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34.文化祭準備②
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デザインをどうするか、まずはそれぞれアイデアを出してみてから方向性を決めることになった。
でも壮大なものを作りたい人が多い雰囲気だから、きっと窓全部を使って一つのステンドグラスを作る方になるんじゃないかなって思う。
「今から少し時間をとります。ラフスケッチでいいので、いくつか案を出してみてください」
そう言って松本さんは早々にデザイン作成に取り掛かってる。多分こういうの好きなんだろうな。
きっと彼女のデザインになるだろうと思いつつ、案を出し合うために5人で机を合わせた。
「アイデアある人ー?」
「そういう宇都宮はないのか? 芸術好きなんだろ?」
「描くとは言ってないじゃん」
確かに。宇都宮が絵を見てる姿を想像できないのはもちろん、絵を描く姿も想像できなかったわ。
「花とか自然をモチーフにしたデザインとか良くないか?」
「それならバニラの花は?」
あっ…おもむろに提案してきた一樹に、無意識にバニラを選んで答えてしまった。
「バニラの花? 日向、バニラの花とか見たことあるのか?」
「えっ…あー。見たことはないけど」
なんならバニラってバニラエッセンスしか見たことない。あっ、スイーツに入ってるバニラビーンズ? も見たことあるけど。
「俺はりんごの花がいいと思う」
「あはは。光琉りんご好きすぎ」
「好きじゃなくて大好きね。バニラとりんごの花を絡めた絵にしようよ」
絡めたって…なんでかちょっと変な気分になるだろ。
「……バニラとりんご以外にしましょう」
「俺も伊織に賛成」
「俺は何でも良いけど…りんごの花も知らないから任せていいか?」
ほらっ。光琉が変な雰囲気を出すから、稜ちゃんと宇都宮が呆れだしたじゃん。
「日向と2人で書くから良いよ」
「えっ!?」
「いいよね?」
「あっ…うん」
光琉、そんなにりんごの花がいいのか? 味だけじゃなくて絵も好きって相当だな。
「あっそ。日比野、俺達は3人で考えようぜ」
「ん? いいけど」
「そうですね。2人は放っておきましょう」
あっ…俺と光琉の机、元に戻されてしまった。仕方ない。椅子を後ろに向けて、光琉の机でアイデアを描き出すことにしよう。
「日向、バニラの花がこれで、りんごの花がこれね」
「調べてくれたんだ。ありがとな」
へぇ…バニラの花ってこんな感じなんだ。
「りんごの花、可愛いね」
「バニラの花はなんか…カッコいいな///」
ほら、なんかシュッとしてて…バニラビーンズと並べて映してる写真とかほら…な?
「でもこの2つの花を絡めるって難しくないか?」
「寄り添わせる感じで描くのもいいよね。バニラの花がりんごの花を包みこんでるような…」
「包みこむのは難しそうだけど、寄り添わせる感じはいいかもな」
ちょっと貸してと、光琉のスマホに映る画像を見ながら試しに描いてみたはいいが…花だってことは分かる程度の絵にしか見えない。
「これなんの花か分かる?」
「バニラとりんごでしょ」
「いや、絶対そう見えないよな。光琉も描いてみて」
スマホを光琉の方へ向け描かせてみると…
「……俺と大して変わらない」
アルファって何でもできるんだと思ってた。
「アルファだからって絵がうまいとは限らないからね」
「何で分かったんだ?」
「日向をよく見てるから?」
「あ、そ」
「オメガって芸術センスがいいって聞くよね」
「わあー!」
小さい声とはいえオメガとか教室で言うなよ。慌てて光琉の口元を手で隠したけど、誰かに聞かれたかもしれない。
「うわっ! 日向、急に大声出すなよ」
「なぁ、一樹。今光琉がなんて言ったか聞こえたか?」
「香坂? ごめん聞いてなかった」
良かったぁ。でも後で光琉には注意しておこう。
「うひゃっ」
「大きな声出して、何かあった?」
「な、何かあったって…光琉がっ、光琉がっ」
「俺が何?」
手のひら舐めるからだろぉ!
