【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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17.プール日和 side光琉

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 7月末の木曜。今日は日向とプールへ行く。

 最上階に屋内・屋外プールがあるホテル、地元からは少し距離があるその場所へと車で向かう。送迎を遠慮していた日向も、1台でみんな一緒に行くことに魅力を感じ、楽しみにしているようだ。

 家から一番近いのは暖の家。次は伊織でその次が日比野の家。日向の家が一番離れているけど、少しだけでも2人で過ごすため、当たり前に日向を一番最初に迎えに来た。

 着きそうになったら連絡がほしいと、玄関の外で待つからと日向には言われているけど、もちろんそんなことはしない。家の前に到着してから日向に連絡する。


 休みの日までありがとうございます、とドアを開けた運転手にお礼を言っている日向。可愛い。……その可愛い日向にお礼を言われて嬉しそうにしているが、まぁ彼はベータだから大目に見てやるか。

 日向、運転手は仕事中で、決して休みではないぞ?

「ふっ」
「なんだよ」
「可愛いなって思って」
「なっ、に言ってるんだよ。誤魔化されないからな」

 そのプイッって顔を横に向けるのまじで可愛い。ついつい頭を撫でてしまう。

 真っ赤。うわー、抱きしめてぇ。

「あれ? みんなは?」
「これから迎えに行く」
「?? 宇都宮と稜ちゃんの家の方が近いんじゃないのか?」
「そうでもないよ」




 目的地に到着し、それぞれ水着に着替え、先に3人をプールへ向かわせ、日向が着替え終わるのを俺1人で待っている。

 やっぱりな。あいつらを先に行かせておいて正解だった。

「日向、コレ着て」
「え? ラッシュガード?」
「そう。日に焼けて肌が痛くなったら困るでしょ」

 つか、アルファの前で簡単に肌を出すなよ。個室のように更衣室を贅沢使いしましょう、なんて伊織らしくない提案がなかったら、抵抗なく同じ室内で着替えたんじゃないか?

「じゃあ一応借りとく。屋外プールに行く時は着るよ」
「ダメ。今着て。絶対に脱いじゃダメ」
「えぇ…日焼け関係ないじゃん」

 白い肌にピンク…ってだからさ、今襲ってくださいって格好なの分かってるのか? ここにはアルファが3人もいるんだぞ? お願いだからもっと危機感を持ってくれ。しかも首元晒してるし!

「ネックガードは?」
「ちょっ、声大きい!」

 こらっ! そんな格好で俺の口を塞ごうと近付くな!

「貸し切りなら大丈夫かなって」
「はぁぁぁ」
「なんだよ」
「着けてきて」
「でも、着けたらバレるじゃん」

 もうバレてるって。隠したい相手は日比野か? あいつオメガだって知っても態度変えないと思うぞ。

「ダメなものはダメ」
「何でそんな意地悪言うんだよ」

 ちょっと口尖らせてるのが可愛……可愛いとか思うな、俺。冷静冷静冷静………無理だな。

「はぁ。分かった。なら俺のそばから絶対に離れるな」
「/// な、なんでだよ」

 好きだからだよ!

 あいつらを信用してないわけじゃないし、ただ噛むだけじゃ番になれないことくらい分かってるけどさ。もし噛まれたらって不安だし、つか噛んだ時点でいくら幼馴染みでも許さない。

 とりあえずラッシュガードは上まで閉じて、できるだけ首も隠して…っと。

「本当にずっと着とくのか?」
「そう言ってるだろ。日向、約束して」
「な、なんだよ」

 プイッ、でました。目を合わせるために両頬に手を当てているから、横を向けてないけど。

「ラッシュガードは脱がない」
「…うん」
「俺のそばから離れない」
「///」
「日向」
「………分かった」

 はぁ…このフロアに入れる従業員をベータに制限しておいて良かった。


 いずれ俺名義になる予定の別荘に、プールを作りたいって帰ったら相談しよう。



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