【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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14.体育祭の準備

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 競技は各学年クラスごとの戦いだけど、応援団は偶数クラスと奇数クラスの二組に分かれるそうだ。俺達5人の中からは一樹と宇都宮が応援団に参加している。

「じゃあ応援団の練習行ってくるわ」
「いってらっしゃーい」

 俺は光琉と稜ちゃんと、くじで権利を勝ち取った女子3人と応援団旗の作成だ。メンバーにデザイン発案者がいるため、彼女の指示で色を付けていく。

「じゃあ男子はこっち側をお願いね」

 どうやら彼女は残り2人のお目付け役でもあるようだ。

 そこの女子2人! 光琉と稜ちゃんの間に挟まれている俺を見て、何でお前がそこにいるんだよ。って目で睨まないでほしい。イケメンのツーショットの方が目の保養になるのは分かるけどさ。

「これは?」
「ラインストーン。これをここに付けるの」
「へぇ、光にあたったらキラキラして綺麗かも。こんなこと思いつくとかすごいな!」

 ただ単に色を付けるだけだと思ってたわ。完成品が待ち遠しい。

「ありがとう。ーー岩清水くんってちょっと可愛いかもーー」

 ?? ごにょごにょってなんて言ったんだ? 光琉には聞き取れたらしいけど、なぜ急に不機嫌?

 開いている窓の外から、応援団が練習している声が聞こえてくる。この非日常感がなんだか楽しい。



「わぁ!」
「あっ、ごめんね~。でもわざとじゃないから」

 絶対わざとだろ。ラインストーンを見せてもらおうと女子側に移動ししゃがんだ瞬間、筆洗い用バケツの水をかけられた。もちろん色付き。

「私達バケツの水を変えたかっただけだし」
「まさかいると思わなかったよね~」
「でも団旗にかからなくって良かった~」

 何が『ね~』だよ。

「はっ…くちっ」
「あはは。女子みたいなくしゃみするじゃん」
「岩清水くんがしたって可愛くないのにね」

 別に可愛いと思ってしてないわ!

「えっ、光琉?」

 不機嫌を通り越し怒っている光琉に腕を取られる俺、それを見て驚いた表情の女子2人。お目付け役の女子は、あちゃーって効果音が聞こえてきそうに右手を額に当てている。
 呆れた様子の稜ちゃんは、光琉に手を引かれた俺達が教室を出る瞬間、女子達に何か話していた。

「残念な人達ですね。あぁ、私達は帰るので後はお願いしますね」


 そして連れてこられたのは同じ階にある空き教室。

「まじであいつら許せねぇ」
「落ち着けって」
「とりあえずコレに着替えて」

 と言って渡されたのは光琉のジャージ。

「……今日体育なかったじゃん」
「嫌な予感がしたから念の為。でも持って来て正解だった」

 寒くないとはいえ濡れたままは気持ち悪いし、風邪を引いてもいけないから遠慮なく着替えさせてもらおう。

「うわぁ。シャツきったねぇ」

 んー、これ洗濯で落ちなかったら困るし、学校でも水洗いしとこう。

 ってこれ着替えたけどさ…でかいんですけどぉ。今の俺、絶対姉ちゃんが喜ぶ格好してるよな。アルファの服着るとかなんか俺オメガみたい。オメガだけど。

「っ! 日向可愛い」
「かっ、わいくないし」

 光琉の匂いに包まれてる…ドキドキするのに落ち着くとか。コレ…脱ぎたくない。

「ふふ」

 本当光琉って気が利くし優しいよな。俺、運命とか関係なくても好きになってそうだよ。

「ありがとな、光琉」
「ーー可愛すぎるだろーー」
「??」
「光琉、入りますよ」

 その後3人分の鞄を持って廊下で待ってくれていた稜ちゃんと合流し、手洗い場でシャツを軽く洗い、光琉ん家の車で帰ることに。車の中では2人が内緒話をしていて、暇だなと思っていたらいつの間にか寝ちゃってた。

「ジャージ、返さなくてもいいからね」

 車を降りる前に光琉にそう言われた。ラッキーとか思ってない。ちゃんと返すし。


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