小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)

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主人公の姉

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『王様、王様~!たいへん!たいへん!』

 風の精霊が、玉座へと慌ただしくやって来た。

 周囲にいた水の精霊や、火の精霊がため息を吐く。

『また、アエラスの大変が始まったわ』

『落ち着きのない』

 アクアとイグニスが呆れの混じった声で、アエラスを迎えた。

「どうした?」

『僕を見て、僕の声を聞いて、僕に触れる人間がいた!』

『「!」』

 驚きで、僕も精霊たちも固まる。

 精霊である彼らの姿を見ることができる人間はいる。サザンスィート王国のジュリアンのように、先祖に精霊の血が混じっている人間だ。

 それでも、全ての子孫が精霊を見れるわけではない。
 ジュリアンがたまたま相性が良かったというだけだ。

 その声を聞くことができる人間も、ごく稀にだがいる。
 だが、その身に触れることの出来る人間はいない。

 それが出来るのは、精霊の王である僕の番になることができる人間だけだ。

 数百年前、サザンスィート王国の王太子がそうだった。

 当時の精霊女王は、番である王太子に嫁ぎ、それ以来、サザンスィート王国には精霊の加護が与えられることとなった。

 精霊の王を継ぐ存在は、一人しか生まれない。

 正確にいうならば、精霊王が亡くなる時に次代の精霊王が生まれるのだ。

 番は人間にしか生まれない。
だから、出会えない精霊王がほとんどだ。

 子を成す必要性がない精霊に何故、番が存在するのか。

 それは、番が精霊にとって半身だからだ。
 満たされぬ渇きを、満たしてくれる存在。

 番を得ずとも、死ぬことはない。
だが、番を得た精霊王は、その力が桁違いに増すという。

『ちょっと、本当なの?アエラス』

『もちろんだよ。大事な大事な王様の番だよ。ちゃんと触れるか確認済み~』

『それで、どこの誰なんだ?』

『えっとね、サザンスィートの王宮にいたよ。でも、初めて見る顔だった。ピンク色の髪の可愛い女の子だったよ』

 アエラスの言葉に、胸が高鳴るのを感じる。

「サザンスィートか。ジュリアンに聞けばわかるだろう」

 王宮にいたのなら、サザンスィート王国の王太子であるジュリアンなら誰かわかるだろう。

 何度か王宮を訪れたことがあるが、番に会ったことはない。

 となると、他国の者か、新しい使用人か。

「アエラス。まさか、幼い子供ではないな?」

『子供かどうかはわかんないけど、王様の肩くらいの背だったよ~』

 なら、幼子ではなさそうだが。
いや。幼子だとしても、精霊の生は長い。番が育つのを待つくらい何でもない。

 番に出会えることは、奇跡のようなものだ。












 






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