【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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28.花火大会

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「あれ? みんなは?」

 隣の県で開催される花火大会。毎年夏終わりにあるその花火大会に誘われたのが数日前。

 会場付近は通行止めになっているからと、今日は珍しく電車移動だ。もう! 駅まで姉ちゃんが一緒に行くって言うから待ち合わせの時間ギリギリになっちゃったじゃん。

 慌てて駅前に向かうとそこには光琉が1人で立っていた。

「みんな? 誘ってないよ?」
「えっ!?」

 そういえばみんなで行くとは言ってなかったかも。

「そもそも伊織は人混みを嫌うし、暖は今仲良くしてる年上オメガ男子がいる。日比野はバスケ部メンバーと行くらしいぞ」
「一樹に声かけたのか?」

 なんだよ。誘ってないって一樹には声かけてるんじゃん。

「ふっ」
「なんだよ」
「焼きもち?」
「ち、違うからっ」

 この顔にすぐ出てしまう癖、早く直さないと毎回からかわれてしまう。

「声をかけてないというか、情報をくれたのが日比野。去年は日比野と行ってたみたいじゃん」
「一樹とっていうかバスケ部のみんなでな。なになに? 光琉、焼きもちか?」

 なんてな。

「そうだよ」
「えっ!」
「なに? 嫉妬するに決まってるでしょ」

 /// やめてくれよな。赤くなってしまっただろう顔を隠しながら、光琉をひっぱって改札内へと急ぐ。

 電車内はそれなりに混んでいたけど、運良く座ることができた。ラッキー!

 そうだ、早いうちに蓮のことも聞いておこう。

「鶴間? 誰?」
「同級生っていうか学校で一番人気なのに知らないのか?」

 オメガを守ろうとしてくれる光琉がオメガの蓮を知らないなんて驚きだな。

「知らない。興味ない。それでそいつがどうしたって?」

 なんでちょっと不機嫌になるんだよ。

「いやだから友達になったって」
「いつ?」
「この間」
「どこで会ったの? どうやって知り合ったの? 学校で話したことないよね?」

 ちょっ、質問攻めにするなって!

「えっと……ん? 俺が蓮と学校で話したことないって知ってるってことは、やっぱり蓮のこと知ってるんじゃんか」
「は? 蓮?」
「なんだよ」
「へぇ。蓮って呼んでるんだ」

 俺、光琉が怒るようなこと言ってないよな?

「そうだけど。それよりなんで蓮を知らないとか嘘言うんだよ」
「嘘ついてない」
「だって俺が話したことないって知ってたじゃん」
「はぁぁ。そりゃあ日向が話したことのある相手に、鶴間なんてやついなかったってことぐらい知ってるよ」

 えっ、そっち!? 俺が誰と話したとか把握してんの? それは…ちょっと怖いんですけど。

「日向?」
「あぁ、うん。なに?」
「それで、なんで『蓮』なんて呼んでるの?」
「友達だから」
「……………」

 …………沈黙が辛い。

「もしかして、日向って呼ばせたりしてないよね?」
「………」

 だから怖いって。

「はぁぁ」
「むっ。光琉に文句言われる筋合いないだろ」
「………嫌なものは嫌」
「だったら……なんでもないっ!」

 番でもないし。その約束すらしてないし。そもそも付き合ってすらないし! 姉ちゃんの持ってる漫画みたいな、アルファが番のオメガに対して出す独占欲みたいな事言うならさ、その立場にしてくれたっていいじゃんか。


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