【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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22.姉ちゃんと買い物④ side光琉

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 日向を見かけ、一緒にいるのが俺の知らない少し年上の女性だと気付いた時は正直焦った。でも見るからにベータで、遠くから見た雰囲気が日向に似ていて、お姉さんかな? とすぐに気が付いたけど。まぁ…それでもすぐに確認せずにはいられなかったんだけどな。

「今日の光琉、大人っぽいな」

 そして今俺の隣には少し顔を赤くした日向がいる。はぁー、可愛い。

 元々今日は日向の誕生日プレゼントを買うつもりでいた。

 費用を稼ぐために親の仕事も手伝って、よしっ、買いに行くぞ! と家を出るタイミングが5歳上の姉貴と被ってしまったのが運の尽き。買い物に付き合わされる事になってしまった。

 別荘にプールを作るための業者とのやり取りなんかを全部姉貴がやってくれてるから、無視できなかったんだよな。

「姉貴が煩くてさ」
「服装に?」
「そ。私の隣を歩くならそれなりの格好しなさいとか言うんだ。歩きたいなんて一度も言ったことないのにな」

 いつもと雰囲気が全然違うとか、大人っぽいから俺達同い年に見えないかもとか、身振り手振りで話しているのが、一生懸命って感じで……うん。可愛い。

 出る前に着替えるよう言われた時は腹が立ったけど、言う事聞いといて良かった。
 
「お姉さんと出かける時の服だったんだな」
「後は親の仕事関連で連れ出される時もこんな感じかな」
「へぇ……えっ! 親の仕事関連で連れ出される!?」

 ん? 何かおかしいこと言ったか?

「――世界が違いすぎる――」
「えっ?」
「それってパーティーとか?」
「日向がどういうのを想像しているか分からないけど、パーティーに参加することもあるよ。でもそういう時はスーツかな」

 まじか…と呟いて黙り、考え込んでしまった日向。

「日向はご両親の仕事関係者と会ったことない?」
「父さんの会社の人が家に遊びに来たり…母さんの働いてるスーパーに行ったことがあるくらい」
「同じ感じだよ」
「絶対違うと思う! ちゃんとした服っていうかスーツなんて持ってないし、スーパーだって家の鍵忘れたからで制服だし…」

 何その可愛いエピソード。でも今度家の鍵を忘れた時は、心配だしスーパーまで一緒に行こう。

「何か、すごいな。もしかして宇都宮や稜ちゃんも?」
「かな。でも俺達がすごいわけじゃないよ」
「そっか…そうだよな! 何か住む世界が違うなぁって勝手にちょっと寂しくなっちゃってたわ。でも光琉がこれからどうなるかなんて、まだ分からないもんな!」

 これは…親の事業を継ぐ予定だと、まだ言わない方が良さそうだな。

「俺もさぁ姉ちゃんが買い物行くからってここまで連れてこられて。駅前の家電量販店でイヤホン買って帰るつもりで家を出たから、お昼も食べそこねちゃったんだよな」
「そうなの? 実は俺もお昼まだなんだ。先にどこか入ろっか」
「まじ? ならさ、俺行ってみたい店があるんだ」

 そう言ってスマホで見せてくれた店は最近できたパンケーキの店。まさかお昼にパンケーキ? でも普段は甘いもの好きだって隠してるのに、俺の前では隠さずにいてくれてるのが嬉しい。



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