【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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32.防災訓練

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 俺を突き落としたのは、体育祭の応援団旗制作時に水をかけてきた、女子2人だった。2回目の舌打ちがなかったらバレなかったのにな。残念でした。

 ガラガラ

「あれ? 誰もいない」
「よく考えたら保健医も避難訓練に参加してるのかもね」

 保健室、鍵開いてたけどいいのか? まぁ取られて困るようなものは、鍵付き棚の中に入ってるからいいのかもな。

 保健室に入るとすぐに長椅子に座らされ、言われた通り足を出すと、光琉は何かを確認するかのように俺の足首を触ってくる。

「ちょ、ちょっとくすぐったいって」
「日向どこも痛くない? 足捻ってない?」
「うーん。そう言われると捻った気がしてきた。でも痛みはないかな」

 後から痛みが来るかもしれないから冷やそうと、光琉が用意してくれた氷嚢で足首を冷やしながら、例の2人の女子について相談することに。

「多分だけど、俺誰かに押された気がして」
「あいつらだろ」
「光琉も気付いた?」
「あぁ。やっぱりあの時退学させておけば良かった」

 えっ!? 退学!?

「あいつらが日向に危害を加えたのはこれで2回目だろ。今回は絶対に許さない」
「でも退学はちょっとやり過ぎじゃないか?」

 怒ってくれるのは嬉しいけどさ。

「一応確認しときたいんだけど、もしかして前に2人が停学になったのって…光琉関係してる?」
「…担任に報告して、処分は学校の判断に任せたよ」

 これは関係してるな。

「ふーん、そっか。今回、前回より処分が重くなる可能性って?」
「あると思う。というか重くする」
「光琉、取り繕えてないよ」
「ごめん」

 何をどう報告すれば停学処分になるんだろう? どちらにせよただ水をかけただけで停学はやり過ぎ。

 こういう事があると、差別がなくなったって言ってもやっぱりアルファが優遇されることはあるんだなって思うよ。昔と違ってアルファだからではなく権力者だからって理由みたいだけど、権力者って結局アルファだからな。

 宇都宮は言わずもがな光琉の親も社長っぽいし、そもそも稜ちゃんの親が理事だし、前回、3人が俺の知らないところで動いてくれたんだろう。

「俺はさ2人が謝ってくれたらそれでいいかなって思ってるんだ。たとえ上辺だけだったとしてもね」
「ダメ」
「でも恨みを買いたくない」

 最初は絵の具で汚れた水、次は階段で押す、ってきてるから、次はもっと酷いことされるかもしれないってちょっと怖いんだよね。

「日向は何も悪くないんだから気にしなくて大丈夫」
「違うよ。俺が悪いとか悪くないとか関係ないんだって。罰が重すぎたらさ、逆恨みしてもっと酷いことする人達かもしれないじゃん」
「それは一理あるな」

 光琉は少し悩んだ後、あの2人のことは任せてほしいというので、退学以外でと約束し任せることにした。

「光琉、ちょっと足が冷えてきた」
「温めてあげる」
「えっ!? ちょっと! 冷たいのは足!! 足だけだから!」

 なんで後ろからハグされてるんだ!? これ…これ…姉ちゃんの漫画に載ってたシチュエーション!

「この方が氷嚢当てやすいから」
「絶対嘘じゃん! ってか俺自分で当てれる」
「だーめ。そんな事したら手まで冷たくなるよ?」
「ひ、光琉の手が冷たくなる…」

 じゃあ温めてって氷嚢を持ってない方の手を俺のお腹に当ててきた。

「これって友達の距離感…?」
「日向はどう思う?」

 違うと思う!!




 結局2人は退学ではなく、他県にある姉妹校に転校することで落ち着いたらしい。付属大学には進学できないって制限付きで。

 俺としては逆恨みしてこず、今後関わらないでくれるなら、好きに生きてくれって感じ。



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