小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)

文字の大きさ
上 下
49 / 65

婚約者の妹②sideアルフレッド

しおりを挟む
「殿下、これから知る内容は聞かなかったことにし、罰することはないとお約束ください」
「約束しよう」

 恐らくパーティーでの件を自白させるつもりなのだろう。


「お姉様…?」

 レオニールに誘導され近付いてきたメアリー嬢。

「リリーナはあの薬草を5枚も飲まされた。ずっと目を覚ましていない。メアリー、私は大袈裟だったか?」
「っ! び、媚薬効果が出るだけのはずです…目を覚まさないなんて……私はそんなの聞いてない」
「それだけで違法となるわけがないだろう。お前はよく知りもしない薬草を他人に使おうとしたんだ」
「そんな…」

 人形のように眠っているリリーナを見て何か思うところがあったのか、レオニールの言葉でことの重大さにようやく気づけたのか、涙を流しだした。

「メアリー、これがお前が言うちょっと攫われたくらいで起きたことだ」
「………」
「パーティーで殿下に使用しようと計画したな」
「……はい。申し訳ありませんでした」
  
 今更謝られたところでもうどうだっていい。未遂で済んだし、あの日狙われたのは俺でリリーナに危険はなかったんだ。



「あぁぁぁ」

 長い沈黙の後、叫びながら崩れ落ちたと思ったら、急に立ち上がりリリーナに手を伸ばしてきた。

「ごめんなさい、ごめんなさいお姉様、ごめんなさい」
「触るなっ」
「っ!!!」

 この涙に嘘はないだろう。今まで自分がしでかしたことが怖くなり、反省し、許しを請いたいのだろうが、触れようとするな。

「今までの自分をかえりみるのであれば、触れられないことくらい理解できるだろう」
「申し訳ありません……」

 レオニールによって離された彼女は今までと顔つきが変わったようにみえる。

「いかに自分の考えが甘かったのか、気づけたか?」
「はい…あの、お兄様…お姉様は目を覚ましますか?」

 彼女が誰かを心配している姿は初めてなんだろう。レオニールが驚いている。

「今解毒薬で治療中だ。必ず目を覚ます」
「解毒薬があって、良かったです…」
「隣国にしかないがな」

 もちろん隣国も我がセルナ王国同様、薬草の使用及び栽培を禁止している。だが製法次第で医療に使えるかもと現在研究中で、成功すれば手術の際痛みを感じずに治療を受けられるようになるそうだ。人によっては効きすぎてしまうため解毒薬も同時研究しており、その研究に彼らの再従兄弟が関わっているため手に入れることができた。

「もしかして…再従兄弟の結婚式で隣国に行った際、お兄様が公爵邸についても馬車をお降りにならなかったのって…?」
「そうだ。念の為に手に入れておこうと思ってな。メアリーはあの男爵令嬢と繋がっていたから、解毒薬の存在を知らせるわけにいかなかったんだ」

 そうでしたか。そう言ってリリーナを涙を流しながら見つめる彼女をみて、これからの二人はまともな姉妹になれる気がした。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

処理中です...