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事件の調査sideアルフレッド
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翌日、レオニールが王宮にやってきた。
「アル、リリーナは?」
「まだ目覚めない。さっき解毒薬を飲ませたが…変化はない」
「そうか…怪我は?」
「ほとんどが擦り傷だった。未遂であったことも医師が確認済だ」
あの男はリリーナに跨がっていたんだ…未遂であっても物凄く怖かっただろうに。
「再従兄弟に手紙は出したが、返事が来るまで薬が持つかどうかだな…」
「それについてだが、リリーナを診た女性医師が違法薬草を飲まされたことに気付いたんだ。医学書を読んだことがあるだけで…こちらが持っている情報を与えないか? そうすれば隣国の医師を待たなくてすむ」
「本の知識だけで気付いたのか? そうか。……隣国を納得させるだけの理由を考えておかなければな」
しばらくしてリリーナの包帯を変えにやって来た医師に、話があるから治療後に声をかけるよう伝え、その間にダニエルと3人で昨日それぞれが得た情報を共有することしにた。
「取り調べの内容を聞かせてくれ」
「まずリリーナ様を攫った男だが、平民となっても生きていけるようにと父親である子爵にあの店を与えられたにも関わらず、二階を住居として使うだけで店を開く事はなかったようだ」
*
*【回想】
*
「状況は」
リリーナをメイドに任せ、まずは実行犯がいる取調室へと向かった。ダニエルが取り調べを行っていたのか。椅子に座り、自分がやってしまったことを後悔しているのが手に取るように分かるこの男は、比較的早く自白するだろう。
「はい。行きつけの酒場で、居合わせた他の客とお金に困っている話をしていると、怪しい人物に楽に稼げる話があると声をかけられたそうです」
「その人物の姿形は?」
「黒いマントで体を覆い、フードを目深に被っていたから分からないと。ただ、声の高さから女性だと感じたようです」
前回の少年の時と同じだな。
「それで」
「依頼主が何者かを詮索しないこと、内容はある女性を指示した場所へ連れてくること。詳細はやると決めたら家に手紙を送ると言われたようです。お金さえ手に入れば依頼主は誰でも良かったし、内容も簡単だからその場で引き受けたと」
「手紙はどうした」
それが…と言ってダニエルは残念そうな顔をしている。まさかっ!
「燃やしてしまったそうです」
「それも指示されていたのか」
「のようです」
用意周到…こういった犯罪を今まで何度もやってきたかのような準備の良さだな。
「それで手紙の内容は」
「髪色がピンクゴールドの女性を平民街にある元娼館の地下牢に入れ、同封した薬草を酒に混ぜ飲ませること。その後必ず襲うこと、そう書かれていたようです。そして…襲った後は好きにしていいとも書かれていたようでして」
怒りで体が震えてくる。でもここで怯えさせて話さなくなっても困る。耐えなければ。
「彼女はウィッグを付けていて髪色が分からなかったはずだが」
そう聞くとダニエルが男の方を見た。ここからは俺が取り調べよう。ダニエルと席を替わり、男に再度同じ質問をなげた。
「全て手紙に書いてありました。私の家の近くで馬車を襲わせるから、それを合図に逃げてくる令嬢を匿うふりをして連れ去れと…ウィッグの色が何色だったか記載されていたかも覚えていないのですが、特に問題ありませんでした」
そこまで読んで公爵家の御者を追いかけさせたのか。
「決行日と薬草の製法も手紙に?」
「はい…粉状にしたものか、練り潰したものを酒に入れて飲ませるようにと」
「ならなぜ粉状のものではなく、練り潰す方を選んだんだ」
「その方が報酬が高かったんです」
報酬が高ければそちらを選ぶに決まっているだろう。最初から命を奪うつもりだったのか?
「アル、リリーナは?」
「まだ目覚めない。さっき解毒薬を飲ませたが…変化はない」
「そうか…怪我は?」
「ほとんどが擦り傷だった。未遂であったことも医師が確認済だ」
あの男はリリーナに跨がっていたんだ…未遂であっても物凄く怖かっただろうに。
「再従兄弟に手紙は出したが、返事が来るまで薬が持つかどうかだな…」
「それについてだが、リリーナを診た女性医師が違法薬草を飲まされたことに気付いたんだ。医学書を読んだことがあるだけで…こちらが持っている情報を与えないか? そうすれば隣国の医師を待たなくてすむ」
「本の知識だけで気付いたのか? そうか。……隣国を納得させるだけの理由を考えておかなければな」
しばらくしてリリーナの包帯を変えにやって来た医師に、話があるから治療後に声をかけるよう伝え、その間にダニエルと3人で昨日それぞれが得た情報を共有することしにた。
「取り調べの内容を聞かせてくれ」
「まずリリーナ様を攫った男だが、平民となっても生きていけるようにと父親である子爵にあの店を与えられたにも関わらず、二階を住居として使うだけで店を開く事はなかったようだ」
*
*【回想】
*
「状況は」
リリーナをメイドに任せ、まずは実行犯がいる取調室へと向かった。ダニエルが取り調べを行っていたのか。椅子に座り、自分がやってしまったことを後悔しているのが手に取るように分かるこの男は、比較的早く自白するだろう。
「はい。行きつけの酒場で、居合わせた他の客とお金に困っている話をしていると、怪しい人物に楽に稼げる話があると声をかけられたそうです」
「その人物の姿形は?」
「黒いマントで体を覆い、フードを目深に被っていたから分からないと。ただ、声の高さから女性だと感じたようです」
前回の少年の時と同じだな。
「それで」
「依頼主が何者かを詮索しないこと、内容はある女性を指示した場所へ連れてくること。詳細はやると決めたら家に手紙を送ると言われたようです。お金さえ手に入れば依頼主は誰でも良かったし、内容も簡単だからその場で引き受けたと」
「手紙はどうした」
それが…と言ってダニエルは残念そうな顔をしている。まさかっ!
「燃やしてしまったそうです」
「それも指示されていたのか」
「のようです」
用意周到…こういった犯罪を今まで何度もやってきたかのような準備の良さだな。
「それで手紙の内容は」
「髪色がピンクゴールドの女性を平民街にある元娼館の地下牢に入れ、同封した薬草を酒に混ぜ飲ませること。その後必ず襲うこと、そう書かれていたようです。そして…襲った後は好きにしていいとも書かれていたようでして」
怒りで体が震えてくる。でもここで怯えさせて話さなくなっても困る。耐えなければ。
「彼女はウィッグを付けていて髪色が分からなかったはずだが」
そう聞くとダニエルが男の方を見た。ここからは俺が取り調べよう。ダニエルと席を替わり、男に再度同じ質問をなげた。
「全て手紙に書いてありました。私の家の近くで馬車を襲わせるから、それを合図に逃げてくる令嬢を匿うふりをして連れ去れと…ウィッグの色が何色だったか記載されていたかも覚えていないのですが、特に問題ありませんでした」
そこまで読んで公爵家の御者を追いかけさせたのか。
「決行日と薬草の製法も手紙に?」
「はい…粉状にしたものか、練り潰したものを酒に入れて飲ませるようにと」
「ならなぜ粉状のものではなく、練り潰す方を選んだんだ」
「その方が報酬が高かったんです」
報酬が高ければそちらを選ぶに決まっているだろう。最初から命を奪うつもりだったのか?
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