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27.オメガの友達
しおりを挟む「えっ…鶴間蓮」
「フルネームかよ」
「あっ、ごめん」
「別にいいけど。それより岩清水くんってオメガだったんだ」
定期検診で病院に来たら会ってしまった。学年を超えて学校で一番人気のオメガ…同級生の鶴間蓮くんと。
この病院、学校とは反対方向の電車に乗らなきゃいけないから、知り合いに会うことはないって思い込んでたわ。
「うん、実はオメガで」
オメガ科の待合室で隣同士で座ってしまったのに、違うって言ったって嘘でしかないしな。
「普段は隠してるんだ」
「うん、俺全くオメガに見えないから」
「あっそ。でも納得」
「え?」
「ほら、香坂くんに囲われてるじゃん? でもそっちのクラスのやつに聞いてもピヨちゃんはベータだよって言われるし。オメガなら納得」
ほっ。ちゃんとベータ偽装出来てた。……俺のいないところでもピヨちゃん呼びはやめてほしいけど。
「…? 俺って光琉に囲われてるの?」
「は? まじで言って…そうだね。まぁいいや、この後時間ある? ちょっと話そうよ」
「うん」
そもそも囲われてるってどういう状況なんだ?
診察は俺の方が先だったから、病院内の食堂で待つことに。
少しクーラーが効きすぎているため、選んだのは窓際の日の当たる席。中庭に面していて、日のあたり具合とか涼しいのにぽかぽかするような…ぼーっとしてしまいそう。
「お待たせ」
っ、本当にぼーっとしてしまってた!
「――なるほどね――」
「全然! 俺いっつも診察終わったらすぐ帰ってたからここ初めてでさ。初めての場所ってちょっとドキドキするよな」
「寝そうだったじゃん。――そりゃ囲いたくもなるか――」
「? そうだ! 蓮って呼んでもいいか?」
さっきはバレた事を気にしてしまってたけど、よく考えたらオメガの友達ができるチャンスだし。仲良くなりたい!
「もちろん学校では鶴間くんって呼ぶよ」
「別に蓮でいいけど」
「ダメダメ! つる…蓮って人気者だから俺なんかが話しかけられない」
何でお前がって詰め寄られる未来しか見えない。蓮は素っ気無い態度で周りに壁を作ってることも有名だし。
「なんでもいいけどさ。で、俺は日向って呼んでいいわけ?」
「おう!」
「…香坂くんに確認しなくていいの?」
「? うん」
何で光琉?
「一応確認しといて」
「? 分かった。もしかして俺も誰かに確認してもらったほうがいい?」
「そんな相手いないからいい」
俺とすんなり友達になってくれた理由は、今まで友達のフリして襲ってくるやつがいたり、散々な目に会ってきたから、オメガとしか友達になりたくなかったから、らしい。
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「その…学校では話しかけないって言ったのは撤回する! 何かあったら俺のこと頼ってくれよな!」
「あのさ、危なっかしいって言われたり、周りによく心配されない?」
「そうなんだよ~、オメガだからって家族も光琉も心配性で」
えっ、なに? 今の会話で呆れるとこあったか?
「とりあえず、これからよろしく」
連絡先を交換し、日向呼びしていいか必ず光琉に確認するよう何度も念を押されて解散した。
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