【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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44.文化祭2日目④ side光琉

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 今日は朝から日向の様子がおかしい。

 泣きそうになったり、空元気だったり、純粋に楽しんでいたり…。

 今は楽しそうにしているが、これは鶴間のおかげだろう。伊織や鶴間と合流し、ステンドグラスを見に来た人達の写真を撮る姿に喜んでいる。

「凄いって褒められたり、キレイって感想を直接聞けるのって嬉しいな」
「そうだね」

 笑顔で近寄ってくる日向。元気が戻って良かった。

 一通り満足した日向を鶴間から離し、気になっていたことを確認する。

「会館で隣りにいた3人と何かあった?」
「いや…」
「でも席を替わるって言ったらホッとしていたよね」
「勘違いだと思うんだけどな…その、――を触られた気がして」

 は? 声が小さすぎてはっきりと聞こえなかったが、今尻を触られたって言ったか!? 気まずそうに下を向いている日向。

「何で直ぐに言わなかったんだ?」
「それは…たまたま当たっちゃっただけかなって」
「そんなわけ…」

 あるはずないだろ。すぐ報告しなかったことを責めたい気持ちはあるが、日向が悪いわけじゃない。どいつだ? 状況的に考えると真ん中に座っていたやつだが。

「真ん中か端っこの人だとは思う」

 やっぱりそうか。両端の2人もアルファだったが、大したことなかった。あの2人が俺のフェロモンが移っている日向に手を出すはずがない。

 ムカつく。

 日向を触られたこともムカつくし、アルファの前を通ると分かっていながら、日向を守りきれなかった自分にも一番腹が立つ。

 あいつを一発殴らなければ気が済まない。でもそんな事、しちゃいけないことくらい分かっている。

 だから、日向を強く抱きしめ気を静めよう。何度も何度も日向の匂いをかぎ、漸く落ち着いてきた。

「これからは勘違いかと思ったことでも教えてほしい。必ず守るから」
「別に何もなかったって」
「ダメ。約束して」
「……分かったよ」

 言質を取り、恥ずかしがる日向を開放する。呆れつつもずっと様子を見守っていてくれた伊織と鶴間とともに昼食を調達し、昨日と同じカフェへと向かった。

 俺の隣には日向。さすがに今日はオメガ同士で横になる方が危険だと、鶴間は分かっているんだろう。

「ホットバニラにシナモン追加で」
「ふっ」
「光琉はアップルティーか?」
「もちろん」

 何があっても、どんな時でも、バニラ味を求めることに変わりないのが嬉しい。俺も日向の匂いを求めているし、お互い様だけどな。

 席につくと鶴間が日向に話しかけた。

「香坂くんがいつもより過保護になるようなことでもしたんでしょ」
「してないし」
「何度も言ってるけどさ危機感。日向、危機感ね! もうほんと、俺心配しすぎて胃に穴が開きそうだよ」

 これに関しては完全に同意見だ。

「蓮も光琉も心配性だからな」
「「………」」
「まぁでも、岩清水はこのまま変わらなくていいと思いますよ」

 と伊織。これに関しても完全に同意。たとえ日向が変わったとしても俺は心配するだろうし、日向にはこのまま日向らしくいてほしい。

 それに、俺達が動くほうが問題が大きくならずに済みそうだからな。

「日向が動くより君たちが気をつけていたほうが話し早いか」
「なっ! ちょっと蓮、それどういう意味だよ」
 


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