【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

文字の大きさ
上 下
10 / 106

9.いちごエクレア①

しおりを挟む
「あっ! そうだ日向」
「うん?」
「去年さ、映画コラボしたエクレア覚えてるか?」
「覚えてるけど?」

 いちごのエクレアな。あの後他の店舗で探したけど人気商品だったみたいで手に入らなかったんだよ。それがどうしたんだと思っていたら、どこかから戻ってきた宇都宮が会話に参加しだした。

「もしかしていちごのエクレア?」
「そう。宇都宮もあの映画観たのか? 意外だな」
「観てない。でも女子の間ですごい人気の映画だったから、探してる子多かったなって」
「へぇ」

 何となく深くは聞きたくない。

「へぇって日向ちゃん、つめた~い」

 呼び捨てはできないからって最近はちゃん付けでも呼んでくる。日向って名前、女子っぽいからそんな風に呼ばれたくないのに。

「日向ちゃんって言うな」
「言うな」
「いや、光琉はこえーよ」

 岩清水って呼んだり、日向ちゃんって呼んだり、宇都宮の使い分けポイントが分からない。

「それで一樹、エクレアがどうしたんだ?」
「人気だったから季節商品として毎年販売されることになったみたいでさ。結局あの日は日向食べれずじゃん? 気になってるかなって」
「まじ!? 今日の帰りに寄らないと!」

 同じコンビニが学校の近くにもあるから、まずはそっちに寄って残ってるか確認して…。

「もう落とすなよ~」
「落とさねーよ」

 あの時は急に声をかけられたからで…あれ? なんか大事なこと忘れてるような?

「そういえば去年、暖が他中学の生徒に声をかけ、持っていた食べ物を台無しにしたことがありましたよね」
「あー、弁償するって言ったのに逃げられた…って、あれもしかして日向ちゃんと日比野?」
「絶対俺達だ! 日向が落としたのも声かけられて驚いたからだったし。なんだよ~俺ら1年前に既に会ってたのかよ~」

 ………早く立ち去らなければと感じたのは宇都宮、お前のせいか! きっとアルファが近づいたことに本能が…待てよ?

「もしかして光琉もいた?」
「いたよ」

 っ!! 何で俺忘れてたんだろう。あの時もバニラの匂いがしたんだった! ちょっと待て。もしかして塾も同じところに通ってた? 確かアルファクラスの授業が前日にあった気がする。

「台無しにしちゃってごめんね日向ちゃん」

 いや俺の方がごめん。一瞬宇都宮のせいにしたけど俺が焦って帰ったのは光琉のせいだ。

「あれ買ったの俺だけどな」
「日比野の奢り? なんで?」 

 もしかして俺がバニラ好きになったのは、すれ違いとはいえずっと光琉が近くにいたから…? 

「日向!? 何で急に真っ赤になってるの? 日向?」

 やばいやばい。恥ずい。それって無意識に番を求めてたってことじゃん。

「日向? おーい」

 あっ! 俺がバニラ好きだって一樹知ってる! 光琉にバレたら……気持ち悪いって思われるかもしれない。

「今度は真っ青だよ。日向大丈夫?」
「本当だ。日向大丈夫か?」
「おい日比野。日向に何したんだ」
「えっ俺!? ちょ、待て待て。俺何もしてないから」

 ここはバニラ好きは隠していちご好きってことにしよう。うん、俺いちご好きだったからいちごスイーツに詳しいし、誤魔化せるはずだ。

「日向助けてくれっ」
「えっ? 何? 一樹」

 全然話聞いてなかったや。

「えーっと、なんだっけ?」
「何で日比野の奢りだったの?」

 ん? 何の話だ?

「あぁ、エクレアのことか。一樹、甘いの苦手なくせに写真を撮りたいがために買ったから。俺は消費要員」
「日向は甘いものが好きなの?」

 一樹のことはもういいのか?

「別に違うけど。食べれるだけだし」
「最近の日向はバニ…「あーー!!」」


 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中

毬谷
BL
完結済み・番外編更新中 ◆ 国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

幸せになりたかった話

幡谷ナツキ
BL
 このまま幸せでいたかった。  このまま幸せになりたかった。  このまま幸せにしたかった。  けれど、まあ、それと全部置いておいて。 「苦労もいつかは笑い話になるかもね」  そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。

あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を

羽兎里
BL
本編完結いたしました。覗きに来て下さった方々。本当にありがとうございました。 番外編を開始しました。 優秀なαの兄達といつも比べられていたΩの僕。 αの父様にも厄介者だと言われていたけど、それは仕方がない事だった。 そんな僕でもようやく家の役に立つ時が来た。 αであるマティアス様の下に嫁ぐことが決まったんだ。 たとえ運命の番でなくても僕をもらってくれると言う優しいマティアス様。 ところが式まであとわずかというある日、マティアス様の前に運命の番が現れてしまった。 僕はもういらないんだね。 その場からそっと僕は立ち去った。 ちょっと切ないけれど、とても優しい作品だと思っています。 他サイトにも公開中。もう一つのサイトにも女性版の始めてしまいました。(今の所シリアスですが、どうやらギャグ要素満載になりそうです。)

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

処理中です...