【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

文字の大きさ
上 下
37 / 106

36.文化祭1日目

しおりを挟む
 待ちに待った文化祭。

 門には昨日なかったアーチが設置されていて、いつもとは雰囲気がガラッと違う学校。1日目の今日は校内のみだから、できるだけ今日のうちにたくさん回っておこう。

 店番の担当が割り振られているけど始まってすぐの時間だし。本来、うちのクラスは展示なので、ご自由にどうぞって開放するだけで店番をする必要はない。けど見に来てくれた人の反応を見たいからと、順に案内役をすることにしたんだ。

 教室に入ると昨日飾ったステンドグラスが美しく輝いている。見るたびに頑張ってよかったなぁって思える出来だな。

「中学の時より全然すごいの出来ちゃった」
「そう? 日向が中学で作ったのもキレイだったよ」
「ありがと。でも複雑さが違うし、窓全部使って一つの作品にしたのが良かったのかもな」

 俺達のようにクラスのみんなも誇らしげにしている。普段は窓側の席で嬉しいのに、今日だけは廊下側が良かったかも。

 ステンドグラスに触れないよう気を付けながら席に座ると、松本さんが俺達のところにやってきた。

「岩清水くん、香坂くん、おはよう」
「おはよう松本さん」
「あのね、コレよかったら受け取ってもらえないかな?」

 写真…? 裏向きで渡された写真立てを受け取り、どんな写真だろうと表に向けてみると…

「これ、ステンドグラスのデザイン?」
「それを少しアレンジしてみたの」

 ステンドグラスのデザインを元に、ひよこが真ん中でバニラとりんごの花束を持っている。花や花びらが外側に向かって広がっているように、背景にもそれらが描かれている絵。

「ほら、岩清水くんってピヨちゃんって呼ばれてるでしょ? だから宇都宮くんが描いたひよこが岩清水くんに見えてきたっていうか…名前も日向でヒナだし」
「あーうん」

 ヒナね。俺はそういう可愛いイメージとかけ離れてるし、なんとも言えない気持ちになるんだけど。

「描きたかったのもあるけど、前に余計なことを聞こうとしたお詫びだと思って受け取ってくれないかな」
「お詫び?」

 ……? もしかして前になにか聞こうとしてやめた、アレ? 謝るようなことを聞かれるところだったのか。

 何と返すべきか悩んでいると光琉が松本さんと話しだした。

「他意はないんだよな?」
「これで香坂くんの怒りも沈めてもらえると…」

 えっ、光琉怒ってたのか?

「日向のこと可愛いって言ってるよね」
「それは弟的な要素でって言うか、恋愛的要素は一切ないので!」
「そう。なら貰っておく」
「はい! ありがとうございます」

 告ってないのに振られた感じ、なんだこれ。

「日向よかったね。このひよこ気に入ってたでしょ?」
「あぁ、うん。松本さんありがとう」

 理由なく描いたからこれあげる~って渡される方が素直に受け取れたよ。

「一緒に作ったステンドグラスの隣に飾ろうかな」

 絵に罪はないし。

「日向も飾ってくれてるの?」
「せっかく作ったしな。光琉も?」

 最初に2人で考えたデザイン案。みんなも余ったカラーセロファンで好きに作っていたし、俺達も作ったんだ。その、下書きは宇都宮に描いてもらってな。

「もちろん。あれって俺達みたいに見えていいよね」
「なっ/// 何言ってるんだよ」

 ただの花だし。


 担任が教室に入ってきて、注意事項なんかを伝えられ…放送がなっていよいよ文化祭が始まった。



しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中

毬谷
BL
完結済み・番外編更新中 ◆ 国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

幸せになりたかった話

幡谷ナツキ
BL
 このまま幸せでいたかった。  このまま幸せになりたかった。  このまま幸せにしたかった。  けれど、まあ、それと全部置いておいて。 「苦労もいつかは笑い話になるかもね」  そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を

羽兎里
BL
本編完結いたしました。覗きに来て下さった方々。本当にありがとうございました。 番外編を開始しました。 優秀なαの兄達といつも比べられていたΩの僕。 αの父様にも厄介者だと言われていたけど、それは仕方がない事だった。 そんな僕でもようやく家の役に立つ時が来た。 αであるマティアス様の下に嫁ぐことが決まったんだ。 たとえ運命の番でなくても僕をもらってくれると言う優しいマティアス様。 ところが式まであとわずかというある日、マティアス様の前に運命の番が現れてしまった。 僕はもういらないんだね。 その場からそっと僕は立ち去った。 ちょっと切ないけれど、とても優しい作品だと思っています。 他サイトにも公開中。もう一つのサイトにも女性版の始めてしまいました。(今の所シリアスですが、どうやらギャグ要素満載になりそうです。)

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

処理中です...