【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

文字の大きさ
上 下
46 / 106

45.文化祭2日目⑤ side光琉

しおりを挟む
 昼食を食べ終わり、この後どうするか日向が鶴間と相談している。

「やっぱ体育館か会館かな」
「だな。今日は校内にいる人も多いから、動き回らない方がいいし」
「はぐれたら面倒だしな」
「…日向が思っているのとは違う意味でね」

 きっと日向は、はぐれたら合流が大変だとしか思っていないだろう。違うんだよ…いつもより人が多いってことは、アルファもいつもより多く学校内にいるってことに気付いてほしい。尻を触られたのに何で危機感が芽生えないんだ。

 日向ってオメガバレしないかには気を付けるのに、アルファから自分の身を守るという意識がまるでない。

「光琉と稜ちゃんも会館でいいか?」
「いいよ」
「問題ありません」
「……ミスコン始まるけど…」
「興味ない」
「そっか!」

 嬉しそうに笑う日向が可愛い。悔しいが、鶴間のお陰でいつも通りの日向に戻って安心した。

 机の上を片付け、会館へ向かうためカフェを出る。できることなら終了時間までこのカフェにいたい。でも日向は文化祭を目一杯楽しみたいようだから、こればかりは仕方ないと諦めよう。

「えっと次は…吹奏楽部だな」

 プログラムを確認しながらワクワクしている日向。コケるよと腕を持ってみると拒否されることはなかった。

 会館に着くと眼の前には先程隣りにいた3人組…こいつらずっとここにいたのかよ。さっと日向の手を取り、強制的に手を繋ぐ。ぐっと俺の方に近づけ、日向を隠すように歩くも見つかってしまった。

「さっきの子だ」
「あっ…」

 日向が繋いでいる手を強く握り、俺の体で身を隠すようにしている。下を向く前にチラッと目線を送っていたのは…あいつだな。日向の尻を触ったやつは。

 日向を真っ直ぐ見てこちらに近づいてくるので、完全に日向を俺の後ろに隠し、話しかけようとしているそいつに俺が対峙する。

「やっぱり君の、なの?」

 情報を与えるつもりはない。無言でそいつを睨む。

「まぁいいや。番ってないみたいだから好きにしていいよね」
「………」
「ねぇ、そんなやつやめて俺のとこにおいでよ」

 覗き込むように日向を見て話しかけてくる。

「お断りします」

 日向が何か言う前に俺が断ると…

「んー、君には聞いてないんだけど」

 とスッと目を細め、ほんの少しフェロモンをぶつけてこられた。

「日向、ちょっと話してくるから、伊織のそばから絶対に離れないで」
「わ、分かった」

 本当は1秒もそばから離れたくないけど、こいつに近づけるほうが危険だ。みんなと少し離れた場所に移動し、そいつと一対一で話しをする。

「何で邪魔するのかな」
「俺の番だ。手を出すな」
「番ってないよね」
「あんたに関係ないだろ」
「フェロモンだって付けてないし?」
「………」
「近くにいて匂いが移った、その程度だよね」
「それは」
「あぁ。まだ恋人ですらないんだ。なら君に断る権利はないよね」

 そう言って日向の元へ行こうとする。腕を伸ばしかけて止めようとしたら…

「俺、ひか…こいつと回るから、お兄さんたちとは回れません」

 日向…。嬉しいんだけど、少しズレてるよ。

「そっか。ざーんねん。でも俺さ、君のこと気に入っちゃった」
「お、俺…ベータです」
「オメガとしての自信、俺がつけてあげるよ」
「んなっ! お、俺、ベータです」
「そっか。ならもしその気になったら連絡してね」

 そいつは日向に連絡先を渡して去っていった。



しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中

毬谷
BL
完結済み・番外編更新中 ◆ 国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

幸せになりたかった話

幡谷ナツキ
BL
 このまま幸せでいたかった。  このまま幸せになりたかった。  このまま幸せにしたかった。  けれど、まあ、それと全部置いておいて。 「苦労もいつかは笑い話になるかもね」  そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を

羽兎里
BL
本編完結いたしました。覗きに来て下さった方々。本当にありがとうございました。 番外編を開始しました。 優秀なαの兄達といつも比べられていたΩの僕。 αの父様にも厄介者だと言われていたけど、それは仕方がない事だった。 そんな僕でもようやく家の役に立つ時が来た。 αであるマティアス様の下に嫁ぐことが決まったんだ。 たとえ運命の番でなくても僕をもらってくれると言う優しいマティアス様。 ところが式まであとわずかというある日、マティアス様の前に運命の番が現れてしまった。 僕はもういらないんだね。 その場からそっと僕は立ち去った。 ちょっと切ないけれど、とても優しい作品だと思っています。 他サイトにも公開中。もう一つのサイトにも女性版の始めてしまいました。(今の所シリアスですが、どうやらギャグ要素満載になりそうです。)

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

処理中です...