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嫌な予感…
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パーティーから数週間がたち、アルフレッド様が手渡された飲みの物の成分が分かった。
その薬草は液体に混ぜると青く染まるようで、手渡された飲み物は本来透明色だったそう。
予想していた通り媚薬の成分と体の感覚が鈍くなる成分が検出されたとお兄様が言っていた。
恐らく、次は来月のアルフレッド様の成人の誕生日であり、王太子と発表される立太子式の日に仕掛けてくるのではないかと私達は予想している。でも何故かずっと嫌な予感がしてならない。
「リリーナ、顔が怖いわよ」
「ごめんなさい。どうしても気にしてしまうのよ」
「でも今日は殿下への贈り物を選びに来たんだから、嫌なことは一旦忘れましょう」
「そうね」
今日はアマンダに付き合ってもらい、アルフレッド様の誕生日、そして立太子を祝う贈り物を買うため王都貴族街に来ている。
「このお店に入ってもいいかしら?」
選んだのはガラスペンやインクが売っている、前世で言うと文房具店に近いお店。立太子のお祝いはここで買おうかしら? 私がガラスペンに思い入れがあることをアルフレッド様はご存知だし、王太子のお仕事でサインをする機会も多いから、私が贈ったものを使ってほしい。
「あっ」
入って早々に見つけてしまった。
「二人の色ね」
アマンダも見つけたようで、コソッと私に伝えてきた。今は念の為変装しているものね。
「お客様、お目が高いですね。それは今一番人気の色合いなんですよ。王太子殿下とご婚約者様のお色ですからね」
アルフレッド様が王太子になることがすでに広まっており、最近はお祝いの気持ちを込めて私達の髪色に合わせた商品が増えているそう。
「金色と紫色の組み合わせなんてないわよね?」
「それはさすがにありません。瞳の色は特別ですからね」
「特注はできるかしら?」
「可能ですが、殿下の瞳の色である金色とは組み合わせられないです。髪色の方に合わせた金色であればまだ可能ですが紫とは…おや? お客様も瞳の色が紫なんですね。でしたら髪色の方に合わせるのもお断りさせていただきます。違いはあれど金色であることに変わりないので」
このお店は王家も公爵家もお抱えにしている業者じゃないから、こっそり作ってしまえばバレないのに、ちゃんと線引をしていて好感が持てるわね。
他にもお客様がいてるし、奥に案内してもらって特注の話をしましょう。
「分かったわ。ここではちょっと話せない話があるから奥に案内してもらえないかしら? もちろん、あなたに迷惑はかけないわ」
「……かしこまりました」
目の色の話をしたから私のことを疑っているのね。誰だと思っているんだって怒る貴族もいるんだろうけど、私はこれくらい警戒している方が安心するわ。とは言え、部屋についたら早急に正体を明かした方が良さそうね。
「どうぞ」
「ありがとう」
アマンダと並んでソファーに掛け、早々にウィッグを外し正体を明かした。
「騙したようになってごめんなさい。私、リリーナ・ウィリアムズと申します」
「はっ、えっ!? も、申し訳ございません」
「いいのよ。変装していたし。むしろはっきり断るあなたは信頼に値するわ」
「ありがたいお言葉です」
どうやらデザインを考えているのは店主の息子さんのようだったので、呼んでもらい希望を伝えつつデザインを作成してもらう。
「念の為3週間ほどお時間をいただけますか」
「大丈夫よ。出来上がったら公爵家のタウンハウスに届けてくれるかしら」
「かしこまりました」
早めに探しに来てよかったと思いながら店をあとにし、少し休もうと近くにあるカフェに寄ろうとしたら、今一番会いたくない人物の姿を見つけてしまった。
「あら、リリーナじゃない」
「ホワイトさん…」
ここも貴族街とは言え少し足を伸ばしすぎたわね。平民街に近い場所まで来るんじゃなかったわ。
「ここで会ったのも何かの縁ね。少し話しましょうよ」
「申し訳ないけれど急いでいるので失礼するわ」
私達の様子が変わったことに気付いた護衛の騎士たちが、ルーシーとの間に立ってくれた。
「ちょっと邪魔なんだけど。ねぇリリーナ、少し話しましょう」
「お断りしたはずよ」
「いいの? まぁ私はここで話してもいいんだけどね?」
この間はメアリーに同じ手を使われて引っかかってしまったけれど、今日は騙されないわ。
「私も構わないわ」
「ムカつくわね。まぁいいわ。言うこと聞かなかったこと、後で後悔しても知らないから」
そう言ってルーシーは去っていったけれど…あぁ、やっぱり嫌な予感がする。
「アマンダ、カフェは諦めてうちでお茶にしない?」
「そうね。私も今同じ提案をしようとしていたところよ」
護衛の一人が馬車を呼びに行き、私達は店の前で待たせてもらっていると、御者が慌ててこちらに掛けてきた。
「お嬢様! 逃げてくださいませっ!!」
御者がどう見ても真っ当じゃない者に追われている…ルーシーが手配したのね。
「リリーナ様とアマンダ様はこちらへ」
対応は護衛騎士に任せて、私達はアンナと共にこの場からできるだけ遠くへ逃げ、貴族街の中心部に向かおうとした。
「こっちへ」
「えっ」
「ここは私の家が経営している店なんだ。匿うよ」
駆け出そうとしたら、一部始終を見ていた貴族の男性が手を差し伸べてくれた。
良かった。もし他にも仲間がいて、逃げている途中に別のところに潜んでいた仲間に襲われたらって考えたら恐ろしかったから。屋内に匿ってもらえれば、その間に護衛騎士達がなんとかしてくれるわね。
それにしてもここは何のお店なのかしら。改装中…?
