいいし」
「はぐれたら面倒だしな」
「…日向が思っているのとは違う意味でね」
きっと日向は、はぐれたら合流が大変だとしか思っていないだろう。違うんだよ…いつもより人が多いってことは、アルファもいつもより多く学校内にいるってことに気付いてほしい。尻を触られたのに何で危機感が芽生えないんだ。
日向ってオメガバレしないかには気を付けるのに、アルファから自分の身を守るという意識がまるでない。
「光琉と稜ちゃんも会館でいいか?」
「いいよ」
「問題ありません」
「……ミスコン始まるけど…」
「興味ない」
「そっか!」
嬉しそうに笑う日向が可愛い。悔しいが、鶴間のお陰でいつも通りの日向に戻って安心した。
机の上を片付け、会館へ向かうためカフェを出る。できることなら終了時間までこのカフェにいたい。でも日向は文化祭を目一杯楽しみたいようだから、こればかりは仕方ないと諦めよう。
「えっと次は…吹奏楽部だな」
プログラムを確認しながらワクワクしている日向。コケるよと腕を持ってみると拒否されることはなかった。
会館に着くと眼の前には先程隣りにいた3人組…こいつらずっとここにいたのかよ。さっと日向の手を取り、強制的に手を繋ぐ。ぐっと俺の方に近づけ、日向を隠すように歩くも見つかってしまった。
「さっきの子だ」
「あっ…」
日向が繋いでいる手を強く握り、俺の体で身を隠すようにしている。下を向く前にチラッと目線を送っていたのは…あいつだな。日向の尻を触ったやつは。
日向を真っ直ぐ見てこちらに近づいてくるので、完全に日向を俺の後ろに隠し、話しかけようとしているそいつに俺が対峙する。
「やっぱり君の、なの?」
情報を与えるつもりはない。無言でそいつを睨む。
「まぁいいや。番ってないみたいだから好きにしていいよね」
「………」
「ねぇ、そんなやつやめて俺のとこにおいでよ」
覗き込むように日向を見て話しかけてくる。
「お断りします」
日向が何か言う前に俺が断ると…
「んー、君には聞いてないんだけど」
とスッと目を細め、ほんの少しフェロモンをぶつけてこられた。
「日向、ちょっと話してくるから、伊織のそばから絶対に離れないで」
「わ、分かった」
本当は1秒もそばから離れたくないけど、こいつに近づけるほうが危険だ。みんなと少し離れた場所に移動し、そいつと一対一で話しをする。
「何で邪魔するのかな」
「俺の番だ。手を出すな」
「番ってないよね」
「あんたに関係ないだろ」
「フェロモンだって付けてないし?」
「………」
「近くにいて匂いが移った、その程度だよね」
「それは」
「あぁ。まだ恋人ですらないんだ。なら君に断る権利はないよね」
そう言って日向の元へ行こうとする。腕を伸ばしかけて止めようとしたら…
「俺、ひか…こいつと回るから、お兄さんたちとは回れません」
日向…。嬉しいんだけど、少しズレてるよ。
「そっか。ざーんねん。でも俺さ、君のこと気に入っちゃった」
「お、俺…ベータです」
「オメガとしての自信、俺がつけてあげるよ」
「んなっ! お、俺、ベータです」
「そっか。ならもしその気になったら連絡してね」
そいつは日向に連絡先を渡して去っていった。
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