「なんでもないっ」
「そ? それより俺達のデザイン案、これで松本に渡すよ?」
「うぅ。勝手にしてくれ」
「こっちがバニラの花で、こっちがりんごの花だって記載しとくね」
光琉が舐めた手のひらが熱い。
この時ステンドグラスのデザインどころじゃなくなった俺は、何かを感じ取った松本さんの表情を見ることもなかったし、俺が描いた方のデザインを光琉が大事そうに鞄にしまったことも知らない。
でも壮大なものを作りたい人が多い雰囲気だから、きっと窓全部を使って一つのステンドグラスを作る方になるんじゃないかなって思う。
「今から少し時間をとります。ラフスケッチでいいので、いくつか案を出してみてください」
そう言って松本さんは早々にデザイン作成に取り掛かってる。多分こういうの好きなんだろうな。
きっと彼女のデザインになるだろうと思いつつ、案を出し合うために5人で机を合わせた。
「アイデアある人ー?」
「そういう宇都宮はないのか? 芸術好きなんだろ?」
「描くとは言ってないじゃん」
確かに。宇都宮が絵を見てる姿を想像できないのはもちろん、絵を描く姿も想像できなかったわ。
「花とか自然をモチーフにしたデザインとか良くないか?」
「それならバニラの花は?」
あっ…おもむろに提案してきた一樹に、無意識にバニラを選んで答えてしまった。
「バニラの花? 日向、バニラの花とか見たことあるのか?」
「えっ…あー。見たことはないけど」
なんならバニラってバニラエッセンスしか見たことない。あっ、スイーツに入ってるバニラビーンズ? も見たことあるけど。
「俺はりんごの花がいいと思う」
「あはは。光琉りんご好きすぎ」
「好きじゃなくて大好きね。バニラとりんごの花を絡めた絵にしようよ」
絡めたって…なんでかちょっと変な気分になるだろ。
「……バニラとりんご以外にしましょう」
「俺も伊織に賛成」
「俺は何でも良いけど…りんごの花も知らないから任せていいか?」
ほらっ。光琉が変な雰囲気を出すから、稜ちゃんと宇都宮が呆れだしたじゃん。
「日向と2人で書くから良いよ」
「えっ!?」
「いいよね?」
「あっ…うん」
光琉、そんなにりんごの花がいいのか? 味だけじゃなくて絵も好きって相当だな。
「あっそ。日比野、俺達は3人で考えようぜ」
「ん? いいけど」
「そうですね。2人は放っておきましょう」
あっ…俺と光琉の机、元に戻されてしまった。仕方ない。椅子を後ろに向けて、光琉の机でアイデアを描き出すことにしよう。
「日向、バニラの花がこれで、りんごの花がこれね」
「調べてくれたんだ。ありがとな」
へぇ…バニラの花ってこんな感じなんだ。
「りんごの花、可愛いね」
「バニラの花はなんか…カッコいいな///」
ほら、なんかシュッとしてて…バニラビーンズと並べて映してる写真とかほら…な?
「でもこの2つの花を絡めるって難しくないか?」
「寄り添わせる感じで描くのもいいよね。バニラの花がりんごの花を包みこんでるような…」
「包みこむのは難しそうだけど、寄り添わせる感じはいいかもな」
ちょっと貸してと、光琉のスマホに映る画像を見ながら試しに描いてみたはいいが…花だってことは分かる程度の絵にしか見えない。
「これなんの花か分かる?」
「バニラとりんごでしょ」
「いや、絶対そう見えないよな。光琉も描いてみて」
スマホを光琉の方へ向け描かせてみると…
「……俺と大して変わらない」
アルファって何でもできるんだと思ってた。
「アルファだからって絵がうまいとは限らないからね」
「何で分かったんだ?」
「日向をよく見てるから?」
「あ、そ」
「オメガって芸術センスがいいって聞くよね」
「わあー!」
小さい声とはいえオメガとか教室で言うなよ。慌てて光琉の口元を手で隠したけど、誰かに聞かれたかもしれない。
「うわっ! 日向、急に大声出すなよ」
「なぁ、一樹。今光琉がなんて言ったか聞こえたか?」
「香坂? ごめん聞いてなかった」
良かったぁ。でも後で光琉には注意しておこう。
「うひゃっ」
「大きな声出して、何かあった?」
「な、何かあったって…光琉がっ、光琉がっ」
「俺が何?」
手のひら舐めるからだろぉ!
「なんでもないっ」
「そ? それより俺達のデザイン案、これで松本に渡すよ?」
「うぅ。勝手にしてくれ」
「こっちがバニラの花で、こっちがりんごの花だって記載しとくね」
光琉が舐めた手のひらが熱い。
この時ステンドグラスのデザインどころじゃなくなった俺は、何かを感じ取った松本さんの表情を見ることもなかったし、俺が描いた方のデザインを光琉が大事そうに鞄にしまったことも知らない。
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