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29.花火大会②
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沈黙のまま目的の駅にたどり着き、花火大会の会場に向かうのかと思いきや連れてこられたのはファストフード店。打ち上げまでまだ時間があるとはいえ、場所取りをするために早く来たんじゃなかったのか?
「会場、向かわないのか? 色んな屋台飯買おうって話てたじゃん」
「………」
「なぁ、光琉?」
腕を組んで目まで瞑ってるし。どうやったら機嫌直るんだよ。
花火大会があるからきっといつもよりはガランとしているんだろうけどさ…少ないながらにいる他のお客さん達からの、どんよりとした俺達の雰囲気を、なんだなんだ? という目が気になるんだけど。
――目を開けさせようと隣へ移動し肩を揺すってみる。
「はぁぁ。。」
「うわぁっ! えっ、光琉!?」
おおおお、おれ、今、だ、抱きしめられてる!? ななな、なんで!?
「ひ、ひ、ひかりゅっ! あっ…噛んじゃった」
何その色気を感じるため息! 耳元で可愛いとか言うのやめてくれっ! なによりちょっと離れてくれっ!
「そいつに会わせて」
「そいつ?」
「鶴間蓮ってやつ」
「やだ」
い、痛い…抱きしめる力を強めるなっ。
「なんで」
「嫌なものは嫌だから」
運良く今まで蓮の存在に気付いてなかったみたいだけど、光琉が見たら絶対好きになる。蓮、可愛いもん。
「……どこでどうやって知り合ったのかまだ答えてないよ」
「病院の待合室でたまたま会っただけっ! それより力強すぎっ! ちょっと痛い」
「病院…?」
ほっ…ようやく腕の力が緩んだ。ほんっとアルファって力強すぎな。俺がオメガだって知ってるんだから少しは力の差を考えてくれよ。
「そう、病院。蓮が日向って呼んでいいか光琉に確認するようにって言うから聞いたのに。聞くんじゃなかった」
「病院ってもしかしてオメガ科?」
「だからそうだって言ってるじゃん」
あれ? 俺言ったっけ?
「初耳だけど。鶴間ってやつオメガ?」
「うん。えっ、まじで知らなかったの?」
「日向以外興味ないから」
そ、うですか。だから、そんな事言われたら勘違いしてしまうだろ。
「まぁオメガならいいか」
「な、何が?」
右手は俺の腰に当てたまま、左手で頭を撫でてくる。感情が忙しすぎてなんかもう俺爆発しそう。
「新しい友達ができてよかったね」
「ごめん、ちょっと理解不能。さっきまでと正反対の意見じゃん」
あんなに悪かった機嫌も良くなってるし。
「オメガだって最初に言わない日向が悪い」
「仕方ないだろ。蓮のこと知らないなんて思わなかったんだから」
「最初に誰って聞いたよね?」
「うっ…」
知ってるけど知らないって言ってるだけっていうか、ガチで知らないとは思わなかったんだよ。
「ちなみに、蓮がオメガじゃなかったら…?」
「蓮って呼ぶのも日向って呼ばれるのもダメ」
「なんで?」
「なんでも」
「それって独占欲みたいじゃん」
とか言ってみたり。うわっ、調子乗るんじゃなかった。自分で言って赤くなるとか恥ずすぎ。
「そう思ってくれていいよ」
「うぅ…」
頬を撫で、そのまま顔を固定されてしまった。そんな事されたら、更に赤くなるのを止められないじゃん。
「…バカ。アホ。バカ」
ちょっとだけ本気で殴ってるのにニコニコしやがって。
「めっちゃ可愛い」
「なっ、ばっ、かじゃないのか」
ほんっとムカつく///
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そ、うですか。だから、そんな事言われたら勘違いしてしまうだろ。
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右手は俺の腰に当てたまま、左手で頭を撫でてくる。感情が忙しすぎてなんかもう俺爆発しそう。
「新しい友達ができてよかったね」
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とか言ってみたり。うわっ、調子乗るんじゃなかった。自分で言って赤くなるとか恥ずすぎ。
「そう思ってくれていいよ」
「うぅ…」
頬を撫で、そのまま顔を固定されてしまった。そんな事されたら、更に赤くなるのを止められないじゃん。
「…バカ。アホ。バカ」
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