【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜(蜜柑桜)

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8.一緒に通学

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 入学して数日、一樹が中学時代と同じくバスケ部に入部した。

「なぁ日向、一緒にバスケしようってばー」
「俺はいいって。この学校強豪校らしいし頑張れよ」

 そもそも中学の時だって3年になる少し前くらいから付いていくだけでも大変で、毎日必死だったんだ。だから俺が入ったって足を引っ張るだけ。
 それにプロ・アマ問わず、高校生以上の試合ではアルファとベータが同じ試合に出ることができない。バース性の公表が必須だから無理。

「気が向いたらいつでも待ってるからな!」
「はいはい。サンキュ」
「それとさ、朝練もあるっぽくて」
「あー、そっか。了解。一樹、寝坊すんなよ」


 さて、どうするか。

 俺が稜里高校へ進学する条件…それは1人で登下校しないこと。特に朝はどうしても満員電車になってしまうから絶対にダメだって。

 一樹と一緒に行ってるふりをしたって絶対バレるよな。母親同士が連絡を取り合っているから、一樹が部活に入ったことも俺が黙ってても耳に入るだろうし。

 やっぱ朝は父さんと一緒に出るしかないか…でもなぁそうすると出張の日と直行? って日が困る事になる。母さんには頼りたくない。だって絶対パートまで時間があるからって学校まで付いてくると思うから。

 でも俺気付いたんだけどさ、多分アルファって移動は車だと思うんだ。光琉達もそれぞれ車で送ってもらってるし、朝は送迎車の列ができてるくらいだし。


「そうだ日向、これからは俺と一緒に通学しよう」
「…光琉は車じゃん」
「家まで迎えに行く。もちろん帰りも送るから安心して」

 ………だからなんで?

「いやいいよ、電車使う」
「危険すぎる」

 危険って。

「乗ってるの10分くらいだぞ?」
「10分も満員電車の中とか安心できない。痴漢に合うかもしれない」
「俺なんかに痴漢するやついないって。今日だって電車で来たけど何もなかったぞ」
「それは運が良かっただけでこれからもないとは言い切れないでしょ。日比野が一緒でも不安なのに、1人は余計だめ」

 って言われてもなぁ。
 
「そうだ!」「分かった。俺も電車通学する」

 光琉とタイミングが被ってしまった。今、電車通学するって言ったか?

「日向…何を思いついたの?」
「俺、自転車通学しようかなって」
「……自転車でかかる時間は?」
「うーん、駅経由しなくていいから30分くらい?」
「ダメ」

 即答かい! いい案だと思ったのに。

「って、光琉には関係ないだろ」
「ダメなものはダメ」
「お前らそれ毎日やってて飽きないの? その送る送らないってやつ」
「暖は黙ってろ。日向、何と言われようと今回は譲れない。一緒に電車に乗るか俺ん家の車に乗るか、今選んで」


 番にするつもりもないくせに、なんで俺の行動を制限するんだよ。




 結局、稜ちゃんの提案で次の日から光琉達と4人で登校することになった。まさか全員最寄り駅が同じだったとはな。まぁ…光琉達は駅を挟んで反対側の高級住宅街だけど。



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