その薬草は液体に混ぜると青く染まるようで、手渡された飲み物は本来透明色だったそう。
予想していた通り媚薬の成分と体の感覚が鈍くなる成分が検出されたとお兄様が言っていた。
恐らく、次は来月のアルフレッド様の成人の誕生日であり、王太子と発表される立太子式の日に仕掛けてくるのではないかと私達は予想している。でも何故かずっと嫌な予感がしてならない。
「リリーナ、顔が怖いわよ」
「ごめんなさい。どうしても気にしてしまうのよ」
「でも今日は殿下への贈り物を選びに来たんだから、嫌なことは一旦忘れましょう」
「そうね」
今日はアマンダに付き合ってもらい、アルフレッド様の誕生日、そして立太子を祝う贈り物を買うため王都貴族街に来ている。
「このお店に入ってもいいかしら?」
選んだのはガラスペンやインクが売っている、前世で言うと文房具店に近いお店。立太子のお祝いはここで買おうかしら? 私がガラスペンに思い入れがあることをアルフレッド様はご存知だし、王太子のお仕事でサインをする機会も多いから、私が贈ったものを使ってほしい。
「あっ」
入って早々に見つけてしまった。
「二人の色ね」
アマンダも見つけたようで、コソッと私に伝えてきた。今は念の為変装しているものね。
「お客様、お目が高いですね。それは今一番人気の色合いなんですよ。王太子殿下とご婚約者様のお色ですからね」
アルフレッド様が王太子になることがすでに広まっており、最近はお祝いの気持ちを込めて私達の髪色に合わせた商品が増えているそう。
「金色と紫色の組み合わせなんてないわよね?」
「それはさすがにありません。瞳の色は特別ですからね」
「特注はできるかしら?」
「可能ですが、殿下の瞳の色である金色とは組み合わせられないです。髪色の方に合わせた金色であればまだ可能ですが紫とは…おや? お客様も瞳の色が紫なんですね。でしたら髪色の方に合わせるのもお断りさせていただきます。違いはあれど金色であることに変わりないので」
このお店は王家も公爵家もお抱えにしている業者じゃないから、こっそり作ってしまえばバレないのに、ちゃんと線引をしていて好感が持てるわね。
他にもお客様がいてるし、奥に案内してもらって特注の話をしましょう。
「分かったわ。ここではちょっと話せない話があるから奥に案内してもらえないかしら? もちろん、あなたに迷惑はかけないわ」
「……かしこまりました」
目の色の話をしたから私のことを疑っているのね。誰だと思っているんだって怒る貴族もいるんだろうけど、私はこれくらい警戒している方が安心するわ。とは言え、部屋についたら早急に正体を明かした方が良さそうね。
「どうぞ」
「ありがとう」
アマンダと並んでソファーに掛け、早々にウィッグを外し正体を明かした。
「騙したようになってごめんなさい。私、リリーナ・ウィリアムズと申します」
「はっ、えっ!? も、申し訳ございません」
「いいのよ。変装していたし。むしろはっきり断るあなたは信頼に値するわ」
「ありがたいお言葉です」
どうやらデザインを考えているのは店主の息子さんのようだったので、呼んでもらい希望を伝えつつデザインを作成してもらう。
「念の為3週間ほどお時間をいただけますか」
「大丈夫よ。出来上がったら公爵家のタウンハウスに届けてくれるかしら」
「かしこまりました」
早めに探しに来てよかったと思いながら店をあとにし、少し休もうと近くにあるカフェに寄ろうとしたら、今一番会いたくない人物の姿を見つけてしまった。
「あら、リリーナじゃない」
「ホワイトさん…」
ここも貴族街とは言え少し足を伸ばしすぎたわね。平民街に近い場所まで来るんじゃなかったわ。
「ここで会ったのも何かの縁ね。少し話しましょうよ」
「申し訳ないけれど急いでいるので失礼するわ」
私達の様子が変わったことに気付いた護衛の騎士たちが、ルーシーとの間に立ってくれた。
「ちょっと邪魔なんだけど。ねぇリリーナ、少し話しましょう」
「お断りしたはずよ」
「いいの? まぁ私はここで話してもいいんだけどね?」
この間はメアリーに同じ手を使われて引っかかってしまったけれど、今日は騙されないわ。
「私も構わないわ」
「ムカつくわね。まぁいいわ。言うこと聞かなかったこと、後で後悔しても知らないから」
そう言ってルーシーは去っていったけれど…あぁ、やっぱり嫌な予感がする。
「アマンダ、カフェは諦めてうちでお茶にしない?」
「そうね。私も今同じ提案をしようとしていたところよ」
護衛の一人が馬車を呼びに行き、私達は店の前で待たせてもらっていると、御者が慌ててこちらに掛けてきた。
「お嬢様! 逃げてくださいませっ!!」
御者がどう見ても真っ当じゃない者に追われている…ルーシーが手配したのね。
「リリーナ様とアマンダ様はこちらへ」
対応は護衛騎士に任せて、私達はアンナと共にこの場からできるだけ遠くへ逃げ、貴族街の中心部に向かおうとした。
「こっちへ」
「えっ」
「ここは私の家が経営している店なんだ。匿うよ」
駆け出そうとしたら、一部始終を見ていた貴族の男性が手を差し伸べてくれた。
良かった。もし他にも仲間がいて、逃げている途中に別のところに潜んでいた仲間に襲われたらって考えたら恐ろしかったから。屋内に匿ってもらえれば、その間に護衛騎士達がなんとかしてくれるわね。
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