小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)

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作戦開始だ②sideアルフレッド

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 会場の外へ出ると、城の使用人に扮したあの少年の父親がレオニールと待っていた。

「行ってくる」
「お気をつけください。必ず合図をお忘れなく」
「分かっている」

 使用人と共に休憩室へと向かう。そこは今回のために用意した場所なので、休憩室のあるフロアには他の招待客が誰もいない。普通王族である俺が苦しんでいたら、騎士や側近たちが寄ってくる。そんな事は起こらず部屋まで誘導されるなんてありえないのに、あの令嬢はこの現状がおかしいと思わないのが不思議だ。

「アルフレッド様っ! ……良かった。今日はちゃんと…」
「だ、だれだ…?」
「リリーナよ」

 勝手にその名を名乗るな。腹立たしい。

「ここからは私が案内を変わります。あなたは戻っていいわ」
「いえ。女性一人では大変でしょうから私が部屋までお連れします」

 数秒悩んだ後、使用人にもたれかかっている俺を見て、一人で連れて行くことは諦めたのだろう。

「……まぁ、確かに思っていた以上に大変そうだから一人じゃ無理かもね。あなたにお願いするわ。こっちよ」

 作戦通りに進んだな。リリーナが嫌がっていたのもあるが、俺自身もリリーナ以外の女性には触れられたくないからと、こいつが思っていた以上に薬が効いているふりをした。

「この部屋よ」
「あの…最初に指定された部屋と違いますが」
「うるさいわねっ。ここでいいの! アルフレッド様を早く中に」
「わ、分かりました」

 こっちが本性か。俺が朦朧もうろうとしているから素を出しても大丈夫だと思ったんだろうな。

 部屋の中に入りソファーに座らされるが、隣には座られたくない。対面に座ることしかできないよう、はしたないが足も上げてしまおう。

「アルフレッド様? お辛そうです…ベッドに行きますか?」
「いや、ここでいい」
「ではっ、私が膝枕します! 少し寄ってもらえ…」
「大丈夫だ。今はあまり動きたくない」
 
 さて、どうするか。さっさと済ませるなら襲われるのが一番だが…。

「幼い頃から毒の耐性を付けるために少量の毒を摂取してきた。だからもう少ししたら効果が薄れてくるはずだ」
「えっ!?」
「そんなに驚くことか? リリーナも私ほどではないが訓練してきたじゃないか」
「そうだったの!? あっ、いえ。えっと…早くベッドにっ……って、もういいわ! ここでっ」

 何がもういいのか、立ち上がりこちらへ近付いてくる。この話をすれば薬草の追加をしてくると思ったが、ソファーで襲うことにしたのか。

「アルフレッド」

 王族を呼び捨て。これも罪に問えるな。そもそも名前呼びすら許可していない…これも不敬罪として追加しよう。
  
「やめろっ! 今何をしようとしたっ」

 触れられたくない気持ちが勝ってしまい、つい突き飛ばしってしまった。まさか押し倒す前に座ったままの状態で顔を近付けてくるとはな。厳密にはどこも触られていないが、これも襲われそうになった、に入るだろう。

「いったぁい。アルフレッド? 急にどうしたの?」
「驚いただけだ。今顔を近づけ何をしようとした?」

 あれっ? もう効果薄れてきてる? 早くない? 仕方ない、追加しよう。そう小さく呟いていたが、全部聞こえているぞ。そうか、自ら違法薬草を扱うのだな。

「ねぇ、アルフレッド? これ体内の毒素を薄めてくれるものが入っているから、これを飲んで」
「青いな。先程渡されたものによく似ている」
「薬草が混ざるとそうなるのよ」

 あの薬草を混ぜたグラスを受け取り…茶の匂いはしない…やはり酒と混ぜているな。

「薬草を混ぜるとこんな色になるのか。詳しいんだな。それともこの薬草が酒に混ざるとこの色に?」
「えっ、ええ、そうよ。粉状にしたものを混ぜるとこの色になるの」  
「酒じゃなく水がよかったんだが」
「お酒のほうがよく効くのよ」

 間違ってはいないな。良い方ではなく悪い方によく効くのだが。

「さぁ、早く飲んで」
「やめておくよ」
「そんなっ! わ、分かりました。じゃあお水を持ってきます」

 効果は薄れても薬草を飲ませることに変わりないものな。持ってきた物もやはり青い色をしていたが、それも受け取っておこう。

「はいっ、水よ」
「青いな」
「水って青いのよ」

 ………。まぁいい。飲んだふりをしてもう一度先程のことについて尋ねようじゃないか。

「もういらない。この匂いは好きじゃない」
「でも、一口は飲んだのね?」
「あぁ」

 飲ますことができてそんなに嬉しいのか。きっと計画通りに進んでいると思っているのだろうな。だが、もうすぐで終わるぞ。

 目の前にはグラスが2つ…これも証拠として置いておきたい。片付けられる前に移動するか。

「少し横になりたい」

 そう言ってベッドの方へ移動すると、案の定あいつも後ろから付いて入ってくる。こちらで用意したものとはいえリリーナと同じ香水を使っているのが腹立たしい。もちろん香ってくる匂いは違うが、こいつは違いに気付いていない。自分からリリーナと名乗ったくらいだ、俺がまだリリーナと勘違いし続けていてもおかしいとは思わないはず。利用させてもらおう。

「そういえば…さっきリリーナから顔を近付けたのはなんだったんだ?」
「え?」
「ソファーで。リリーナから顔を近付けてきたじゃないか」

 こんなやつに全くもって思っていないが、キスされそうになって嬉しかったと読み取れる顔を向けた。

「ふふふっ。そうなの。立太子式っていうお祝いの日だし私からキスを贈ろうと思って。私からのキスは嬉しい?」 
「そうだったのか。リリーナからのキスは嬉しいよ」

 お前じゃなくてな。もういいだろう。



 ガシャーン!!!




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