【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

文字の大きさ
上 下
32 / 106

31.席替え

しおりを挟む
 あっという間に夏休みが終わり、新学期が始まって数日。

「席替えするぞ~」

 今日は待ちに待った席替え。でも今の席ってそう悪くないからこのままでも良いような、やっぱり席替えは嬉しいような、するなら光琉と近い席になるといいな、とか考えていると後ろから肩を突かれた。

「ピヨちゃん俺と離れるの寂しい?」
「寂しくない」

 宇都宮は悪いやつじゃないけど、少し離れてるくらいがちょうどいいんだよ。

「冷たいなぁ。まっ、ピヨちゃんは光琉と近い方がいいか」
「………別にそんなことないけど。でも全員が近い席だと嬉しいかもな」
「可愛いこと言うじゃん」
「はっ? 近い方が休み時間とか周りに迷惑かけないかなって思っただけだし」

 本当に。だって近かったらイスを借りたりしなくていいしさ。

「仕方ないなぁ」

 仕方ないって何するんだ?

 おぉ。クジじゃなく自由に席を決めたいって、めっちゃいい提案するじゃん。でもなぁ…みんなも期待の目を向けているけど流石に難しいんじゃないか?

 なんて思ったのに簡単に宇都宮の意見が通った。

 先生…、面倒くさがりだから、その場合は年度末まで席替えなしでいいって言われてラッキーって思ったのかな? それとも提案者がアルファだから?

「どっちもかな」
「ん?」
「なんでもない。窓際取れたらいいなぁ」
「窓際の後ろで固まりたいよな」

 提案者の宇都宮から席を選んでいいよとの好意に甘えて、俺達が最初に席を決めさせてもらえた結果、俺は窓際の後ろから2番目の席。後ろは光琉で前は稜ちゃん、隣が一輝で光琉の隣が宇都宮になった。

 身長的に稜ちゃんと逆の方がいいんじゃないかって提案したら、全員に速攻で却下され…本当は光琉と近すぎるとドキドキしてしまうから、間に稜ちゃんを挟みたかったんだけどな。

「おーい、授業中のお喋りが多かったら問答無用で席替えだぞ。真面目に授業受けろよ~」

「だってよ、宇都宮」
「ピヨちゃんの方が…「日向」」
「ん? なんだ?」
「授業で分からない事があったら何でも聞いてね」
「ありがとう?」

 それって話している最中に食い込んでまで言うことだったか? まぁいいけど。チラッと宇都宮の方を確認してみたら、呆れた顔で俺達のこと見てるじゃん。

「それと今日は先週言った通り防災訓練があるからな。授業中とは限らないし、ちゃんと放送を聞いておくように」

 とか言って絶対授業中にやるんだろうけど。



 予想通り授業中に防災訓練が始まった。地震が起きたと仮定しての訓練。まず初めに机の下に隠れ…

「ふはっ、光琉狭そう」
「机の下に入る方がどこかにぶつけてしまうかも」
「言えてる」

 揺れが収まった合図の放送で廊下に出て、クラスごとに固まりつつも運動場に出るまでは順不同で移動。

 その移動中、階段の中腹部で誰かに背中を押された気がした。

 しかも絶対にわざと。犯人は誰か分からない。そりゃあ俺だって、もしかしたら転けそうになった時に、たまたま俺の背中を押す形になったのかなって思おうとしたけどさ。

 でもさ…

「うわぁっ!」
「日向! 大丈夫?」
「大丈夫。ありがと」

 転げそうになったところを光琉が支えてくれた時、後ろから舌打ちが聞こえたんだよね。これって絶対わざとだよね?

「念の為保健室に向かおう。俺も付き添うから」
「光琉が支えてくれたし大丈夫」
「ダメ。念の為行こう。伊織、暖」
「了解」
「担任に伝えておきますね」

 また舌打ち…あーあ、犯人分かっちゃった。



しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

王冠にかける恋【完結】番外編更新中

毬谷
BL
完結済み・番外編更新中 ◆ 国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

処理中です...